歌い手・ゆう。が語る初のアニメ主題歌に込めたこだわり じん、ナユタン星人、夏代孝明が引き出した個性

歌い手・ゆう。が、3月4日に最新シングル『綺麗。』をリリースした。表題曲は、1月5日の放送開始とともにオンエアがスタートしたTVアニメ『綺麗にしてもらえますか。』(TOKYO MXほか)のオープニング主題歌となっている。
楽曲を書き下ろしたのは、『カゲロウプロジェクト』をはじめ、数々の物語性ある“青い音楽”を紡いできたボカロP・じん。ストリングスの響きが咲く「綺麗。」は、作品の繊細で温かな空気を丁寧にすくい取りながら、ゆう。の明瞭でまっすぐなボーカルと交わることで、その世界観をより鮮やかに浮かび上がらせている。1曲の中で移ろう感情の機微や、声色の変化も聴きどころだ。初回限定盤と通常盤の2形態でリリースされたCDのカップリングには、ナユタン星人、夏代孝明というボカロシーンを代表するクリエイターが参加し、それぞれ異なる角度からゆう。の個性を引き出している。
幼少期から抱き続けてきた歌うことへの想い、アニメ主題歌という新たな挑戦、そして2ndワンマンライブへ――。ゆう。のこれまでと、今作『綺麗。』に込めた思いに迫る。(小町碧音)
歌への情熱と原点ーー幼少期から一貫していた“歌手”という夢
――まず最初に、音楽に興味を持ったきっかけから教えていただけますか?
ゆう。:最初にしっかりと音楽に触れたきっかけはピアノでした。両親から、「物心がついた頃には歌うのが好きな子供だった」と聞いていて。音楽が好きそうだから、という理由で、3歳の頃にピアノを習わせてくれたみたいです。
――ゆう。さんの“好き”の原点は、どんな音楽でしたか?
ゆう。:わりと親の影響は大きいと思います。なぜかうちの子守歌が「涙そうそう」(夏川りみ)だったんですよ(笑)。なので、自然と世代が少し上の楽曲に触れることが多くて。その中でも、最初にハマったアーティストはDREAMS COME TRUEさんだったと思います。母も好きで、小学生の頃はよく聴いていましたし、人生で初めて行ったライブもDREAMS COME TRUEだったはずです。
――ゆう。さんは12歳でYouTubeへの歌の投稿を始めたんですよね。そこから、どうして歌い手の世界に?
ゆう。:インターネットで自分の歌を投稿する文化があるって知った時に、「これだったら今の自分でも始められるな」と思って、すぐ行動に出たんです。そこから「歌ってみた」を投稿していく中で、VOCALOIDや歌い手文化を知って、いろんな曲を聴き始めました。もともと、ボカロ曲を歌う、歌い手になりたいというよりは、ただ歌うのが好きで歌っていただけで。界隈では、結構珍しいタイプかなと思います(笑)。
――当時は、どんな曲が流行っていた印象がありますか?
ゆう。:一番最初の記憶だと、みきとPさんの「ロキ」(2018年)とか、バルーンさんの「シャルル」(2016年)とか。そのあたりの印象が強いです。
――そして13歳でミックスと動画制作にまで取り組んでいたということで、早熟ですよね。
ゆう。:私、昔からこだわりがめちゃめちゃ強いんですよ。自分でできるところは自分でしたほうが理想に近い形になるなと思ったのがきっかけです! 私は歌だけが自分の作品になるというよりは、投稿したひとつの動画そのものがまるっと自分の作品になると思っていて……自分で作っている割合が多いぶん、自分の“味”が出るとも思いますし。
――プライベートでも、こだわりはあるほうですか?
ゆう。:いや、そうでもなくて(笑)。歌とか音楽以外のことに関しては、本当にこだわりがないですね。そのぶんのこだわりも全部活動に向いているみたいな感じといいますか、ほかの人よりも、普段の生活に対するこだわりはないと思います。
――高校卒業後、本格的に音楽活動をやっていこうと決めたタイミングもあったと思います。趣味から本気の活動へと舵を切った理由を教えてください。
ゆう。:そもそも始める前から、本格的に音楽をやっていくことは自分の中で決めていたと思います。幼稚園の頃から一貫して、将来の夢を聞かれたら「歌手」って、ずっと答え続けていたので。なので、何かを決意して切り替えたというよりは、「夢が実現できそうだから、そっちに時間を使いたいな。頑張ってみよう」というイメージですね。
――実現できそう、と思えた瞬間があったんですね。
ゆう。:YouTubeにショート動画というフォーマットができた早めの段階からショート動画で歌ってみたを上げ始めたんですが、ありがたいことに、1本目、2本目から結構再生が回って、そこをきっかけに一気にチャンネル登録者数も増えたんです。「頑張ったらいけるかもしれない」と思えたのは、そのタイミングかもしれないですね。
――活動が本格化する中で、歌に向き合う気持ちに変化はありましたか?
ゆう。:変わったなと思った瞬間も、正直ありました。急に伸びたことで自分との感覚のギャップが出てきて、純粋に歌を楽しめなくなったらどうしよう、って思ったこともあったんです。でも、全然そんなことはなくて。結局、歌がめちゃめちゃ好きでした。歌は自分が楽しむ前提がないと、いいものはできないと思っているので、「まずは楽しむ」というのは、今も常に一番に考えています。
念願のアニメ主題歌担当、憧れのじんと描く『綺麗にしてもらえますか。』の世界
――ここからは、3月4日にリリースされたアニメ『綺麗にしてもらえますか。』のオープニング主題歌について伺わせてください。今回はCDとしてのリリースですが、ゆう。さんにとって初めてのフィジカル作品になりますよね。
ゆう。:そうですね。正直、まだ完成した実物をしっかり手に取ったわけではないので、CDを出している実感はそこまで強くはないんですけど(笑)。楽しみです。
――さらに、アニメのオープニング主題歌を担当すること自体も初めてということで。
ゆう。:はい。アニメの主題歌を歌わせていただくのは、今回が初めてです。いつかアニメの主題歌をやりたいなと思っていたので、お話をいただいた時は、純粋に嬉しかったです。
――アニメ『綺麗にしてもらえますか。』の世界観に触れたとき、まずどんなことを感じましたか?
ゆう。:全体の雰囲気としては、爽やかさがありつつ、すごく繊細な作品だなと思いました。自然が印象的に描かれていたり、人と人との触れ合い、人の温かみみたいな部分も強く感じて。繊細で爽やかだけど、ちゃんと温かみもある。そういう空気感が、大きな印象として残っています。
――「綺麗。」を書き下ろしたのは、じんさんです。ゆう。さんは以前からじんさんの「サマータイムレコード」も歌ってみたでカバーされていますよね。
ゆう。:そうですね。以前から楽曲はもちろん拝聴していました。実は今回、私のほうからスタッフさんに「ダメ元でもいいので、せめてお声がけだけでもお願いできませんか?」と、提案したんです。快く引き受けていただけて、本当に嬉しかったです。
――じんさんのデモを受け取った時、原作を踏まえて歌唱のイメージは浮かびましたか?
ゆう。:漫画を読んだあとに楽曲を聴いたんですけど、作品のイメージと曲のイメージがすごく一致していて。こうしよう、と考えるというより、こう歌うべきなんだろうな、って自然とわかる感じでした。あと、じんさんが制作される楽曲は、どの要素も本当に素晴らしくて……。 中でも、Aメロから一転してガラッと印象が変わるBメロの展開と、そのメロディの雰囲気が特に好きで、そこが一番印象に残っています。
――タイトルの「綺麗。」の「。」も印象的ですよね。ゆう。さんの名前にも「。」がついています。
ゆう。:でもたぶん、どっちかというと作品からの「。」かな(笑)? 曲も私も作品も、全部最後に「。」がついている。少しレアな状況になっていますね。偶然なのかどうかはわからないですけど、「。」がついたことで、より締まりがよくなったというか。しっとり感が上手く出ている気がしますね。
――レコーディングにじんさんは立ち会われたんですか?
ゆう。:じんさんはいらっしゃらなかったですね。ちょうど同時進行でインストのレコーディングをされていたので、ボーカルはボーカルで進める形でした。でも、レコーディング前に、オンラインでじんさんとお話しさせていただく機会があって、その時にサビの〈触れてみれば〉の“み”を地声でいくか裏声でいくかを相談したんです。そしたら「僕はゆう。さんの裏声がめちゃめちゃ好きなので、“み”はぜひ裏声でお願いします」と、すごく力強く言ってくださって。それがすごく嬉しかったですね。
――歌うにあたって、特に意識したポイントはありますか? 歌詞で挙げるとどのあたりでしょう。
ゆう。:そうですね……Bメロの〈思い出をそっと留めたら〉は、コードもメロディも耳に残るので、そこをより繊細に、でも少し引っかかりがあるような感じにしたくて。ほかのフレーズよりも、少しだけ癖を強めに、ニュアンスも大きめに歌いました。
それから、じんさんにも相談した、サビの〈触れてみれば〉の“み”ですね。AメロやBメロよりもサビは力強さが出るんですけど、“み”を裏声にすることで、作品の丁寧さとか、爽やかさを残せるように意識しました。裏声にしたことで、上手く爽やかさが残っているんじゃないかなと思っています。歌詞全体を通して、丁寧に歌おうという意識は常にありました。
――ラスサビ前のCメロも、すごく引き込まれました。タイトル通り、本当に“綺麗”な一曲ですよね。
ゆう。:ありがとうございます。全体的に難しかったんですけど、特に苦戦した記憶がありますね。これまで、あまりスローテンポのオリジナル曲を歌ってこなかったので、まずそこが大きな挑戦で。テンポがゆったりしているぶん、語尾の処理が少しでも甘いと、そのまま耳に残ってしまうなと感じましたので、語尾の息の抜き方とか細かいニュアンスの出し方にはかなり気をつけて歌いました。
――タイアップ曲を歌うにあたって、これまでの楽曲とはアプローチの違いを感じましたか?
ゆう。:これまでは「楽曲をどう噛み砕くか」だったのが、「綺麗。」に関しては、『綺麗にしてもらえますか。』という作品全体を含めて、どう噛み砕くか、という作業になったので、そこがすごく新鮮でした。作品があるぶん、自分の中での解像度も上がりやすくて、結果的にやりやすさも感じました。



















