ハルカミライ、緊張感漂う『AVAN』で示した無限の可能性 大胆な演出で彩った横アリ2日目
前日の3月4日に神奈川・横浜アリーナで47都道府県ツアーを締めくくったハルカミライが、翌3月5日に同会場でワンマンライブ『AVAN』を開催した。前日は横浜アリーナをライブハウスにしたハルカミライだったが、この日はアリーナとしてのステージに、堂々と立つハルカミライがいた。
ハルカミライ、初の横アリに“ズカズカ”と登場! 47都道府県ツアーで積み重ねた熱量を爆発させた夜
ハルカミライが3月4日に『ヨーロー劇場2025-2026 47都道府県ワンマン -BOOGER JOE-』のツアーファイナルを開…場内が暗転すると、「ピー」という音とともにステージに心電図が浮かび上がり、場内は緊迫感に包まれる。そしてドクドクと心音が動き始め、ステージには、後ろからライトに照らされたシルエット姿の橋本学(Vo)、須藤俊(Ba)、関大地(Gt)、小松謙太(Dr)の4人が登場。異様な期待感を切り裂くように橋本が「サンキュー横浜アリーナ!」と声を上げると、パッとステージが明るくなり、ライブは「君にしか」で幕を開けた。ステージの4人はジャケットやシャツなど襟のついた衣装に身を包み、横浜アリーナという特別な場所でのワンマンライブに挑むという緊張感を漂わせていた。昨日、同じ会場でいつも通りのライブをした4人とは思えない。しかし橋本はこう言う。「見ての通り昨日とはガラッと違う一日を作りにきた。ただのワンマン。シンプルなワンマン。とくとハルカミライを目に焼き付けて帰ってちょうだい」と。
「ファイト!!」「俺達が呼んでいる」をシームレスに繋げたり、横浜アリーナを“世界の真ん中”にした「春のテーマ」などいつも通りのライブで場内をほぐしたあと、「『AVAN』というタイトルの名の下に新しいハルカミライを見せられたらと思う」と意気込んでから繰り広げられたステージは、まさに新しいハルカミライだった。先ほどまで「AVAN」というシンプルなボックスロゴが映し出されていたビジョンに、楽曲にあわせたさまざまな映像が映し出されたり、アーティスティックな照明が場内を彩ったりと、多面的に楽曲の世界観を見せていったのだ。
橋本が「ハルカミライ屈指のスーパーポップソング」と堂々と紹介した「ベターハーフ」では、記憶のなかのようにさまざまな景色が粗い映像で映し出され、「AVAN」にちなんでバンドのプロローグを話してから始まったハルカミライ最初の曲「燦拍子」ではミラーボールがキラキラとまわり、横浜アリーナに立つ4人の姿を眩しく照らす。まるで星空のような空間が広がったあとには〈天の川がかかる日だけ君の見える場所にいる〉と歌う「ハッシャダイの丘」でさらにドラマチックなムードに染め、抒情的な歌詞で世界観を描く「飛空船『ジュブナイル号』」では、花火が打ち上がる映像とともに少年の無垢な感情を表現していく。すると途中で演奏が止まり、しんと静まり返ったなかで映像が逆再生。演奏が再開されると同時に花火も再び打ち上がるという、映像とリンクした演出で時の流れを描き出し、新たなハルカミライのライブの可能性を見せた。
ここで須藤が「はー、緊張した」と息を吐き「ずっとここのこと考えていたから、あんまりみんなと話せなくてごめん」と、橋本が思わず「ドラマの見過ぎじゃない?」とツッコんでしまうほど、緊張していたことを明かす。橋本も「俺ら今までこういうのやったことないんだよ。今までシンプルにやってきたからさ」と、新たな挑戦に4人も緊張していたことを赤裸々に話した。
橋本が地元で過ごした先月の思い出を語ってから始まった「青春讃歌」では、ステージの前に進む橋本の後ろで、歌を支えている関、須藤、小松の優しい表情がビジョンに大きく映し出された。歌い終えた橋本は「ちょっと良すぎ」と噛み締めていた。橋本が気持ちよく歌い上げたあとは、ファンが気持ちよく歌い上げる番とばかりに「世界を終わらせて」で大合唱が生まれ、それを聞いた橋本は「気持ち良いー!」「素晴らしいね!」とまたもや満足げ。「QUATTRO YOUTH」ではツアーの映像がビジョンに映し出され、“初めての衝動”が可視化される。さらに“必殺”の「K・O・M・A・T・S・U」を連発。橋本が「ご唱和ください」と歌い始めるとあっという間に声が重なった「Tough to be a Hugh」、須藤が「ここで『エース』だと昨日と一緒になっちゃうな……」と悩んでからタイトルコールすれば歓声が上がった「フュージョン」、小松が曲の途中でドラムから離れて「ドラム叩くんだから戻らないと」と言われた「エース」と、曲を繰り出すたびに共感と熱狂がうねるように広がる。少し前のMCで橋本が地元の友達に「ロックスター」と言われたエピソードを話すと、須藤に「まだだよ」とツッコまれ、橋本は「まだか〜。まぁなれなくてもどっちでもいいわ」と笑っていたが、楽曲と4人の一挙一動が横浜アリーナに集まった大勢の心を動かしていくハルカミライを、ロックスターと呼ばずに何と呼ぶのだろうか。
この日、映像や照明を大胆に活用した演出で新しい姿を見せたハルカミライだが、そもそも彼らの楽曲はファンタジックなものも多い。「人生はちっぽけなもんだ」との言葉から「宇宙飛行士」で舞台は宇宙へ。〈この旅の始まりは星の瞬きに比べれば/小さくても確かな消えない光〉と歌ったあと、〈ねえ サテライト小さな光〉と歌う「アストロビスタ」、橋本がアコギをかき鳴らして〈踏み出した右足は地球/踏ん張っても踏ん張っても/周回軌道の上〉と歌い始めた「満・地球の出」が星空のような映像とともに届けられる。その次には〈確かな2人のために どんなに小さくても世界は光るの〉と歌う「ウルトラマリン」が選曲され、ビジョンの映像も会場のファンの手に。宇宙という壮大な舞台から、現実に視点が移る。彼らが歌っているのは、現実逃避のためのファンタジーではなく、宇宙の中の一人として、この世界を生きているというリアルなのだ。
さまざまな世界を見せた2時間弱。「みんな集まってくれてサンキューね!」と言うと「ラストベット」へ。〈人生賭けてからそれ以外の賭けに興味無い〉とバンドに人生を賭けた彼らの生き様を歌う後ろのビジョンには、彼らのホーム・八王子の街を映し出した映像が。この日のMCで、橋本は祖父の葬式に行けなかったと明かしていた。それでも「バンドなんっつーのはいろんなものを犠牲にして、でもおかげで今日があったりするから、選んだのはこれでいいんだなって思って、これからも楽しんでいきます」と話していた。そして最後に選曲されたのは「ヨーロービル、朝」。言うまでもないが、改めて書くと、ヨーロービルというのは八王子RIPSと八王子 Match Voxというふたつのライブハウスが入っているビルの名前。ハルカミライが笑って泣いて、悔しかったり馬鹿騒ぎしたり、夢を見たりしてきた日々が詰まっているビル。横浜アリーナという大きな会場で「ヨーロービル、朝」を鳴らす4人はとてもうれしそうだった。
アンコールでは、この日の0時に突如発表された「リュミエール」を披露。フランス語で「光」を意味するタイトルを冠した同曲では、〈あなたを(苦悩ごと全部)/巻き込んだ/日々こそが/誇りと言えるのです〉〈この歌は僕からの贈り物〉とリスナーへの想いが綴られており、ファンは演奏とともに映し出された歌詞に見入ったり、拳をつきあげたりしながら、彼らの想いをたっぷりと受け取っていた。そして最後は「春はあけぼの」で再会を約束して『AVAN』の幕を下ろした。
「AVAN」とはドラマや映画の導入シーンを差す言葉。この言葉をタイトルに冠したライブで、ハルカミライはアリーナも似合うバンドであるということを示した。橋本は「きっとまだここにいないハルカミライに出会うべき人がどこかにいて、そいつらのところまで届いたらいいなと思ったりしている」と話していた。ヨーロービルから横浜アリーナに辿り着いたハルカミライは、これをプロローグに、いつも一緒に歌ってくれる“リュミエール”とともに、これからハルカミライに出会うべき人たちと出会う旅に出る。