ダンスチャレンジで再燃する韓国HIPHOPバイラルヒット5選 ショート動画をきっかけに開く新たな扉

Molly Yam:“チュンジャンリップ”の狂気ーーTikTokが生み、シーンが認めた異端児

Molly Yam - Burning slow (Official Video)

 noahjooda、GongGongGoo009らが本人の意図とは異なる形で注目を浴びたとすれば、Molly Yamの場合は、緻密に計算されたSNS戦略で成功を掴み取った確信犯と言えるだろう。彼はおかっぱヘアに、黒い“チュンジャンリップ”(ジャジャン麺を食べたあとにソース=チュンジャン〈춘장〉で唇が黒くになることを指す)のように黒いリップメイクを施したユニークなビジュアルで、スーパーや地下鉄で自分の楽曲を踊り歌うという奇抜な映像を発信し続けた。

@sik.k94

”Burning slow (ft. Sik-K, GGM LIL DRAGON) - Remix“ Out Nooow🖤🖤🔥

♬ Burning slow (feat. Sik-K, GGM LIL DRAGON) (Remix) - Molly Yam

 本格的に注目を集め始めたのは、2025年1月投稿の地下鉄で撮影された動画からだった。そのシュールなビジュアルと中毒性のあるフックを武器に、動画は瞬く間に拡散され、駅構内、バス、警察署の前などあらゆる場所で、腕を長く伸ばして動かす独特な動作とともにキャッチーなフックを披露。ほどなくして話題の中でSik-KとGGM LIL DRAGONが参加したリミックスバージョンを発表するに至る。

 もちろん二人を含んで公共の場でのチャレンジ映像も公開した。その後もKid Milli、LOCO、SWINGSら有名ラッパーたちが参加する新曲をさまざまな場所で共演するという映像も相次いで公開。2025年5月に発表されたアルバムのタイトルは『TIKTOKSTA』であり、アートワークには黒いリップスティックが描かれるほど、SNSでのイメージを自身のアイデンティティとして確立した。

 バイラルになったチャレンジには、一般人はもちろん他のラッパーたちも挑戦し、アイドルの中ではKISS OF LIFEやYOUNG POSSEのようにHIPHOPを好んで聴くことで知られるグループが披露したりもした。特に最近では、韓国でスイーツの“ドゥ・ジョン・ク”(ドバイもちもちクッキー)が流行しており、食べた後にチョコがたっぷり付いた唇がMolly Yamのシグネチャーリップに似ているという理由で、「ドゥ・ジョン・クを食べてからのBurning Slow」といった変形チャレンジも流行した。

Leellamarz:兵役中も冷めやらぬ人気、話題の“彼氏ソング”の主人公に

Don′t do That

 韓国芸術総合学校とマンハッタン音楽学校を経たバイオリンの英才としても知られるLeellamarzは、HIPHOPをベースに多様なスタイルを試みるアーティストだ。2017年にデビューし、「AMBITION MUSIK」の一員としてメロディアスなトラップシンギングを武器に活動してきた。凄まじい作品量でも有名で、アルバム6枚、EP7枚をはじめ、10枚を超えるコラボ作品を発表している。2025年まで社会服務要員として兵役を履行していたが、その間にも彼の楽曲はチャレンジ熱風に乗り、再び脚光を浴びることとなった。

 「Don′t do That」は、Leellamarzと数多くの共作を行い、『SHOW ME THE MONEY 10』のプロデューサーとしても知られるTOILとのコラボアルバム『TOYSTORY3』の収録曲だ。HIPHOPというよりは、イージーリスニングなR&Bやポップスに近いトラックと言える。〈넌 뭘 해도 예쁘니까 화장하지마/스케줄 비워놨으니까 딴 데 가지마/I love you so much 조금 뻔하지만/더는 아무 말도 내게 하지마〉(君は何をしても可愛いから化粧なんてするな/スケジュール空けておいたから他の場所に行くな/I love you so much 少しありきたりだけど/もう何も僕に言うな)――そんな可愛らしくもロマンチックでキャッチーな歌詞が、チャレンジ動画のパートとして愛された。

@enhypen

hajima❌ #SUNOO #SUNGHOON #ENHYPEN

♬ Don′t do That - Leellamarz & TOIL

 歌詞を表現したシンプルでキュートな振り付けのため、一般ユーザーの間でも流行。アイドルの中ではENHYPEN、aespa、BOYNEXTDOOR、ALLDAY PROJECTなどが参加し、2025年の夏を熱く盛り上げた。

NOWIMYOUNG:狎鴎亭のヒップスター、『SMTM12』の問題児が放った「咳」の音

KOLOK COLOK

 NOWIMYOUNGは、現在の韓国HIPHOPシーンで最もホットなレーベルのひとつである「KC」に所属する2000年生まれのラッパーだ。2022年にデビューし、狎鴎亭(アックジョン)エリアの特色とライフスタイルを自身の音楽に反映する独自の世界観を提示している。2000年代から2010年代のBIGBANGや2NE1を彷彿とさせるレトロな感性と狎鴎亭のカラーの調和が、音楽のみならず独特なファッションやビジュアルディレクション能力まで含め、既存のHIPHOPとは一線を画す個性として注目されている。

 「KOLOK COLOK」は、所属レーベルのコンピレーションアルバム『KC3』に収録された楽曲だ。曲名は韓国語での咳の音「콜록콜록」(コルロッコルロッ)をスタイリッシュにローマ字表記したものであり、他の収録曲と同様にタイトルが“K”と“C”で始まるふたつの単語で構成されている。「俺が出すかっこよさ(クールさ)が冷たすぎて、人々を咳き込ませる」という意味を歌詞にを込めたこの曲は、今回も狎鴎亭および狎鴎亭ロデオといった彼を表す象徴的な地域への言及も登場し、ドロップパートでは派手な電子音がまるでエレクトロニックトラックのような印象を与える。

@babymonster_yg_tiktok

감기 조심🤧💨 #BABYMONSTER #베이비몬스터 #AHYEON #아현

♬ KOLOK COLOK - KC & NOWIMYOUNG

 チャレンジのポイントは、〈내가 내는 간지는 Make you Cough Cough〉(俺が出すかっこよさは Make you Cough Cough)と言いながら咳の音を真似る部分だ。音に合わせてカメラを大きく揺らし、実際に咳き込んだような演出をするシンプルながらインパクトのあるチャレンジ。現在までにBABYMONSTERやYOUNG POSSE、82MAJORといったアイドルのほか、多くのHIPHOPファンが参加している。

 韓国の音楽シーンにおいて、HIPHOPは実に多様な形で大衆に親しまれ、消費されているジャンルだが、海外のリスナーにはまだその名が十分に知られていない実力派アーティストも数多く存在する。今回紹介した5曲は、いずれも一般のリスナーからK-POPアイドルたちまでがこぞってピックしてしまうほど、抗いがたいキャッチーさと強烈なフックを持った楽曲ばかりだ。ショート動画の「ダンスチャレンジ」という最も親しみやすい入り口から、さらに深く、より多様な韓国HIPHOPの世界へと足を踏み入れ、新たな音楽の扉を開くきっかけになれば幸いだ。

※1:https://www.instagram.com/reel/DROV72nkryf/
※2:https://www.melon.com/chart/search/index.htm

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