『蓮ノ空』が貫いたリアルタイム性 『リンクラ』終了後も消えない、歩幅を合わせて共に歩んだ奇跡の3年間

“リアル”を貫く演出、仮想と現実が溶け合うライブ体験

 また、実在性を語るには、時間のリンクに対するこだわりも欠かせない。特に『Fes×LIVE』では、非常に細かい演出で、我々が生きる時間との同期がなされてきた。たとえば、2024年7月31日に行われた『Link!Like!ラブライブ!104期 1st Term Fes×LIVE 〜TWINKLE STAR FESTIVAL!!〜』(以下、『TWINKLE STAR FESTIVAL!!』)。『Fes×LIVE』では、定期的に実在する場所がステージに選ばれており、『TWINKLE STAR FESTIVAL!!』では金沢駅の鼓門前にステージを設営する形でライブを開催。当日、ライブ配信画面には精巧に再現された金沢駅·鼓門前の景色が広がっていた。

【アーカイブ公開中】バーチャル音楽ライブ「104期 1st Term Fes×LIVE 〜TWINKLE STAR FESTIVAL!!〜」 (ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ)

 それだけでも十分リアリティがあるのだが、それで終わらないのが『蓮ノ空』だ。金沢駅は鼓門側のホームがガラス張りになっている都合上、鼓門前からでも新幹線が行き交っているのが見える。これを、バーチャル鼓門前でもしっかり再現し、ライブ中も少女たちの後ろで新幹線がホームへ入ってくるのが確認できた。しかも、この新幹線の入線と出発タイミングは、実際の時刻表とリンク。敦賀行きの新幹線つるぎ47号、49号の時刻表と、『TWINKLE STAR FESTIVAL!!』で金沢駅に新幹線が入線してくるタイミングを調べてみれば、きっと度肝を抜かれるだろう。『蓮ノ空』が目指したのは、リアリティではなく、“リアル”そのものなのだ。

 こうした地道な積み重ねを活かした最たる例が、2025年1月10、11日『ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ 3rd Live Tour TRI TRI UNITY!!!』神奈川公演で開催された『ラブライブ!決勝大会』だろう。同大会は3Dモデルではなく、実際にキャスト自身が登場して行われたライブだが、目の前で繰り広げられるそれが、シリーズを通して描かれてきたスクールアイドルの祭典であることに疑いの余地はなかった。時間をかけて積み重ねたスクールアイドルの存在に対する確信が、あの熱気溢れるステージを成立させていたのだ。

【SPOT】ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ 3rd Live Tour TRI TRI UNITY!!! Blu-ray Memorial BOX

 『蓮ノ空』のリアルタイム連動は、唯一無二の魅力だった。同時に、その仕組みが『蓮ノ空』の抱えるリスクになっていたのも事実だろう。前提として、展開の核となる『With×MEETS』やリアルタイムで開催される『Fes×LIVE』は、メンバーの担当キャストがすべてモーションキャプチャーを利用して3Dモデルを動かしていた。そのため、キャストが何らかの理由で配信を休むと、当然中止、または内容変更となる。3年間の内、『Fes×LIVE』は予定通り行われたが、『With×MEETS』は何度か中止、もしくは内容を変更した配信を行っていた。

 2023年の8月上旬には、キャスト複数人が同時に休養し、しばらく配信ができなかったこともある(※2)。幸いにも同月中旬頃には復帰したが、同時期には離脱していたメンバーを復帰させるストーリーが進行していたため、その後の展開に大きな影響を及ぼす可能性もゼロではなかっただろう。実際、この時のトラブルについて、プロデューサーである佐藤一樹は「もし1週間ずれていたら……リカバリーは不可能になってしまっていたかもしれません。」と語っている(※3)。

 その後も、キャストの体調不良による配信中止や内容変更は何度かあった。だが、致命傷になるようなトラブルはなく、リアルタイム展開を続けてきた。そして、103期生が卒業するまでの3年間、“スクールアイドルと生きる今”を描き切ってみせたのだ。それは『蓮ノ空』に関わる、すべての者の執念が起こした奇跡と言っても過言ではない。同時に、本コンテンツがいかに綱渡りな状況を続けていたかもわかるだろう。

人的コストと情熱――全スタッフとファンが繋いだ執念の襷

 公式は『リンクラ』サービス終了の理由のひとつとして、「カレンダー連動型作品の運営コストと人的負担」を挙げている(※4)。筆者は経営の専門家ではないので、運営体制の是非は未知だ。ただ、『蓮ノ空』の魅力がそのまま最大のウィークポイントであったこと、それでもリスクのある展開を押し通して“生きたスクールアイドル”の3年間を描き切ったことは、紛れもない事実だ。

 メンバーのひとり、日野下花帆は以前『With×MEETS』で、はっきりこう言った。「あたしの人生もあなたの人生も続いていく」と。続くのだ、人生は。生きている限り。あまりにも当たり前で、わざわざ思い出しもしないこと。そんな“当たり前”を違和感なく受け入れられるほど、この3年の間、スクールアイドルたちは確かに生きていたのだ。我々の生きる世界の端にスクールアイドルの生きる時間が加わり、世界を広げ、豊かにしてくれた。そういう意味で、『蓮ノ空』はバーチャルリアリティ=“VR”というより、オーギュメンテッドリアリティ=“AR”にも近かったようにも感じる。

 筆者としては、日野下が去ったあと、ファンが見届けた3年間が受け継がれていく様を、同じ歩幅で見れないのは残念でならない。それでも、『蓮ノ空』が続く限り、人生が続く限り、“また”はあるかもしれない。そんな風に未来は意外と明るいと信じながら、今はただキャスト、すべてのクリエイターとスタッフ、そして蓮ノ空のこと好き好きクラブのみなさん(『蓮ノ空』のファンの呼称)の熱量が作り上げた奇跡のような3年間の軌跡に、いちファンとして惜しみない拍手と敬意を贈りたい。

蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ 「Dream Believers」 リリックビデオ(Link!Like!ラブライブ!)

※1:https://www.youtube.com/watch?v=ZIO4HLN5x-g
※2:https://x.com/hasunosora_SIC/status/1687406774876303360
※3:https://gs-ch.com/articles/article/arTe475p4y8wBMNiUBbqimcf
※4:https://x.com/hasunosora_SIC/status/2041033164601110864

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