TRACK15、重ねてきた日常を糧に紡ぐ未来 “バンドの覚悟”が感動を呼んだ初のホールワンマン

 東京での初のワンマンから1年3カ月。大阪の4人組バンド・TRACK15が、初のホールワンマンライブ『TRACK15 ONE MAN LIVE -at LINE CUBE SHIBUYA-』を開催した。初めて彼らのライブを観た時、バンドのポテンシャルを感じるとともに「もっといろいろな会場で観たい」と思ったが、まさかこんなに早く叶うとは。チケットはソールドアウト。弾む手拍子に迎えられてメンバーが登場した。

 シンバルの4カウントをきっかけにライブが始まると、蓮(Vo/Gt)が「会いたかったよ、渋谷ー! 全員、跳べる?」と投げかけ、オープニングナンバーの「シティーライト、今夜」へ。その歌声やフロントマンらしい立ち振る舞いで観客を引っ張る蓮も、早速両サイドに出てきて心躍らせるフレーズを届ける寺田航起(Gt)と高橋凜(Ba/Cho)も、躍動的なビートで観客をジャンプさせる前田夕日(Dr/Cho)も頼もしく、見違えるほどの成長を感じさせた。観客との信頼関係も固く、蓮がマイクを離れると、大きなシンガロングが起こる。そして爽やかなギターリフとともに「ダーリン」へ。TRACK15の淀みない音と歌は、観客を迎え入れようという気持ちの表れだろう。観客は一緒に歌ったり手拍子したりしながらそれに応えている。

蓮(Vo/Gt)
寺田航起(Gt)

 メンバーが「マジですごい景色」「感慨深いですね」と笑顔を見せた最初のMC。ここでは蓮がチームのスタッフの存在に言及し、「関わってくれた人たちの気持ち、全てが入っているのが僕の声だと思って聴いてください」と語った。その直後に演奏された「サンブンノイチ」では、蓮の力強い発言と芯の通った歌い出しを受けて、3人の鳴らす音もドライヴ感を増した。バンドの絆を感じさせる場面である。蓮が生み出すメロディと歌声がバンドの武器であることを理解し、寺田、高橋、前田はその歌に寄り添うアンサンブルを磨き続けている。蓮もまた、フロントマンとして前線に立つことを引き受けている。そんな4人の結束をダイレクトに感じられるのがTRACK15のライブだが、活動の規模が大きくなった今、彼らの背負うものはもっと多い。そして覚悟は人を強くさせる。蓮が語ったように、バンドの活動を支える人たちの存在や、TRACK15の音楽を日々の支えにしているリスナーの存在を自覚することで、彼らはより強く前を向けるようになったのではないだろうか。

前田夕日(Dr/Cho)
高橋凜(Ba/Cho)

 4人の根底にあるのは、これまでの経験や出会った人々が今の自分を作っているという感覚だろう。「じゃあ、ここ渋公でライブハウスの曲をやります」と蓮が告げて演奏された「ハルハル」は、下積みの日々を想起させる言葉が並ぶギターロックナンバーで、中盤でテンポダウンする展開はまるで走馬灯のようだ。MCでは、上手くライブができず悔しい想いもした日々への言及もあった。客席にはライブハウス関係者も招待されており、苦い経験も今の糧と捉えている様子だった。続く「私的幸福論」では、〈ひとりが怖いから〉のあとに「ひとりじゃないよ」、〈それでいい〉のあとに「これだけでいいよ」と付け加えるアレンジが印象的だった。「ハルハル」からの流れも相まって、ライブハウスで積み重ねた日常を噛み締めるバンドの実感として、それらの言葉が響いている。

 過去の積み重ねや今の自分を取り巻くものを肯定するこの姿勢は、TRACK15の楽曲そのものにも通じている。彼らは主人公の願いが成就するか/しないかは置いておいて、その心の動き、“過程”を大事に歌ってきた。観客に着席を薦め、バラードを中心に披露したセクションでは、観客も自分自身の物語がそっと肯定されていくような心地を覚えたことだろう。そしてこのセクションでは、蓮自身の物語も丁寧に語られた。「大阪から一歩ずつ、この街に来たよって曲を歌います」と「ロンリーナイト」へ。「4年間ずっと一緒にいた大切な人の歌を歌います」と「ブーケ」へ。曲の前に添えられる言葉は、楽曲に込めた私的な記憶や感情を観客と共有しようとするものだ。そして「ふゆのうた」の前では、次のように語られた。

「今日は俺の大好きなおじいちゃんの誕生日なんです。たぶん、歌うことが好きなのは、ちっちゃい頃、カラオケに連れてってもらったからなのかなって。このステージで歌うところは見せられなかったけど……どこかで見てるのかな。今日はおじいちゃんに、涙の代わりにこの曲を贈ります」

 バンドで鳴らすイントロを経て、歌い出しは蓮のボーカルとシーケンスのみ。涙で言葉を詰まらせる場面もあった。しかし3人が合流し、ギターを手にしてバンドを背負う立場に戻った蓮は、顔を上げてしっかりと歌った。自分が前を向かなければ、という気持ちだったのだろう。そんな彼に寄り添うように、バンドの温かいサウンドが響いた。そして〈今年の雪は去年よりも綺麗だって〉というフレーズには、特に力が込められていた。喪失の経験も含めて、この先の未来をよりよいものにしていこうという決意。大切な人から受け取ったものを、自分の手で、確かに未来へ繋いでいこうとする覚悟の表れだった。

 ライブの終盤に差し掛かると、蓮がライブ前日のことを振り返った。大阪に住んでいる4人は、昨日東京に来て同じホテルに泊まった。MCで何を喋ろうかと考えていた蓮が高橋に相談していたら、寺田と前田も「緊張で寝れなくて」と言いながら起きてきた。そして何気ない会話を重ねるうちに、初めての遠征やライブハウスでの悔しかった経験など、これまでのことをいろいろ思い出したという。

 蓮は「でも絶対に負けたくなくて、諦めたくなくて。続けてきた答えが今ここにあります」と語りながら、「今日ここで1個、言っとかなきゃいけないことがあります」と続けた。そして「俺はこのチームで日本武道館に立ちたいです。みんなを日本武道館に連れて行きたいと思ってます」と宣言した。その決意を胸に秘めたまま活動を続けることだってできたはずだ。しかし、ファンの前であえて口にすることで、後戻りできない覚悟を固めたかったのだろう。

 彼らは、覚悟がバンドを強くさせることをすでに知っている。直後の「千年計画」の春風のようなサウンドは、いつか武道館で笑い合う4人の姿を想像させた。ライブ中、蓮が観客に向けてしきりに言っていた「もっと!」という言葉は、やがて彼ら自身を鼓舞する言葉に変わった。バンドの演奏に迷いはなく、確信に満ちた音が鳴り響いていた。ラストナンバーは「オレンジ」。歌詞の通り、ステージの上半分がオレンジ色に染まるなか、彼らは〈僕は僕の歌で迎えに来たんだここまで〉、そして〈泣き虫で口下手で頼りないけど/今度は僕が救ってやるから〉と歌った。ここからまた未来へ向かう過程で、彼らは今日この瞬間をいつか迎えに来るだろう。その時、約束を交わしたファンとともに笑顔の武道館ライブが実現するはずだ。

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