華乃×ふるーり 特別対談:「お気の毒様ね。」は“令和的ラブソング”? 楽曲に潜む狂気、歌声の魅力に迫る

 9月26日に「ならない日々 feat. 華乃, MIMI」でMAISONdesに入居し、シンガーデビューした華乃。アイドルグループ・GANG PARADEのメンバー“カ能セイ”としての活動を経て、新たな一歩を踏み出している彼女のソロ名義での第1作「お気の毒様ね。」が、11月14日にデジタルリリースされた。

 作詞・作曲をしたのは、実写版『【推しの子】』の「我ら完全無敵のアイドル!!」、日曜日のメゾンデの楽曲などを手掛け、編曲やイラストでも才能を発揮しているふるーり。終わった恋に対する複雑な感情が、キャッチーなメロディ、毒気を帯びた音像、ミステリアスな展開によって表現されている。今回、本楽曲について華乃、ふるーりにじっくりと語り合ってもらった。(田中大)

“恋バナ”から始まった打ち合わせ、テーマは「女の子の恋愛は上書き保存」に

――今回初タッグ組まれたお二人ですが、これまでに何度かお会いしているんですか?

ふるーり:3回目くらい?

華乃:そうですね。初めてお会いしたのは、楽曲の打ち合わせの時でした。

ふるーり:楽曲を作るにあたって「こういうシチュエーション、方向性で」というような話をした時ですね。

華乃:恋愛をテーマにした楽曲にすることはもともと決まっていたので、ふるーりさんと私で恋愛の価値観とかのお話をしたんですよ(笑)。その時間で打ち解けられたのかなと思います。

ふるーり:自分が学生だったのはかなり前のことなので、今の学生の恋愛に関する価値観があまりわからなくて、「SNSでどんなことやってるの?」というような話をしました。僕、学生時代、LINEの既読がつかないのにInstagramのストーリーズが上がると、もやっとすることがあったりしたんですよ(笑)。そういうのは「今だったらBeReal.なのかな?」とか。

華乃:私の周りの友だちの恋愛事情も踏まえてお話をしましたね。“繋がり”が目に見えてわかるので、今でもSNSの存在や影響は大きいんだと思います。

ふるーり:使うアプリは変化しても、根本的な部分は変わらないなと思いました。つまり、最初の打ち合わせは恋バナから始まったということです(笑)。

――(笑)。恋バナをして感じた華乃さんの印象は?

ふるーり:女の子らしいな、と思いました。男性がイメージする“女の子像”みたいなものをすごく感じて。

華乃:嬉しい! 私はお会いするまで、ふるーりさんがどんな方なのかわからなかったんです。SNSとかでも顔出しをされていないので。実際にお会いしたら「好青年だ!」と思いました。

ふるーり:おお! 嬉しい!

華乃:私、意外と人見知りなんですけど、ふるーりさんが気さくに話してくださったので、気負わずにお話をすることができました。あと、「若い!」という印象もありましたね。ここまで近い世代のクリエイターさんに曲を作っていただくのは、これが初めてかもしれないです。

ふるーり:そうなんだ?

華乃:はい、近い世代で音楽を作る方と出会ったことがなくて。恋愛のこととかも含めて、お話ししやすかったですね。

――今回、ふるーりさんに曲をお願いすることになった経緯を教えてください。

華乃:マネージャーさんから提案していただいたんです。私は以前からふるーりさんが手掛けた『【推しの子】』の曲などをよく聴いていたので、「ふるーりさんに作っていただけるんだ!」とすごく嬉しかったのを覚えています。

――打ち合わせを経て、ふるーりさんはどのような曲を作りたいとイメージしていきましたか?

ふるーり:打ち合わせの前に、「こういう曲にしてください」というリファレンスがあったんです。「ラブソングにしてください」「ターゲット層は18歳から24歳くらい」といったものですね。それを踏まえて「女の子の恋愛は上書き保存されていくもの」というテーマにフォーカスしていくことを僕から提案しました。そこで、歌詞を描く上でリアリティがあった方がいいと思ったので、華乃さんとの最初のミーティングでいろいろお話を聞かせてもらいました。

華乃:周りから「失恋をした時に音楽を聴く」っていう話をよく聞くんです。ちゃんみなさんの曲を聴いて、“強い”マインドになったりするとか。

ふるーり:あと、あまり引きずらず、さっぱりと切り替えるタイプの人でも、どこかで相手に依存し続けてしまうことがあるという話を華乃さんがしてくださって。それを表現したいと思い、「お気の毒様ね。」に繋がっていきました。

――曲を作るにあたって、華乃さんの歌声のどのような部分を活かしたいと思いましたか?

ふるーり:「秒針を噛む」のカバーを送ってもらっていて、それを聴いた時に「めちゃくちゃいい声だな」と思ったんです。自分の好きな声でもありますし、いい意味で今風のネットシンガー感がある声だなと。この声を活かしたかったので、サビのメロディをかなりキャッチーにして、彼女の声の一番いいところに〈だんだん〉のトップがくるようにしました。

華乃:声を褒められるの、めっちゃ嬉しいです(笑)。お会いした時から声のことを褒めてくださったんですよね。レコーディング中も「いい声だねえ」と言ってくださっていました。

@kanyoring ⭐︎ #秒針を噛む #ずっと真夜中でいいのに #歌ってみた ♬ オリジナル楽曲 - kanyoring - 華乃

ふるーり:この声のVOCALOIDがあったら欲しいですから。

華乃:VOCALOID華乃?

ふるーり:ありそう(笑)。華乃さんの活動のテーマは“次世代のラブソングシンガー”だと聞いていましたが、まさにそれを体現する声だと思います。今は「歌ってみた」という既存曲を自分で歌うカバー文化がありますけど、それってどうしてもオリジナルじゃないので、ただ「歌っている」という感覚になりがちなんですよね。でも、華乃さんの声は、そうはならない。今回の曲を作ったのは自分なので「ほかの人が作った曲を歌っている」みたいになるかなと思ったんですけど、しっかりと歌いこなして、自分の曲として成立させているんですよね。

華乃:それは、ふるーりさんが引き出してくださった部分だと思います。

ふるーり:いえいえ、とんでもないです。「恋愛の曲を歌ってもらったら“勝ち”だな」という声質だと思います。親近感があって、心の内から出ている声というか。

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