Mori Calliope×中島健人、予想外のコラボに大反響 「Gold Unbalance」歌唱力の相乗効果から生まれる中毒性

Viral Chart Focus

 Spotifyの「DailyViralSongs(Japan)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「SpotifyTopSongs」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標を元に作られたランキング。同チャートの12月17日付のTOP10は以下の通り。(※1)

1位:シャキーラ「Zoo」
2位:Number_i「LAVALAVA」
3位:Lenar「Montagem Miau」
4位:ROIROM「Dear DIVA」
5位:Trooper Salute「野菜生活」
6位:VERRY SMoL「イタリアンサーファー」
7位:MAMA「Queen of Highway」
8位:Mori Calliope「Gold Unbalance feat. 中島健人」
9位:INI「Present」M!LK「好きすぎて滅!」
10位:ZXKAI, slxughter「NO BATIDÃO」

 今回は、ホロライブEnglishに所属するVTuberで“死神ラッパー”のMori Calliopeと、中島健人によるコラボレーション楽曲「Gold Unbalance」をピックアップする。本曲はAmazon MGMスタジオ製作の新番組『最強新コンビ決定戦 THEゴールデンコンビ2025』(Prime Video)のテーマソング。Mori Calliopeは、日本語と英語を織り交ぜた独特の歌詞と卓越したラップスキルでVTuberとしてだけではなく、アーティストとしても世界認知を広げ、最新アルバム『PHANTOMIME』(2024年)はiTunesアルバムオルタナティブチャート世界10の国と地域で1位を獲得した。対する中島は、どんなジャンルにダイブしても存在感を残すボーカリストだ。

 「Gold Unbalance」のサウンドは、低音のビートを軸にした現代的なHIPHOP/オルタナティブポップの質感を持ち、タイトで畳みかけるようなリズムが楽曲全体を牽引している。この重いビートが、サビに向かってドラマチックで力強いメロディに展開していく中で、ラップと歌の境界を曖昧にしている。こういった楽曲の構造自体が、あえて均衡を崩しながらも前へ進む「Gold Unbalance」というタイトルを表している。

 Mori Calliopeのボーカルは、鋭いフロウでアグレッシブなトラックを前に押し出す効果を担っている。一方で中島の歌唱は、低音や声量ではなく、地声とファルセットの中間にポジションを置き、楽曲を別の軸で支え、攻撃的なサウンドに奥行きを与えている。スリリングな2人のマイクリレーは、この曲の大きな魅力のひとつだ。ところどころでお互いのアプローチをあえて寄せているように聴こえる瞬間があり、歌声が切り替わっても、どちらが歌っているのか一瞬わからなくなるようなコンフュージョン(混乱)が生まれている。その感覚自体が「Gold Unbalance」という楽曲のテーマと強く結びつき、繰り返し聴きたくなる中毒性を生み出している。

【MV】Gold Unbalance feat. 中島健人 - Mori Calliope

 また、本曲でぜひ注目してほしいのが、2番に登場する中島のラップのアプローチだ。〈1等2等3通りって/はなからLoser/うざいくらい貪欲に/ハート地獄からかっぱらっちまえ〉というバースの“ら行”。ここのラインの“ら行”だけでも、驚くほど多彩なスキルを見せている。後半に向かい、この”ら行”の発音が、徐々に荒々しくなっていくあたりに、中島の表現者としてのカメレオンぶりが光る。

 英語と日本語が高速で切り替わる歌詞も本作の特徴だが、中島はMori Calliopeの英語のリズムに過度に寄せることなく、日本語ポップスで培ってきた言葉の置き方を楽曲全体を通して維持している。この“翻訳されていない歌声”が、Mori Calliopeのグローバルな表現空間の中でも浮くことなく機能しているのは、声音を的確に使い分けることができる中島だからこそだろう。

 バーチャルとリアル、英語と日本語、HIPHOPとJ-POPという複数の文脈を横断する本作だが、単なる話題性に留まらず、それぞれの歌声とサウンドの強度によって成立している。「Gold Unbalance」は、異なる要素を無理に調和させるのではなく、差異を残したまま並走させることで強度を獲得したのである。その中心にある中島の歌唱は、ジャンルや言語を越えても揺るがない日本語のポップスの座標を提示している。

※1:https://charts.spotify.com/charts/view/viral-jp-daily/2025-12-17

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