川上洋平×SennaRin「ENDROLL」は“映像が鳴る”1曲に 『閃光のハサウェイ』劇中歌がバイラルヒット
Spotifyの「DailyViralSongs(Japan)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「SpotifyTopSongs」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標を元に作られたランキング。同チャートの2月18日付のTOP10は以下の通り(※1)。
1位:BellyJay「MONTAGEMHIKARI」
2位:かぐや(CV:夏吉ゆうこ), 月見ヤチヨ(CV:早見沙織), TAKU INOUE「ray (超かぐや姫! Version)」
3位:川上洋平 [Alexandros]×SennaRin「ENDROLL」
4位:クレイジーウォウウォ!!「トンツカタンタン」
5位:Number_i「3XL」
6位:BUDDiiS「#KISSYOU」
7位:Juice=Juice「盛れ!ミ・アモーレ」
8位:柿崎ユウタ「月が綺麗ねと言われたい!」
9位:鶴 and 亀「LOVE 2000」
10位:HIROTO (INI)「HEADACHE」
今回は、2月18日付のデイリーバイラルチャートで3位にランクしている、川上洋平 [Alexandros]×SennaRin「ENDROLL」を取り上げる。本曲は、1月30日に公開された映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』の挿入歌。劇場三部作の二作目にあたる本作は、主人公のハサウェイ・ノアの内面へ深く踏み込んだ物語で、テロリズムや地球環境問題といった重いテーマを提示しながら、映像表現と物語性の両面でシリーズ第一作にあたる『閃光のハサウェイ』に続くヒットを記録している。
「ENDROLL」は、[Alexandros]の川上洋平とSennaRinによるデュエット。作詞はSennaRinとcAnON.、作編曲は澤野弘之が手がけた。川上は、前作主題歌「閃光」([Alexandros]/2021年)に続き、シリーズ連続参加となる。
[Alexandros]の「閃光」を振り返ると、周囲を巻き込む疾走感がある楽曲に、川上は鋭いアタック、サビの中高音は号砲のような瞬発力で鳴らし、声そのもので楽曲を前へと押し出していた。そこから一転して、今回の「ENDROLL」はミディアムチューン。歌い出しから息を滞留させるような柔らかい発音で、語尾を伸ばして次の言葉へとつないでいっている。そこには、抒情的なメロディを一本の美しい線として描いているような感触もある。「閃光」が衝動の発露だとすれば、「ENDROLL」は内省の持続だろう。解放感のあるロングトーンでも叫ばず、声を抱え込むようなニュアンスを残す。音圧で押し切るのではなく、感情を滲ませているのだ。このコントロールが、映画の主人公であるハサウェイの現在地とも重なる。作品理解の深さが、ボーカルの質感にまで反映されていると言えると思う。
一方のSennaRinは、低音域に芯があり、倍音を豊かに含みながら広がりを持たせた声を響かせる。ハスキーでソウルフルなアプローチもあるが、湿度は低い。わずかに空気を含ませた発声で旋律を立ち上げ、感情を揺らしながらも、それをすぐに静かに沈める。特に英語パートでは母音の連結が滑らかで、フレーズを自然に聴かせる技術が際立っている。
デュエットという形式は、ヒロインのギギ・アンダルシアとハサウェイの関係性を想起させるものでもある。興味深いのは、二人の声が重なる場面でも、和声が完結していない点だ。展開を押さえた構成がそう感じさせるのだろうか。各フレーズで物語を完結させながらも、楽曲全体で大きなカタルシスを与ることはない。まるでシーンを切り取ったように、未完のまま余韻を残すのだ。その設計に、澤野の手腕が色濃く表れている。
最後に触れておきたいのは、前作『閃光のハサウェイ』の劇中歌「TRACER」「Möbius」(いずれも澤野がプロデュース)もバイラルチャート上位に入っていた事実だ(※2)。映画のヒット、澤野弘之というブランド、『機動戦士ガンダム』という世界的コンテンツ、そして映像と音楽の高精度な結びつきが、再生へ直結する構造を形成している。最新作でも劇中歌がチャート上位に浮上したのは、その延長線上にあると言えるだろう。
とはいえ、最終的に楽曲が支持されるかどうかは、曲単体の強度にかかっている。「ENDROLL」は、音だけで映像を想起させる力がある。だから、“映像が鳴る”瞬間を体験したくなる。聴き手のなかでその衝動を生み出せる強度こそが、この曲の最大の魅力だ。
※1:https://charts.spotify.com/charts/view/viral-jp-daily/2026-02-18
※2:https://realsound.jp/2021/07/post-813089.html