大森元貴、「催し」MVで発揮した総合監督としての才 混沌とした世界でも止まらない、鮮烈なダンスパートが示す“希望”
プロフェッショナルの言葉が物語る、大森元貴の“ビジョン”の凄み
「周囲の世界は、少し混沌としていて、狂っていて、面白い。ちょっと風変わりだけど、彼はひたすら歩き続けている」
これは、5月6日に公開された大森元貴の新曲「催し」のMVについて、監督を務めたJimmy Vi氏が語った言葉だ。楽曲やMVはもちろんだが、日本の音楽シーンの中心に立つ大森自身の姿についても的確に表現しているように思う。
MVでは、“催し” が行われたと思しき会場を去り、満面の笑顔ではしゃいでいる周りの人々とは裏腹に、冷めた表情を貫きながら歩く大森の姿を一台のカメラが止まることなく追い続ける。やがて、たくさんの人々が大森(正確にはその向こう)へと雪崩込んでいくと、突如として全員がカメラを向いて一斉に踊り始め、壮大なダンスシーンとともに幕を閉じる。
本作は大森自身が構想・コンセプト立案・共同監督/振付・主演を務めたセルフプロデュース作品となっており、後にYouTubeで公開されたBehind The Scene(楽曲・MV別/以下、BTS)では、どのような制作過程を経て本作が完成したのか、その片鱗を知ることができる。本稿では、そんなMVやBTS動画を中心に「催し」について掘り下げていこうと思うが、一連のドキュメントを観て改めて痛感させられるのは、“あるべき姿”が明確に見えていて、各分野のプロフェッショナルの力をフルに活かしながら全力でゴールへと向かっていく“総合監督”としての大森の才能だ。
MVのBTSの前半、スタッフを前に全体の構想を語る大森は、通常の手法であれば実現困難である「冒頭の会場を出る場面から、最後のダンスシーンを一望するカットまでノーカットで撮影」というアイデアに強いこだわりを見せ、制作チームとのディスカッションを重ねるうちに、新たな撮影手法を発案するにまで至ったことを語る。小道具などのディテールについても、細かくズームしなければ分からないような箇所までチーム全体で作り込んでおり、マクロ/ミクロの両面において明確な完成イメージを持ち、その実現のために膨大な労力を費やしていることがありありと伝わってくる。
BTSに登場する各分野のプロフェッショナルの言葉は、そうしたこだわりの強さをさらに浮かび上がらせる。
「(以前、振り付けを担当した)『絵画』に比べたら踊る尺は短いんですけど、めちゃくちゃ苦戦して、何回作ったかなっていうぐらい。(中略)でも全部大森くんが、1個目を見てこうしたい、2個目を見てこうしたい、3個目を見てもっとこうしたいっていうのが明確なんで、やればやるだけどんどん良くなっていく」(s**t kingz kazuki/コレオグラファー)
これは楽曲制作においても同様で、レコーディング風景を収めたBTS動画においても次のようなエピソードが語られる。
「自分が迷いのあるフレーズとか、『ここどうしようかな』『一旦、こんな感じで弾いてみようかな』っていう時に必ず指摘してくるんですよ。毎回そうだったので、本当に全て把握しているんだって。(中略)音の迷いまで感じ取ってるのかな、この人は」(OKP-STAR/Ba)
凄まじいのは、明確な完成イメージを持っているというだけではなく、「現在の地点からゴールに向かうためにはどうすればいいのか」についても的確に把握しているということだろう。それは、協働するクリエイターにとっても新たな発見をもたらしていく。振り付けの制作中、文章でのやり取りを続けるうちに「もうどうにか会わせてくれ」と急きょ2人でスタジオに入り完成度を高めていったというkazukiのエピソードは、そういった熱量の高いクリエイティビティを象徴しているように感じられる。























