Ken Yokoyama、アニメ『ゴールデンカムイ』EDにぶつけた素直な欲求 日本語詞が広げたバンドの可能性

Ken Yokoyamaが、3月25日にシングル『The Ballad』をリリースした。全4曲収録の本作の表題曲は、TVアニメ『ゴールデンカムイ』最終章のエンディングテーマに使用されており、バンド史上初のタイアップ楽曲かつ日本語歌詞での歌唱ーーつまり、横山健がHi-STANDARD以来貫いてきたスタンスとは異なるアプローチを見せている一曲だ。
今回のインタビューでは、そのような楽曲が生まれた経緯について横山健に詳しく話を聞いた。挑戦への動機やそこで得たものとは何だったのか。この作品をもってさらに更新されていくKen Yokoyamaの今後への期待が高まる。(編集部)
英詞を書く時とは全然違う視点だったし、すごく面白い経験だった
一一時系列を追っていきますけど、2024年には90年代パンクをテーマにカバー集を作り、ツアーも毎回かなり盛り上がったと思います。あれが終わった後、次の構想ってどんなふうに考えていたんですか。
横山健(以下、横山):えーとね、実はあの『The Golden Age of Punk Rock』で、コロナの頃から考えてたやりたかったことは一通りやりきってしまって。その後の構想ってまだ何も持ててなかった。そんな中で今回のシングルの話をもらって。海外90’sパンクのカバーをやった後、今度は日本語の曲か、これも面白いなって。もちろんいろいろ考えることはあったけれども、この曲がまた次の取っ掛かりになるんじゃないかな、と思って。
一一主題歌オファーは『ゴールデンカムイ』側から来たんですか。
横山:いや。もともとは僕が「なんかタイアップとか、今までやってこなかったことをやってみたい」ってことをピザオブデスのスタッフに話してて。それでスタッフが動いてくれて指名で、このお話をいただいた感じで。
一一とはいえタイアップって、昔だったら否定の対象じゃなかったですか。
横山:うん。やっぱ人間は変わるんだなって自分でも思った。その欲求に素直になれてる自分も悪くないと思ったし。改めて自分の言葉で言うけど、昔はほんとタイアップなんてクソだと思ってた。特に90年代なんてタイアップ全盛期で、そこでヒット連発してる人たちが格好の標的に見えたし。なんだけど、今はそうじゃない。むしろやってみたいことのひとつになっていて。自分の人生のタイムラインをしっかり把握できるのは結局自分しかいなくて、その中で出てきた欲求だったから。嘘をついてるつもりは全然ないかな。「日本語でお願いします」っていう条件も含めて、ちゃんと挑戦したくなった。

一一日本語って、今まで考えたことはありました?
横山:なかった。こういう機会がなければ俺はずーっと「英語の人」でキャリアを全うすることになったんじゃないかな。もともと英語で歌うのがこだわりっていうか、そのイメージを強く持たれてると思うの。そこで支持されてるところもあったと思う。90年代パンクの残り香というか、だから信用できるんだよ、みたいな人もいただろうし。
一一はい。だからこそ、挑戦したいと思えた心境を知りたいです。
横山:や、最初は嫌だったよ? それまで英語だったバンドが突然日本語になるとか、あんまり好きじゃなかったし。ただ、BRAHMANとThe Birthdayと一緒に北陸の〈乱〉シリーズ(2019年)をやったでしょ? BRAHMANってもともと英語の曲が多かったけど、途中からどんどん日本語の曲が増えていって。彼らの歌う日本語が羨ましかったのはある。「今夜」とか俺すごく好きで。90年代に「Arrival Time」を聴いた時もそう。こういうのいいなって思った風景がすごく残ってる。
一一意外。いろいろヒントはあったんですね。
横山:うん。でも書ける気がしないというか、10代の時に日本語で書いたことはあるけど、あんまイケてないことが自分でもわかってたから。なんだけど、この年でやったらどうなるかなっていう興味もあって。結局は、新しいことにトライしたい気持ちのほうが強くなってしまったんだろうね。
一一昔書いた日本語詞、自分ではどのへんがイケてなかったですか。
横山:いや、もう全体が浅い。人間が浅いからその時点でイケてない(笑)。面白い言葉のチョイスをしてたなとは思うんだけど、ブルーハーツの上澄みをうっすーく掬ってるような。思想がそれ止まりだから、面白い言葉使ったっていい歌詞になるわけないの。
一一であれば、第二言語で、あのスピード感で転がっていくハイスタの英語詞のほうが可能性があると思えた。
横山:そうそう。他の人がおおよそ歌詞にしないであろうことを英訳して歌うっていう。それが当時はすごく楽しかった。
一一そこから30年くらい経っての日本語詞。作業はどんなものでしたか。
横山:やっぱり当たり前だけど自分にとっては第一言語だから。自由度も高いしリスクもはっきりとわかる。「こう言ったらどう受け止められるかな」みたいな。だから英詞を書く時とは全然違う視点だったし、すごく面白い経験だった。たとえば〈タバコ、うまい〉って歌うのと〈うまいぜタバコ〉って歌うだけでもニュアンスは違うでしょ。英語だとそこまで全部コントロールできてるとは言えないから。でも日本語だとすごく考える。自分の中で歌詞に乗せたい言葉、乗せたくない言葉があるんだなっていう発見もあったし。
一一日本語は一音に対して一語、まぁ多くても二語くらいが乗せられる限界じゃないですか。言えることが限られてくるって話はよく聞きます。
横山:それはもちろん僕も感じたこと。だから英語のほうが情景は表しやすいなとも感じたし。でもまぁどちらが完璧ってこともないよね。英語でも日本語でも必ず創作の苦労はあって。もちろん日本語だと照れくささもあったし。
一一これしかないと覚悟した言葉だからなのか、サビの〈なぁ だろ?しんどいよな?〉という一言は刺さりますね。
横山:うん。だと思う。
一一このテーマは健さんが今歌いたかったことなのか、それとも『ゴールデンカムイ』から引っ張られて出てきたことなのか。
横山:あ、両方なんだけど、作品に引っ張られたところはある。すごく暴力的な描写も多い作品で、激しさがあって。その激しさの中には、置かれた境遇や時代背景も含めて、避けられない運命みたいなものがあって。そこにまず共鳴したのかな。主人公の杉元に対して「わかるぜ」っていう気持ちになって。
一一過酷な歌詞ではあるけど、嫌がってないですよね、この過酷さを。
横山:そう。あとは僕から見た現代社会、一般論みたいなものも多分に入ってる。みんな生きてりゃしんどいと思う。どんな立場の人であれ、どんな仕事をしていようが、どんな環境だろうが。現代ってそれを感じやすい時代だと思うのね。そういうところもしっかり入れ込めたつもり。杉元の話だけじゃなくて、彼に共鳴しつつ、現代を生きる人間としての視点も入ってる。
一一一言で言えないのを承知で聞きますけど、何がしんどいですか。
横山:……何が、に対する答えじゃないかもしれないけど。人間であることがしんどい。中原中也の詩で、吠えてる犬に向かって〈着物一枚持たずに、俺も生きてみたいんだよ〉っていう一節があって(「暗い天候」)。俺、それ、10代の時からすっごい好きなの。結局人間って頭で考えてしまうし、感情があるし欲がある。だからしんどいの。犬だって感情も欲もあるけど、もっとストレート。吠えたきゃ吠える、そんだけ本能的に生きられたらいいなぁって思うもん。だから、もちろん俺は自分の人生を謳歌してるけど、でも人間に生まれ落ちた時点でしんどいよな、とは思っちゃう。
一一こういう表現になったのは、日本語だったから、とも言えませんか。英語だともうちょっと余白が生まれそう。
横山:あ、それはあるかも。日本語だからこう言い切れると思ったのかな。

一一あとは〈いつか消えちまうからこそ輝くクソ命〉というフレーズも、曲のキモになっています。
横山:うん。その一文をちゃんと書けたのは嬉しかった。
一一言葉は〈クソ命〉でいいんですか? 他に選択肢もあると思うけど。
横山:ないっ。〈クソ命〉でしょう、全員。もれなく。
一一はははは。
横山:命はほんと大切で、崇高というのかな? ものすごく大事にしたいものだけど。だからこそ〈クソ命〉なの。「なんでクソなの?」って言われてもわかんないけど、これは僕の感覚。僕にはベイビーって呼んでるギターがあるんですよ。でもそれは一部火ぃつけて焼いたりして、炭化してる部分もあるギターなの。南ちゃんが見たら「虐待!」って言うくらい。「なんでそんなことすんの?」「いや、ベイビーだからだよ。凡人にはわかんないだろうな」なんてことをよく言ってるんだけど(笑)、それと同じこと。すごく大事だからこそ、握り締めておきたいものだからこそ、〈クソ〉って言い切りたくなっちゃう。
一一……わかるとは言いませんけど。でも初の日本語で横山健が〈かけがえのない命〜〉みたいなことを歌い出したら、まず引くと思います。
横山:そうだよね。ははは!
一一完成した時は、今までと違う達成感ってありました?
横山:作品に対してはあった。「The Ballad」一曲だけじゃなくて4曲が揃った時に、やれた、面白いものができたかも、っていう感覚があったな。まず「The Ballad」ができて、これはシングルで出したいと思って。そうなるとカップリング曲が必要でしょ? それを英語詞にするのはどうかなと思ったの。
一一「The Ballad」だけが特別な見え方になってしまう。
横山:そうそう。お仕事感が出てきちゃう。俺もそういうつもりはなかったし。せっかくだからトライしてみようっていう気持ちから始まったから。





















