「幸せな音楽人生だなと思います」 TenTwenty、確かな確信を胸に“衝動”を奏でたツアーファイナル

 7曲目の「スプレー」。斎藤宏介(Vo/Gt)が中央のお立ち台に立ち、〈遠くまで行こう失ったもの数えながら/まだ行こうまだ知らない音がする〉というフレーズを凛とした歌声で響かせた。直後、その背後から須藤優(Ba)がひょいと現れ、ひとつのお立ち台にふたりで立ちながら肩を組む。まだ見ぬ音楽への憧れと止められない渇望感。何かを選び取るたびに手放してきたものの存在も引き受けながら、同じスピードで並走するもうひとりの存在。言葉と光景が重なったこの瞬間は、TenTwentyの現在地をくっきりと示していた。

 今年2月にリリースしたEP『Abyss Red』を携えて、全国6都市をまわった『TenTwenty ONE MAN LIVE TOUR 2026「Abyss Red」』。ツアーファイナルの神奈川・KT Zepp Yokohama公演。ライブは、EP収録曲「ハレ」から始まった。斎藤と須藤に、サポートメンバーの粂絢哉(Gt)、岡本啓佑(Dr)、宮川純(Key)。全員がスーパーミュージシャンだけに、一斉に8分音符を刻む冒頭は恐ろしいほど揃っている。その鮮やかさを起点に、それぞれが一匙の遊び心、生演奏らしいグルーヴ感を加え、アンサンブルはたちまち躍動的に。音楽がもたらす楽しさはフロアにも広がり、アウトロのリフをもう1回繰り返すライブアレンジで観客を沸かせた。

 「さあ横浜、始めましょう。TenTwentyです!」と届けられた「きみは幽霊」は、ライブの編成に応じて〈二人の男〉という歌詞が〈五人の男〉と変えられる。音楽に魅せられた5人の、この夜限りの自己紹介ソング。〈よろしければお手を拍手喝采〉というフレーズに誘われて、観客も手拍子を合わせた。曲によっては歌い終わったあとにすぐギターソロを弾き始めるなど、自分から湧き出る「歌いたい」にも「弾きたい」にも忠実な斎藤。観客との交流を楽しみながら、笑顔で、とんでもないパッセージや多彩な音色を繰り出す須藤。粂のギターソロが炸裂する「あれ」で、斎藤と須藤も横から加わる様子は、「どれだけ弾きたいんだ」と笑いたくなるような光景だが、その貪欲さが痛快だった。

 「新曲をしっかり聴いてもらいたいのはもちろんだけど、今までの曲も最新のTenTwentyでお届けしたいと思っているので、存分に楽しんでいってください」と、新旧様々な楽曲を披露したTenTwenty。過去の楽曲は現在の彼らの腕と感性で鮮やかに塗り替えられており、「All Light」の〈今までとこれからが交わる場所/大事なものは多いほどいいね〉というフレーズが、この日のセットリストそのものを言い表すかのように響いた。「もう戻らない時間や大切な存在を温かい気持ちで振り返った曲」と紹介されたバラード「柊」も深い余韻を残した。

 それぞれにTenTwenty以外の活動を抱えるふたりにとって、ツアーファイナルはひとつの区切りだ。斎藤と須藤は演奏を重ねながら、「1曲1曲終わるたびに、『あっ、しばらくやらないんだな』と思うと切ない気持ちになる。もっとライブしようよ」(斎藤)、「やっぱりいっぱいやりたくなっちゃうよね」(須藤)と終わりを惜しんでいた。休む間もなく音楽活動に明け暮れるふたりが生み出したEP『Abyss Red』。収録曲の歌詞の多くは自問自答。なぜ音楽を鳴らすのか――と自分に問いながらも、それより先に次の足が出てしまう。その衝動、疾走するふたりの姿が音楽として刻まれていた。そんな作品のリリースツアーも終盤に差し掛かり、斎藤はこう語る。

「家で曲を作ったり練習したりしていても成果が見えないし、『これが何になる?』と思うこともなくはないけど、そういう日々が今日みたいな日の答え合わせに繋がってると思うと、幸せな音楽人生だなと思います。今日は、みなさんの前で歌えるのを楽しみにしてました」

 そんな言葉を添えて、斎藤は「煌めき」のサビを弾き語りし始めた。〈きっときっとを繰り返した/泥臭い僕の旅路は/魔法って言葉じゃ足りないけど/たった1秒の煌めきは/きっとさめない魔法〉――観客は息を呑むように、斎藤の歌を受け止めていた。

 静寂が解けると、本編ラストに待っていたのは、過去から現在へと駆け上がるような3段加速だった。前々作『XIIX』のリード曲「月と蝶」。前作の表題曲「Border=Border」。そして、最新作の表題曲「Abyss Red」。「ライブでしか聴けない踊れるアレンジ」と紹介された「月と蝶」は4つ打ちのキックに貫かれており、曲が終わってもキックは途切れない。斎藤が「すみませんが、もうちょっとだけ、カマさせてもらっていいですか!」と告げ、観客も歓声を上げるなか、そのまま「Border=Border」に突入した。須藤がお立ち台の上から観客をガンガンアジテートしているのは、このあともまだまだスリリングな展開が待っているから。岡本、粂、宮川が順にソロを披露すると、ふたりもそれに続く。須藤のソロ中に斎藤がスティックで弦を叩き、ふたりがかりで1本のベースを鳴らしたり、斎藤はボーカルマイクをスライドバー代わりに用いながらギターを鳴らしたりと奇策も飛び出しつつ、フロアの温度は最高潮に達した。極めつけはラストナンバー「Abyss Red」。笑っちゃうほど痛快なスピード感であり、演者も観客も振り切ったテンションで楽しんでいる。その勢いのまま、本編は一気に駆け抜けていった。

 斎藤が「曲を作っているときも、レコーディングしているときも、リリースしたときも自信のあるEPだったけど、ライブで披露することでさらに確信を持てました」と語ったように、この夜のTenTwentyは終始、自分たちの音楽への確信に満ちていた。そんななか、観客の拍手の大きさで演奏曲を決めたアンコールでは、EP収録の5曲に対する拍手がほぼ同じ音量で、ふたりが悩む場面も。バンドが挑んだ様々なアプローチが、そのままフロアに受け入れられている証だろう。アンコール曲はスマホ撮影OKということで、フロアでは無数の光が揺れる。曲が終わると、撮影時に手が塞がっていた分、観客が思いっきり拍手と歓声をステージへ送った。その熱量に、目を丸くさせる斎藤と満面の笑みの須藤。彼らは「いい気持ちにさせてもらったので、ちょっとだけいいことを。10月20日、空けておいてください」と伝えて、ステージを去った。確かな手応えとリスナーとの約束を携えて、TenTwentyはまた、次なる音楽を求めて進んでいく。

<セットリスト>
01. ハレ
02. きみは幽霊
03. うらら
04. Eleven Back
05. あれ
06. Stay Mellow
07. スプレー
08. So Many Stars
09. マツリカは夜に咲く
010. E△7
011. All Light
012. おもちゃの街
013. like the rain
014. 柊
015. 煌めき
016. 月と蝶
017. Border=Border
018. Abyss Red
EN1. ilaksa
EN2. Eleven Back
EN3. ユースレス・シンフォニー

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