MONOEYESはバンドという人生を振り返ることなく走り続ける 特別ゲストも招いた10周年ぴあアリーナ公演

 今年、2015年の結成から10周年のアニバーサリーを迎えたMONOEYES。その節目を記念した一夜限りのスペシャルなライブが12月21日、横浜・ぴあアリーナMMで開催された。MONOEYESにとって史上最大規模となる会場で行われたワンマンライブは、10年かけて培ってきたファンとの絆を確かめ、愛と熱と喜びを分かち合う、とても幸福なエネルギーに満ちた時間。それは、常に現場でバンドをサポートし続けるオーディエンスへのMONOEYESからのギフトであり、この先もここで音を鳴らし続けていくという4人の決意表明だった。

細美武士
スコット・マーフィー
戸高賢史
一瀬正和

 開演時刻、ステージの巨大なLEDスクリーンに、10年のさまざまなシーンをコラージュしたムービーが流れる。そしてカウントダウンが始まった。会場にいる全員で声を合わせて数えると、一瀬正和(Dr)のシンバルが4カウントを刻み、MONOEYESのストーリーの幕開けとなった「My Instant Song」が鳴り響く。細美もスコット・マーフィー(Ba)も飛び跳ねながら笑顔。美しいハーモニーとブライトで力強いメロディが会場中に広がっていく様子は、とても美しい。続いて「Ladybird」。一瀬のパワフルなドラムの上で、細美と戸高賢史(Gt)のツインギターが軽やかに舞う。細美が「いこうぜ!」と叫んでサビに突入すると、ぴあアリーナはますます開放的でホットなムードに包まれていった。ピーナッツバターへの愛をアメコミ風のファニーな映像とともに届けた「Skippies」がさらに空気をリフトアップしていくなか、細美がニヤリとした笑みを浮かべながら叫ぶ。「おまえら、10周年なめんなよ!」――冒頭3曲とこの一言で、どデカい空間に集ったオーディエンス全員のマインドをバチっとセットアップしてしまうあたりはさすがである。そういうタイミングで〈いつか明日が終わるなら/今日はここですごそう〉と歌う1stアルバム『A Mirage In The Sun』からの大名曲「グラニート」を届けてくるところも憎い。「ありがとう!」と、この夜何度も繰り返すことになる言葉を張り上げる細美に、歓声と拍手が降り注いだ。

 ライブは「Let It Burn」から最新アルバム『Running Through the Fire』の楽曲を集めたブロックへと入っていく。歌詞に書かれた〈we〉を、細美は自分自身とオーディエンスを交互に指差しながら歌う。さあ、ここから始めようぜということだ。さらに、シンガロングが巻き起こった「Good Enough」にスコットによるパワーチューン「Adrenaline」と、今のMONOEYESの姿を鮮明に刻みつける。そしてMCを挟んで「Free Throw」へ。ここから、ライブはアリーナらしいフルスケールのパフォーマンスとともに展開していく。レーザーライトが飛び交う会場のサイズを活かした演出にメロディの切なさが共振して、非常にドラマティックに響く。もちろん彼らの主戦場はライブハウスだが、こうした場所だからこそ描けるものもある。それは続く「Reflections」でも同様で、コーラスが生み出す奥行き、ソリッドなバンドサウンドがもたらすパワー、シンプルだからこそ揺るぎないバンドの肉体が伸び伸びと躍動している様は圧倒的だった。

 この日限りの、という意味では、4人の音がぶつかり合って生まれる火花が目に見えるような「Like We’ve Never Lost」を終えて細美がステージに呼び込んだゲストも特別だった。『Running Through the Fire』をプロデュースしたマイク・グリーンだ。「ここに来れて、皆さんとこの瞬間を分かち合えて、本当に光栄です。なぜなら、僕も皆さんと同じようにMONOEYESの音楽が大好きだから!」というスピーチから、マイクも加わって「Ghosts of Yesteryear」を一緒にプレイ。長身を折り曲げながら黒いレスポールを弾くマイクの音がMONOEYESに新たな色を加え、より壮大な景色を描き出した。

「なんの取り柄も能もない俺たちの音楽を好きになってくれて、俺たちに頑張る意味を与えてくれてありがとう。10年間、すげえ楽しかった」

 そんな言葉で感謝を伝えたのち、「世界が眠る日」を切々と届けると、スコットが歌う「Borders & Walls」と「Somewhere On Fullerton」(ALLiSTER)がもう一度ボルテージを高め、最後のMCへ。一瀬が「ようこそ、我が街横浜へ!」と叫ぶ。このライブ、そしてここまで続いてきたツアーに込めた想いを語る彼に、細美から「イップスは大丈夫?」と声がかかる。それを聞いて「言っていいの?」と言いながら、一瀬は今年自分自身の体に起きていたことを話し始めた。MONOEYESは9月からツアーを回ってきたが、そのツアーが始まる直前、彼はイップスになってしまい、以前のようにドラムを叩けなくなってしまったのだという。そこから新たな叩き方を習得してツアーを走り切ってきた彼は「今日ここで叩けてホッとしてます」と笑顔。そんな姿にオーディエンスは温かな拍手を贈った。「歳を取るとできないことが増えてくるけど、やれないことをやろうとするのは無理。体は変わっていくから、できないんだったら次のやり方に挑戦したほうがいいと思います」という一瀬の言葉を受けて、細美も口を開いた。「確かに歳取るとできないことは増えるし、常に万全なんてことはなくなるけど、イッセ、俺今日ライブやってて思ったんだよな。今だからできることもあるなって」。そしてフロアに向けてこう宣言。「壮絶な生き様、見せますよ」――10周年のその先へ。走り続けるMONOEYESは、その後もライブの最後までフルスロットルで走り抜けた。

 〈でも このストーリーの終わりはまだ知らない〉と歌う「アンカー」から始まった最後のブロックで、バンドのロゴを背にラストに鳴らされたのは「リザードマン」。〈足掻け/ひきずれ/僕の抜け殻/ここには/帰る場所はない〉というフレーズが、先ほどの一瀬と細美の言葉に重なって感情を揺さぶってきた。

 その後、ライブはアンコールへ。細美のアコギと優しい歌に強い意思が宿る「Shadow Boxing」、「いこうぜ!」の合図とともに全員でさらなる高みへと駆け上った「Run Run」、さらに客席の明かりがついてもなお鳴り止まない拍手に応えてのダブルアンコールでは、細美が「楽しかったけど、MONOEYESはライブハウスが似合うな。またライブハウスで会おうぜ」と告げ、「Two Little Fishes」と「彼は誰の夢」を届けた。アリーナもバッチリ似合っていたと思うが、やはり根っこがどこにあるかという話なのだろう。

 この日、細美はMCでも曲のなかでも、何度も何度も「ありがとう」と口にしていた。戸高やスコット、一瀬の言葉にも、10年続けてきた手応えと感慨が滲んでいた。だが、「When I Was A King」のときに細美が言っていた「MONOEYES、まだ続きます。これからもよろしく」という言葉がすべてだろう。10周年を祝う美しい雰囲気のなか、ロックバンドとして後ろを振り返ることなく走り続ける姿勢を絶えず見せてくれた。思いっきり自由に、彼らはバンドという人生を生き続けていく。

◾️セットリスト
1. My Instant Song
2. Ladybird
3. Skippies
4. グラニート
5. Let It Burn
6. Good Enough
7. Adrenaline
8. Roxette
9. Free Throw
10. Cold Reaction
11. Reflections
12. 明日公園で
13. Interstate 46
14. Fall Out
15. Like We've Never Lost
16. Ghosts of Yesteryear (Guest Gt:Mike Green)
17. 3,2,1 Go
18. 世界が眠る日
19. Borders & Walls
20. Somewhere On Fullerton
21. アンカー
22. Get Up
23. When I Was A King
24. リザードマン
[Encore]
1. Shadow Boxing
2. Run Run
[Encore2]
1. Two Little Fishes
2. 彼は誰の夢

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