森 大翔、葛藤の末に掴んだ“自己肯定”の光 新曲「祝祭」が告げる、表現者としてのネクストフェーズ

 2003年6月生まれ、北海道知床・羅臼町出身のシンガーソングライター、森 大翔。本稿では、彼の2021年のデビュー以降の歩み、そして彼が立つ現在地について改めて迫っていきたいと思う。

森 大翔、"シンガーソングギタリスト"としての歩み

 森の音楽の出発点は、“ギター”だった。小学6年生の頃、従兄弟からの影響でギターを始め、鍛錬を重ねてやがて卓越したスキルを習得。16歳の時に、イギリスのロンドンで行われた『Young Guitarist of the Year 2019 powered by Ernie Ball』(16歳以下のギタリストによるエレキギターの世界大会)に出場し、英国・米国など100人を対象とする審査を勝ち抜き優勝。見事世界一に輝いた。

 森のライブでは、彼の“ギターヒーロー”としての真髄が非常に深く浮き彫りになる。高速ピッキングを駆使した熱烈なギターソロ、エッジーなカッティングや流麗なタッピング。ボリュームノブを操作しながら繊細なニュアンスを表現するバイオリン奏法。ライブの随所で彼のギタリストとしての手腕が光っているが、アコースティックギターを奏でる時も、ひとりで弾いているとは思えないほどグルーヴィで、躍動的なビート感がありありと伝わってくる。

森 大翔「日日」Music Video / Yamato Mori - “Hibi”

 このように書くと、「森 大翔=ギタリスト」という印象が強くなるかもしれないが、彼はこれまで2枚のフルアルバムをリリースする中で、テクニカルなギタリストという柱は崩さないまま、さまざまなアプローチの楽曲を制作しながら自身の表現の幅を広げ続けてきた。特に、自身の歌にフォーカスを当てた楽曲の数々によって、この2~3年を通してシンガーとしての像が次第に確立されていったように思う。

 ギタリストとしてのアイデンティティと、シンガーソングライターとしてのアイデンティティ。森はデビュー以降の数年間、どちらも大切な自分らしさとして受け入れながら新境地を開拓し続けてきた。

 そうした軌跡は、"シンガーソングギタリスト"としての歩みとも言い換えられるかもしれない。

 2025年3月以降、新曲のリリースが止まっていた中で、2025年11月、「生まれ変わった」という意味の言葉をタイトルとして冠したワンマンツアー『REBORN』を開催した。そのツアーファイナル公演に参加して感じたのは、何かがわかりやすい形で変化したというよりも、森の中で内省が深まり、今までずっと大切にしてきた音楽観がさらに洗練された、ということだった。

 特に忘れられないのが、同公演のMCパートだ。森は、『REBORN』というテーマを掲げながら2025年を過ごしていたものの、自分の中で“REBORN像”が定まらず、3月に「通過点」をリリースしたあとにどこへ向かっていくべきかずっと悩んでいたことを赤裸々に明かした。しかし、1年半ぶりに地元・羅臼町に帰ったことが、彼の中の転機になったという。自然豊かな景色、何もなくて、すべてがあるーー。彼は、自分のルーツである「地元を想起させる音楽が好き」という原点に今一度立ち返った。同公演の終盤に森が告げた「今日ありのままライブして本当に楽しかったです」「これからも、自分の等身大で音楽をやっていきたい」という言葉も印象的だったし、何より、迷いや不安を感じさせない晴れやかな表情も忘れられない。

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