Penthouse史上最高を刻んだ日本武道館ワンマン 鉄壁のグルーヴで鮮やかに繋がった“原点と現在地”

 2026年3月16日、日本武道館。Penthouseが『ONE MAN LIVE in 日本武道館 “By The Fireplace”』を開催した。びっしり埋め尽くされた客席。本公演のチケットは一般発売と同時に即完。急遽、追加席が発売されたほどだ。

 開演時刻になると会場が暗転。歓声が響く中、ステージバックに設置されたワイドスクリーンに映し出されたのは、メンバーのインタビュー映像。それぞれが日本武道館ライブへの意気込みや、Penthouseへの想いを語っていく。「6人揃って音楽をやっている時が一番好き」という大原拓真(Ba)のコメントに拍手が起こる。その後、原点、恩返し、ご褒美、集大成、出発点……など、各メンバーの気持ちの核心を突く言葉が、テンポよく、ザッピングのように提示されていく。そして、大島真帆(Vo)の「終わった時に笑顔になるようなライブをしたい」という言葉の後、スクリーンにライブタイトルが映し出された。

 大歓声がステージに降り注いでいく。幕開けは「Welcome to the Penthouse」。ステージの左からCateen(Pf)、矢野慎太郎(Gt)、大島、浪岡真太郎(Vo/Gt)、大原、平井辰典(Dr)の順。メンバー6人が、多少の前後差はあるが、ほぼ横並びに配置されている。そこに、パーカッション、3人のホーンセクション、2人のコーラス隊、5人編成のクワイア(ゴスペル隊)が参加した総勢17人が、1万人の観客を“ようこそ”と出迎えた。続く「Planetary」では、大島が「みんな会いたかった。心をひとつにしてぶち上がっていきたい」と客席にウェーブのレクチャーを始める。1万人の観客が、大島の動きに合わせて大きくウェーブを作っていく。「次はみんなの声を聞かせてほしい」と大島。観客のコールアンドレスポンスを誘い、あっという間に空間を司っていく。最初から、出し惜しみ一切なし。これが、Penthouseのライブだ。肌が泡立つほどの音楽の密度。Penthouseが作り出すグルーヴがモンスターのように目の前に立ち上がってくる。ステージセットに組み込まれた幾多のミラーボールが高速で回転し、光のシャワーの中で「ナンセンス」へ。浪岡と大島がハンドマイクで、ステージ中央でシャウト。そんな2人を、他のメンバー4人が見つめて笑みをこぼす。

浪岡真太郎(Vo/Gt)
大島真帆(Vo)
Cateen(Pf)

 「今日に向けてたくさん準備をしてきました。Penthouse史上最高のPenthouseを見せたいと思います」という浪岡の言葉に大歓声が送られる。赤いレーザー光線が走り「Stargazer」へ。ラテンのリズム、ブロウするサックス。Penthouseの音楽咀嚼力の高さが発揮された1曲だ。間奏では平井のドラムと会話するように、Cateenが華麗に鍵盤のフレーズを挟み込む。パーカッションやホーンも含んだサウンドのレイヤー、インパクトのあるメロディ、浪岡と大島の圧倒的なボーカル。コーラス隊と5人のクワイア。ゴージャスな布陣をタイトに、シャープにまとめていくのも、Penthouseサウンドの真骨頂と言えるだろう。観客も含めたPenthouse独特のダイナミズムが、日本武道館を飲み込んでいく。

矢野慎太郎(Gt)
大原拓真(Ba)
平井辰典(Dr)

 中盤、彼らのライブではお馴染みの「Cateen’s time」へ。Cateenのピアノの弾き語りで、ボーカルそれぞれがカバー曲を歌うコーナーだ。正確には、カバーというより、Cateenとボーカルの“セッション”と言ったほうがしっくりくる。まずは浪岡。自身が初めて日本武道館を認識したのが、子供の頃、父親が車の中でかけていたDeep Purpleの『Live in JAPAN』(1972年)だったと語った後、真っ赤に染まるステージで、Deep Purpleの代表曲「Smoke On the Water」を歌唱。オリジナル曲の象徴的なリフをピアノで連打し、弾き方でギターのディストーションのニュアンスまで感じさせるCateenのピアノが素晴らしい。

 続いて大島が登場。「武道館で『Cateen’s time 』、嬉しいな」と満面の笑顔を見せる。「6年前(=結成して間もない頃)はオリジナル曲も少なく、これではライブが成り立たないと、カバー曲をセットリストに入れていた。それが今でも続いている」とCateen。「うん、うん」と頷く大島。そんな中で、彼女がセッション曲に選んだのは、Penthouseの「花束のような人生を君に」。生命が生まれた喜びを綴ったバラードだ。「今日は両親に感謝の気持ちを込めて歌わせてください」と歌い始める大島。最初は感極まり涙声になる瞬間もあったが、すぐに立て直し、最後は芯のある美しいロングトーンを響かせた。

 続いて披露されたのは、武道館スペシャルメドレー。「Change the world」(2021年)が始まると、ステージバックのスクリーンの両端に、当時のMVが流れる。スクリーン中央にはリアルタイムのライブ映像。Penthouseの“これまで”と“今”が、視覚上でも交差する。浪岡と大島に合わせ、観客が大きく両手を振った「Take Me Maybe」(2023年)、ミラーボールが日本武道館という天体に流星を描いた「流星群」(2022年)、力強い掛け声が上がった「隣の恋は青」(2025年)、観客が一斉に色とりどりのマフラータオルを回した「夏に願いを」(2023年)……など、ノンストップで全8曲を演奏。一切の無駄もなく、瞬く間に駆け抜けるメドレーだったが、注目すべきは、それぞれの楽曲の断片が、次の楽曲の軸へと滑らかに変換されていったことだ。たとえば「Take Me Maybe」で提示された軽やかなポップネスは、「Jukebox Driver」(2021年)の躍動感へと変換され、「流星群」ではスケール感へと拡張される。そして「26時10分」(2021年)のナイーブな質感は、「Raise Your Hands Up」(2024年)では解放へと転じていった。そして、こうした転換は、Penthouseが常に既存楽曲を更新していくことの証でもある。

 歴史を今にアップデートして提示した後、演奏されたのは新曲「一二三」。Penthouseが観客と一緒に未来を描いた瞬間だった。「一二三」はPenthouseが得意とするグルーヴ感満載のアップチューン。バックのスクリーンには歌詞も映し出された。「歌詞が出てきてドキドキだったよね」と大島。浪岡は「サビ前に〈満員御礼〉ってあるから、満員じゃないとできない」と言い観客を笑わせる。そして「武道館、まだまだいけるか! 全員来いよ!」と客席に叫ぶと、スクリーンには、ステージセンターに立ち、タンバリンを頭上に掲げた大島が映し出される。大島の台詞から「フライデーズハイ」へ。歌詞でリフレインされる英語のフレーズが、リアルタイムのライブ映像とともにスクリーンを飾る。「一難」では、浪岡と大島がステージ中央で向き合って歌うレアな場面も。「我愛你」では、スクリーンにネオンの演出が施される中、浪岡がハンドマイクを客席に向けて一緒に歌い上げ、楽曲の高揚感が会場全体に広がる。本編ラストは「…恋に落ちたら」。ステージのライトが客席を照らし出し、観客の感情のピークを丁寧に包み込むような、包容力のある演奏を繰り広げた。エンディングではステージ前方の天井から銀テープの破片が降り注ぎ、その輝きが空中で乱反射する。「今日という1日をみんなと過ごせたことが最高に幸せです」と大島が語ると、鳴り止まない拍手が場内を包み込む。武道館に高揚を残して、手を振りながら6人はステージを後にした。

 アンコール。ライブタイトルにも入っている「Fireplace」はPenthouseとして初のオリジナル曲だが、当時を振り返るメンバーの個別インタビュー映像がスクリーンに流れ出す。これでPenthouseの方向性が決まった、一発目ですげぇ曲きたなと思ったなど、次々とグッとくる言葉が紡がれる中、最初に(音を)合わせた時のことを覚えているかと問われた浪岡が「覚えてない。矢野しか覚えてないんじゃない?」と笑う。次の瞬間、最初に合わせた時のことを饒舌に話す矢野の映像。爆笑する1万人の観客。さらに、大原の「Penthouseを始めるきっかけになった、その時の想いとかを、この日本武道館で思い出せたらいいかもしれないですね」という言葉。その映像が終わると、Penthouseの6人が再びステージに揃ってスタンバイし、中央で互いに向かい合う。ステージ真上からの映像がスクリーンに投影され、まるでリハーサルスタジオにいるかのような空気 に。初めて音を合わせた時も、こんな雰囲気だったのではないだろうか。

 こうして始まった「Fireplace」。曲が進むにつれ、パーカッション、コーラス隊、クワイアが徐々に演奏に加わっていく。1曲の中で、Penthouseの結成から現在までの物語を一気に紡いでいく。瞼に焼きつけたい、絶対に忘れられないと思わせる、見事な演出だった。

 さらに、今夏に3rdアルバムがリリースされること、次なるツアーが開催されることも発表された。歓喜する観客たちに向けて、「本当にありがとうございます」と大島。続いて浪岡がマイクを取った。

 子供の頃、将来の夢を書かされるのが苦手だった。音楽にハマり、大学でも音楽をやっていたが、一旦就職した。でもPenthouseをやって、今は音楽一本になった。「本当に毎日が楽しい」と言った後、こう言葉にした。

「いざ武道館でやってみて、今、自分の夢が叶ったんだなと思うと、ずっとミュージシャンになりたかったんだなってわかった」

 そして、メンバー一人ひとりの名前を言った後、こう続けた。

「一緒に夢を叶えてくれてありがとうございます」

「もちろん(観客の皆さんにも)感謝してます。でも僕にも感謝してほしい。かっこよくないPenthouseは観なくていいんで。そういうストロングスタイルで、これからもPenthouseをやっていきたいと思います」

 浪岡の言葉に、この日一番の大きな拍手が起こる。その拍手に包まれながら、ラストを飾ったのは「Taxi to the Moon」。宙に弧を描く、輝く金&銀テープに手を伸ばすアリーナの観客。スタンド席の観客はずっと拍手を送っていた。

 Penthouseにとって、日本武道館公演はどんな意味をもたらしたのか。それはきっと、これからのPenthouseが、さらに進化を遂げた楽曲とライブで教えてくれるだろう。

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