『多聞くん今どっち!?』内ユニット・F/ACE バイラルヒット 声や歌詞の“キャラクター性”が促す深い感情移入
Viral Chart Focus
Spotifyの「DailyViralSongs(Japan)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「SpotifyTopSongs」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標を元に作られたランキング。同チャートの1月21日付のTOP10は以下の通り(※1)。
1位:Worldwide Skippa「don't stop freestyle」
2位:LNGSHOT「Saucin'」
3位:F/ACE「Sweet Magic」
4位:T.N.T「未来へ」
5位:ざらばんし「心がくたばるよ」
6位:シエナ・スパイロ「Die On This Hill」
7位:Trooper Salute「天使ちゃんだよ」
8位:King & Prince「Theater」
9位:A$AP Rocky「Punk Rocky」
10位:ナナツカゼ「あのね」
今週は、F/ACE「Sweet Magic」を取り上げる。
本曲は、2026年1月放送開始のTVアニメ『多聞くん今どっち!?』(TOKYO MX系)のオープニングテーマとなる楽曲だ。原作は師走ゆきによる同名漫画で、主人公と“推し”の感情の距離感をコミカルかつ丁寧に描くラブコメ作品である。作中に登場する5人組アイドルグループ・F/ACEのライブシーンは完成度が高く、アニメでありながら、実際のライブ映像を観ているかのような立体的な空間を感じさせる。また、その表現力や演出の完成度も含め、二次元アイドルとして十分な存在感を発揮していると言えるだろう。
本作において主題歌「Sweet Magic」は、F/ACEという存在を観客側、つまり視聴者側に引き寄せる役割を担っている。
F/ACEは、キャラクターを演じる声優5名が歌唱も担当。声優が歌を歌うことが珍しくなくなって久しいが、それでもF/ACEの5人は歌唱力の面で際立っている。安定しているというだけでなく、楽曲の中でもしっかりとキャラクターを演じていることに加え、アドリブのようなアプローチも随所に登場する。
「Sweet Magic」は、F/ACEというグループのレぺゼン、かつ彼らのファンへのアンサーソングだ。ダンサブルなパーティーチューンだが、冒頭からメンバーそれぞれが声色とアプローチの違うラップを披露する。目まぐるしいマイクリレーもこの曲の特徴のひとつだが、5人のキャラクターがあるゆえ、歌の役割分担がはっきりしており、一聴しただけでも、はっきりと声の違いがわかる。マイクリレーの際、バースとバースのあいだにあえて少し長めの間を作り出し、リスナーに次の声を意識させる構成もうまい。それぞれの声の使い方、そしてこの“間”が、F/ACEを“聴き分けられるグループ”として成立させている。
サビ直前の〈コッチ見て〉という台詞も象徴的だ。TikTokではこの台詞をリップシンクさせた動画も多く投稿されており、特徴的なフレーズは次々に流れてくるショート動画のプラットフォームでも目を惹き、アニメ視聴者を超えて多くのユーザーに採用されて、バイラルヒットにつながっているようだ。このフレーズを“歌”ではなく“台詞”として楽曲の中に配置し、かつ音源において艶っぽさを全開にできる点に、声優ならではの表現力が表れている。
本曲がファンへのアンサーソングとして機能している理由は、歌詞に明確に表れている。まず注目したいのは二人称の〈君〉が、ストーリーの軸に使われていること。全部で7回登場するが、回を重ねるごとに〈君〉との距離が縮まっていく。また、〈僕を好きになる C’mon〉〈独り占めにして〉といったフレーズは、聴き手を“観客”という集合体でなく、一人ひとりの当事者にして、1対1の関係を曲の中で作り上げていっている。この関係性が見えるからこそ、ファンの中にこの曲への感情移入が生まれるのではないだろうか。
「Sweet Magic」は、アニメ主題歌でありながら、声によるキャラクター像の提示、ポップスとして聴かれるきっかけ、リスナーによる解釈の余地が、順を追って積み重なるように設計されている。この積み重ねによって、F/ACEという作品上のアイドルは、現実のリスナーにとって“応援できる存在”として立ち上がっていっている。物語を彩るための主題歌にとどまらず、キャラクターとファンの関係性までを形づくる点に、アニメと主題歌の新しい着地点を見出すことができる。
※1:https://charts.spotify.com/charts/view/viral-jp-daily/2026-01-21