CANDY TUNE、7人で流した涙の意味とは グループ史上最大キャパ 東京ガーデンシアター公演が生んだ特別な感情
CANDY TUNEをこのタイミングで観られるのは貴重なことだ。『第67回 輝く!日本レコード大賞』(TBS系)の優秀作品賞受賞、そして『第76回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)への初出場。それを見据える12月5日、東京ガーデンシアターという単独公演としてはグループ史上最大規模となる会場で、メンバーはあめちゃん(ファンの呼称)へ直接『レコ大』と『紅白』への出場を報告した。そして、アンコールでメンバーにもサプライズ発表となったのが、来年6月5日、6日に2DAYSで開催となる初の日本武道館単独公演だった。
泣き崩れるメンバー7人。示し合わさずとも、メンバーそれぞれが気づけば「武道館に立ちたい」と話していたと福山梨乃が明かす。そして村川緋杏は、「一本道じゃなくて、いろんな道をうねうねうねうねうねして。うちら何回泣いて、毎日ミーティングして、もうミーティングしなくていいよってくらいに、きゃんちゅーを大きくすることをみんなで考えて、ここまでやってきて。やっと武道館だよ、みんな!」とメンバー、そして目の前にいるあめちゃんへと涙ながらに溢れる思いを伝えた。
「倍倍FIGHT!」がリリースされたのは、2024年4月。そこから約1年を経てバイラルヒットとなり、そのポジティブな歌詞と中毒性のあるメロディ、SNS映えするキャッチーな振り付けで2025年、グループ自体を大きく躍進させるきっかけとなった。世間的には“「倍倍FIGHT!」のアイドル”、もしくは“今をときめくKAWAII LAB.のアイドル”として広く認知されているはずだが、2023年3月にデビューしたCANDY TUNEは決して順風満帆な始まりではなく、紆余曲折の道を辿ってきたのだ。
武道館発表の映像に映し出されているように、『TIF2023 メインステージ争奪LIVE』では前哨戦で敗退。1周年記念ツアー『CANDY TUNE 1st ANNIVERSARY TOUR 2024』のファイナル公演として2024年4月に開催された豊洲PITでのライブも、ソールドアウトには至らなかった。そんな公演で1曲目に披露していたのが「倍倍FIGHT!」である。
そこからのサクセスストーリーは先述した通りであり、今年の『TOKYO IDOL FESTIVAL 2025 supported by にしたんクリニック』ではメインステージのHOT STAGEに見事立ってもいる。加速していく人気に反して、メンバーから感じられるのは地に足の着いた姿勢。雨降って地固まる。決して甘んじない、芯の強さとも言えるだろうか。
今回、開催された全国ツアー『CANDY TUNE JAPAN TOUR 2025 - AUTUMN -「TUNE QUEST」』がZepp規模の会場だということに驚きを覚えつつ、「あめちゃんを増やす」というテーマが、初心を忘れない、その堅実な姿勢を物語っているようにも思う。「倍倍FIGHT!」は、作詞曲を手がけた玉屋2060%がメンバーと対話をし、彼女たちの背景を歌詞に落とし込んでいったのは有名な話。〈何回転んでも 立ち上がれ〉〈厄介な問題も飛び越えろ〉〈険しい道も共に歩むんだ You will never walk alone/躓いてもがいて強くなるんだ〉――その前向きな歌詞には、彼女たちの物語が宿っているからこそ、聴く人の心を打つパワーがある。
今年4月に開催された『CANDY TUNE 2nd ANNIVERSARY TOUR 2025「CANDY CANDY PARTY」』より仲間入りしたバックバンドに名付けられているのも、「倍倍FIGHT!」の歌詞に登場する〈勇気の証〉だ。バンドセットでのライブはKAWAII LAB.のなかでも、CANDY TUNE独自の特徴となっている。この日、アンコールを含めた全22曲がライブアレンジとなっており、途中には“勇気の証ストリングス”として弦楽器も初めて加わった大編成でのライブとなった。「いえなかったことば~ありがとう~」「永遠Twilight」、そして「ナナイロプロローグ」をしっとりと、真っ直ぐに、力強く歌唱するメンバーたち。バンドサウンドにも負けない歌唱力を7人それぞれが持ち合わせているのと同時に、「ナナイロプロローグ」のポジティブなメッセージ性がより際立つことに気づく。
また、現場に行ってあらためて感じるのは、「倍倍FIGHT!」以外にも爆発的に盛り上がるキラーチューンがCANDY TUNEには多くあるということだ。デビュー曲であり代表曲の「キス・ミー・パティシエ」はもちろんのこと、あざと可愛いグループのパフォーマンスが炸裂する「必殺あざとポーズ」、「推し♡好き♡しんどい」は小川奈々子の「しんどい……」の言葉を合図に曲前からあめちゃんが歓喜の声を上げている。「推し♡好き♡しんどい」と同じく、メンバーの“眠り”が曲のきっかけにある「備えあれば無問題」は、「倍倍FIGHT!」に匹敵するコールが楽しい定番曲である。筆者個人としては、「TUNE MY WAY」の緩急あるバンドアレンジがライブ映えしていて思わず奮い立った。
特筆すべきは、今回のツアーで「永遠Twilight」とともに初お披露目された「アイしちゃってます♡」だ。サビ入りの〈メロすぎちゃって、きゅん!愛〉をはじめ、クセになるパワーワードやメロディの詰め合わせとなっているこの楽曲は、今後もライブに欠かせないものになっていく予感がしている。可愛らしいあざと曲に、バンドサウンドに乗せたクールな曲、「倍倍FIGHT!」のようなポジティブな曲と、幅広いジャンルでフロアをロックできるのが、今のCANDY TUNEなのだと再認識した。
武道館公演は発表から182日後。およそ半年という期間は、かつて苦戦した豊洲PIT公演の発表から開催までとも重なるが、村川は「前だったら不安な気持ちになってたんですけど、今の私たちとあめちゃんなら、絶対にうまくいくってそう思えるので、私たちもあめちゃんと一緒にいっぱい大きくなっていきたいと思います!」と頼もしい言葉を口にしていた。「倍倍FIGHT!」でゲスト登場した“漢のなかの漢”角田信朗が「見たことない景色 見に行こうぜ」というキラーフレーズでナレーションを務めた発表映像は、年末の音楽特番を経て飛躍する未来しか見えない4年目に向けた“確定演出”。〈私たちがいつもそばにいるからさ〉(「倍倍FIGHT!」)、〈どんなときも/隣にいてくれたよね/守るから/今度はわたしが/守るから〉(「LASTING TUNE」)――新たなあめちゃんを連れて、CANDY TUNEのかけがえのないパーティーは続いていく。