迷いの先に見えた“歌う場所”、ソロシンガーとしての想い

――華乃さんは、ソロで歌うシンガーとして活動していきたいという思いはもともとあったんでしょうか。

華乃：以前所属していたグループ（GANG PARADE）を卒業した時には、「ひとりでやっていこう」という明確な気持ちは全然なくて、「具体的にこういうことをやりたい」というのもあまりなかったんです。漠然とまだアーティストとして活動していきたいという気持ちややりたいこと、いつか立ちたい場所はあったんですけど、「どういう形で活動するのか？」「ソロで活動していくのか？」と決めていたわけではなくて。

　それまで忙しくて、自分と向き合う時間がなかったので、グループを辞めてからはゆっくり考える期間でした。そんな時にご縁があって、「MAISONdesでソロで歌ってみない？」と声をかけていただいたんです。最初は自信がなかったんですけど、MAISONdesさんの曲はよく聴いていましたし、「自分が好きだった音楽と通ずる部分があって、合っているのかもしれない」と思って、やってみようと。あのきっかけがなかったら、ソロでやる選択はしていなかったかもしれません。

ふるーり：華乃さんは歌うべき人ですよ。

華乃：嬉しい！　ちょっと自信がつきました（笑）。

――どんなソロシンガーになっていきたいですか？

華乃：Z世代を中心に誰かに共感してもらえるような曲や、自分自身も好きなインターネットミュージックを歌っていきたいと思っています。

――「恋愛の曲といえば華乃ちゃんだよね」と言われるようになりたいですか？

華乃：なりたいです。そうなれるように頑張ります。こうしてソロで歌い始めて、すごくわくわくしているんですよ。ソロなので全部が自分の責任だからこそそのぶん自由度も高くなったり、やりたいことも決めやすくなったと感じているので、いろんなことに挑戦していきたいですね。

ふるーり：改めて、ソロとしての最初の曲を作らせてもらえて光栄です。「1作目だからどうしよう？」とすごく悩んだんですけど、個人的にも納得のいくものができた手応えを感じています。

華乃：最初に「お気の毒様ね。」のデモを聴いた時、「めっちゃいい！」と思いました。私が歌った「秒針を噛む」の音源を聴いてから作ってくださったと思うんですけど、音域も歌いやすくて、私に合っているテイストだったというか……あの音源を聴いただけでここまで私に合った曲を作ってくださったことに驚きました

ふるーり：ありがとうございます（笑）。先ほどもお話ししたように、サビ前に〈『お気の毒様ね』〉を入れたいという構想が最初からあって。それを踏まえつつ、キャッチーなサビを作りたかったんです。Aメロ、Bメロに関しては、譜割りや文字数をなるべく詰め込みすぎないように意識しています。2番で文字数が多くなるところがあるんですけど、なるべく文字数を削いで、歌声の魅力が前に出るように考えました。

――約3分の尺の中に、かなり起伏のある展開が凝縮されているのも印象的です。

ふるーり：SNSの時代なので、「情報が多くて長いとみんな飽きてしまう」という記事を見たことがあるんです。だから「いかに飽きさせないか」という点はかなり意識しました。いろんな展開を盛り込んで、楽曲としても成り立たせるようにしています。

華乃：歌っていても、ずっと楽しいんです。1曲なのに、何曲も歌っているみたいな感覚があって。ラップも含めて、いろんな要素が入っていますし。

ふるーり：難しかったでしょ？

華乃：難しかったです（笑）。ラップは速いし。

ふるーり：自分でデモの仮歌を歌った時、「これ、やりすぎたかな？」って思いました（笑）。

華乃：でも、ラップのところは楽しいです。ほかの部分もメロディが複雑だったりするので、ボイトレとかでかなり練習しましたね。特に〈長い夢を見てたの〉のところは難しくて……メロディを覚えるのに苦戦しました。

ふるーり：メロディとコード進行が不穏な感じのところですね。浮遊感みたいなものを表現したくていろいろ試行錯誤した結果、メロディがめっちゃ気持ち悪くなって（笑）。でも、それが逆にいいのかなと思ったんです。〈このまま安心して〉のところまでが音が不安定で、〈安心して〉の〈て〉でようやく安定して次の展開にいくという流れまで含めて、狂気、毒々しさみたいなのを表現したかったので。ここは上手くできたなと思っています。

華乃：何度も聴いて覚えました。この曲、歌詞も含めて、ちょっと怖い雰囲気があるんですよね。主人公の女の子は依存しやすい恋愛体質で、吹っ切れていないのに強がっている感じ。それこそ「呪うぞ」みたいな（笑）。

ふるーり：はい。「お気の毒様ね。」は、呪いの歌ですから（笑）。華乃さんの歌声によって絶妙なかわいさが出ているんです。“女性”というより“女の子っぽい”明るさがあるので、狂気がより際立ったと思います。

――この曲は、失恋後に上書き保存して気持ちを切り替えて前に進んでいる曲かと思いきや、実は依存し続けていて。

ふるーり：そうですね（笑）。

華乃：“強がり”みたいな要素がある気がする。

ふるーり：「後悔させてやる」みたいなことですね。自分の中でいつか〈『お気の毒様ね』〉というフレーズをサビ前に使いたいという構想があったんです。そういう曲やフレーズはTikTokなどでも使いやすいと思っていたので、「ここだ！」というタイミングで、ようやく形にすることができました。

――かわいい曲だと思って聴き始めたら、途中からどんどん様子がおかしくなっていくんですよね。

ふるーり：はい、そこはぜひ感じ取ってほしいところです。あと、語尾のニュアンスでも毒々しさを出せていたらいいな、と。レコーディングでは「もうちょっと毒っぽく」とディレクションしていただいたので、練習していた時よりもいいものが出せていると思います。

ふるーり：語尾もこだわりましたね。サビ終わりの〈しまえばいいや。〉の〈や。〉の落ちていくところとか、喉のがなりじゃないですけど、若干ジリジリした質感を入れています。

華乃：表現の引き出しが増えたと思いますし、すごく勉強になるレコーディングでした。もっと表現の幅を広げていきたいですね。

ふるーり：この曲、後半になるにつれて、実は音をめっちゃ歪ませているんです。どんどん壊れていくんですよね。徐々に変化していくところも聴いていただけると、いろいろ発見があって楽しいのかなと思います。

華乃：音だけでいろんな表現ができるから、音楽って面白いですよね。2番のピアノのフレーズも好きです。

ふるーり：気づいてくれて嬉しい！　ピアノは弾けないんですけど（笑）、その部分は自分も気に入っていて、すごくこだわった箇所です。

華乃：あと、ダンス動画も観ていただきたいですね。TikTokとかでも踊りやすいと思います。“ガールズ”というダンスのジャンルを日本語の曲で踊るのが好きなんですけど、それを自分の曲でできたのが嬉しくて。すごくかわいい振り付けにしたので、いろんな方々に踊っていただけたら嬉しいです。

ふるーり：華乃さんのダンス動画、観ました。めっちゃ良かったです！　曲を作っている時は、あそこまでの激しいダンスは想定していなくて。上半身と手だけの振り付けで踊ることはできるのかなと思っていたんですけど、あんなに激しめのダンスが踊れる曲になるとは想像していなかったので驚きました。

華乃：ダンスは私の強みでもあると思うので、ステージで披露する機会があったら、歌の合間にダンスも取り入れられたらいいなあと考えています。

ふるーり：華乃さんはキャラクターも明るいので、楽曲やダンスはもちろん、人となりももっとSNSで発信していったら、さらにファンが増えるんじゃないかなと思います。女性のファンも、これからどんどん増えていきそうですよね。

華乃：ファンになってくださる同世代の方はいますね。私の曲で踊ってくれたりもするので、そういう方たちがもっと増えていったら嬉しいです。

@kanyoring らん先生に『お気の毒様ね。』いっしょに踊っていただきました✨　全身ダンスコラボできるのとってもうれしい T_T ありがとうございました🫶 dc:me #newsong #music #ダンス動画 #振付 #dance @らん先生 ♬ オリジナル楽曲 - 華乃

――ファッションを参考にしている女性ファンもいるのでは？

華乃：はい。たまに、ですけど（笑）。ファッションを積極的に発信はしているわけではないんですけど、写真や動画で着ている私服に反応していただくことはありますね。

ふるーり：「お気の毒様ね。」がきっかけで、さらにそういう人が増えたらいいですね。

――「ふるーりさんの作る華乃さんの曲、第2弾が聴きたいです！」というファンの熱い声が上がるかもしれないですよ。

ふるーり：ぜひ、そういう声を上げてください（笑）。