米米CLUB、シリアスなことも笑いで吹き飛ばしてきた40年 カールスモーキー石井&BONが追求するライブの美学
「君がいるだけで」や「浪漫飛行」など1990年代のJ-POPを象徴するミリオンヒットを数多く生み出してきた米米CLUBが、全国4カ所7公演のツアー『米米大興行 人情紙吹雪 〜踊ってやっておくんなさい〜』を開催。10月18日・19日に開催された神奈川・ぴあアリーナMMでの2DAYSから最終日となった19日の模様がWOWOWでノーカット放送・配信される。
二部構成で組まれたライブ。シニカルな笑いが満載だったお芝居仕立ての第一部。ゴスペラーズのゲスト出演や、デビュー40周年記念ファンセレクトアルバム『愛米 〜FANtachy selection〜』からの楽曲がいち早くメドレーで披露された名曲揃いの第二部。「米米CLUBはギャップでやって来た」と話すカールスモーキー石井。米米CLUBが40年かけて磨き続けてきたもの、ライブに込めたものは何だったのか? リーダーのBONとカールスモーキー石井が、ライブを振り返る。(榑林史章)
カールスモーキー石井のパンク精神ーー「やれば目立つということばかりやらせてきた」
ーーまず、40周年イヤーのツアーを終えた今、どんなお気持ちでしょうか。
石井:今回はたまたま40周年というタイミングでしたけど、そういうことにこだわってきたバンドではないですからね。もともと友達同士や兄弟でやっているから、あまり何年っていう区切りがなくて。
BON:バンド結成はもっと前だから、自分たちとしてはそっちのほうに意味があると思っていて。だから結成が1982年だということだけは明確に覚えています。
石井:集まってお互いの顔を見て、「相変わらずバカだな〜、おもしれえな〜」って確認したくらいの気持ちかな。
ーー60代でツアーというので、40年前とは違う部分も?
石井:数えられたのは50歳までで、それ以上は数える指がないので(笑)。でもまあ米米の場合は誰かがおっ死んじまったらそれでお終いだと思ってます。このメンバーが俺たちなので、誰かが欠けるということは、足とか手がもげたのと同じこと。そのときが辞めるときなのかなと。
ーー40年、60代になってもパフォーマンスやモチベーションを維持できている秘訣は何だと思いますか?
石井:『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に出させていただいたとき、端っこに座らされて。タモさんの隣に座らせてもらえなかったときは、「やっぱりまだまだあれなのかな」って思わされましたよ。「次回はお願いします!」って(笑)。
BON:そういうエネルギーですよ、反骨精神。この歳になってまだ1人でパンクやってるんですから、この男は! 音楽のパンクじゃなくて、精神的なパンクね。それにはいつも頭が下がります。
石井:米米CLUBに関しては、普通のバンドがやらないことを、とにかくメンバーにやらせるんです。嫌がろうが何しようが、これをやれば目立つということばかりやらせてきました。
BON:今回のツアーの「任俠」というテーマも、好きなのはてっぺいちゃん(石井)だけですから。
石井:鶴田浩二さん、高倉健さん、座頭市。今、子どもに見せるなと言われているものほど、見せたほうがいいと思うんです。「こういう大人にはなるなよ」って、反面教師であることが1番の教育だと思っているから。
ーーじゃあ、米米CLUBを観たほうがいいと。
BON:反面教師的にね(笑)。
ーーそもそも石井さんが、「任俠」をテーマにやろうと?
石井:ずっと考えていたんです。「米米CLUBでやったら面白いだろうな〜」って。隠し持ったドスじゃないけどずっと温めていたんです。そんなとき40周年だから何かやってほしいと話があって、ちょうどいいからやろうって。でもBONはマジメだから、最初「時代的にどうなの?」って顔をしていたけど。今どきは言いたいことも言えなかったり、我慢している人も多いじゃないですか。じゃあここは米米CLUBが立ち上がろうって。
ーーライブは二部構成で、第一部ではその「任俠」をテーマにしたお芝居が繰り広げられ、その都度物語に沿って楽曲が演奏されていきました。セリフとか台本とかは?
BON:てっぺいちゃんが全部書きました。すごく分厚いやつを。本番はほとんどアドリブになっちゃったけど、本当はしっかり台本があったんです。
石井:頑張って書いたのに、台本通りやってくれたのはMARIとMINAKOだけ。コータローなんか崩しまくりで、本当に腹立つんですよ。こういう場で言うのもあれですけど、俺ってけっこう「段取り男」なんです(笑)。パンクだ反骨精神だと言われたわりに。
BON:意外とキチンとしてるんです。
石井:俺が自分で崩すぶんにはいいんだけど、それをコータローがやるものだから、何とかして戻そうと必死でしたよ。「どうやってまとめよう?」って頭のなかがグルグル回ってました。コータローはおかまいなしでテキトーなことばかりやるし、フラッシュ金子はマジメだから、セリフに出て来た“北酒場”に反応して「北酒場」を弾いて歌わせようとするし。そのあとに「君がいるだけで」を歌うのに、雰囲気だってあるんだからやめてくれよ、「もう〜」ってなりました(笑)。
ーー米米CLUBは昔から、そのライブでしか聴けない曲がたくさんありました。第一部には、そういう曲も多かったです。
石井:そうそう。そのライブの1回しかやらなかった曲で、いい曲もいっぱいあるんです。今回やった「般若の涙」なんかもいい曲だったでしょ!
BON:てっぺいちゃんが鼻歌で作るんですよ。第一部のお芝居で歌った「お前を守るぜ」とかも。てっぺいちゃんの鼻歌が、携帯の留守電に録音されてて。まだ歌詞もないし、唸ってるだけみたいなやつだけど、それをギターのBEが「きっとこういう曲にしたいんじゃないか」って、コードを付けて楽譜に起こしてくれて。
石井:一応、曲名は付けてあるんです。それがないとイメージを共有できないから。
BON:それをてっぺいちゃんに聴かせたら、「誰がこんなの作ったの?」「けっこう良い曲じゃん!」って言われてガク〜って崩れ落ちましたよ。「あなたが作ったんですよ!」って。でも、そういう作り方は、昔からまったく変わってないです。ずっとそういう作り方でやって来ました。
ーー「君がいるだけで」や「浪漫飛行」も?
BON:ケースバイケース。みんなでスタジオに入って、せーので合わせるときもあるし、今話したみたいにてっぺいちゃんが「こんなのができたんだ」って鼻歌で歌ったものを元に、みんなで集まって仕上げるときもあるし。
石井:ライブの話に戻ると、ショーアップすることって、すごく難しいんです。メンバー1人ひとりをバラバラにしてしまうとつまらないバンドなので(笑)、それを面白くするためには、派手さだったり、ここでこう出て来るとかアイデアが必要で。みんなの出番がきちんとあるように、動きが止まらないように演出するのが俺の仕事。その一つがセリフだったり曲だったり。メンバーもみんな「次は何をやるんだろう?」って。それも40年変わっていないことの一つですね。