ITジャーナリスト 三上洋が語る、乃木坂46に救われた命 5年生存率 “50%” がん闘病を支えた1曲

乃木坂46「相対性理論に異議を唱える」に支えられた闘病生活

――そんな状況を、三上さんはどう乗り越えていったんでしょうか。

三上:乃木坂46の「相対性理論に異議を唱える」という楽曲が、私を救ってくれました。

乃木坂46『相対性理論に異議を唱える』

――岡本姫奈さんがセンターを務めた5期生曲ですね。

三上:“5期オタ”にとっての悲願は、5期生メンバー全員のセンターを実現させることだったんです。当時は、5期生11人中10人は自身がセンターの楽曲を持っていて、岡本さんだけがセンター曲を持っていなかった。そんななか、私がステージ4の宣告を受けた日(12月6日)の翌日夜12月8日0時に「相対性理論に異議を唱える」のMVが公開されることが発表されたんです。その公開までの方法も特殊で、7日23時からMV公開までの1時間、過去の5期生曲MVと5期生一人ひとりのコメントが放送されるというもので。最後に岡本さんが出てきた瞬間に、ファンは彼女がこの楽曲のセンターだということを確信したわけです。これに私がどれだけ勇気をもらえたか……。ごめんなさい、おっさんが泣きながら話してしまって(笑)。

――いやいや。でも、本当に思い入れの深い楽曲なんですね。

三上:その日からは、本当にずっと「相対性理論に異議を唱える」だけを毎日聴いていました。この曲は「相対性理論なんか超えられるんだ」と、物理法則すらも捻じ曲げるほど愛の力を信じている主人公の歌です。抗えない現実――私にとってはステージ4のがんでしたが――に立ち向かうという点で、とても深く共感できたんですよね。もちろん、諦めずに努力を続けていた岡本さんがセンターを務めたということも、私を鼓舞してくれる大きな要因でした。この曲にすがっているような感じでしたね。MVも本当に美しかったです。

――サビの直前に一瞬膝を落とす、あの振り付けは素晴らしいですよね。

三上:そうなんです! あの一瞬だけで鳥肌が立ちます。バレエ経験のある岡本さんの魅力が際立っていますよね。ぜひライブでも披露してほしい楽曲です。

――その後、病状はいかがだったのでしょうか。

三上:PET-CT検査というがん検査を受けたところ、光が見えたんです。先ほど腎臓と肺にがんが見つかったと話しましたが、これが転移である場合、ステージ4という診断は“治療”というより「がんと付き合っていく」「余命を考える」という深刻なものです。しかしPET-CT検査によって、転移ではなくまったく別のがんが偶然2カ所にできていることが分かりました。肺はステージ3、腎臓はステージ1で、異なるがんができていたんです。主治医は「それぞれ別のがんですから、ひとつずつ個別撃破していきましょう」と言っていました。

――希望が見えたんですね。

三上:はい。“個別撃破”というキーワードを聞いた瞬間、今自分の身体で何が起きていて、今後どう対処していくのかをやっと頭で理解ができて、「なんかいけるかも」と少し前向きになれました。さっきまでの錯乱状態が収まったんです。「相対性理論に異議を唱える」だけで生きていた私が、ちょっと現実に戻れたというか。

――どんな治療を進めていったんですか?

三上:ステージ3の肺がんは、放射線治療と抗がん剤の併用です。がん自体の症状はありませんし、抗がん剤の副作用もまったくありませんでした。こちらの治療はとてもスムーズだったんです。しかし、それまで入院すらしたことのない私にとって、ステージ1の腎臓がんの手術が悪影響を及ぼしました。長時間の手術や手術後の痛みなどのショックが大きかったようで、迷走神経反射と呼ばれる発作的な症状に悩まされました。突然気持ち悪くなる、めまいや血圧の上下が激しくなるなどの症状です。これが原因で、退院した夜に救急車で病院へ舞い戻るといった事件まで起こしてしまいました。これがいちばん辛かったです。

――治療期間中、乃木坂46はどんな支えになっていましたか?

三上:とにかくラジオを全部聞いていましたね。『ベルク presents 乃木坂46の乃木坂に相談だ!』(TOKYO FM)だったり、『乃木坂46の「の」』(文化放送)だったり、『らじらー!サンデー』(NHKラジオ第1放送)だったり、もう全部です。迷走神経反射でギリギリのときに、ラジオを聞いて落ち着くっていう。もう本当に支えられました。笑顔になれるんですよね。『乃木談』の松尾(美佑)さんが本音をずばずば言うところとか、最高です。

――病院の枕には、『スタ誕』ライブのタオルを巻いてましたね。

三上:そうなんですよ。もう生死をともにした相棒って感じです(笑)。これのおかげで、乃木坂46ファンの看護師さんが「和ちゃん(井上和)、かわいいですよね」って話しかけてくれたりして。乃木坂46のおかげで、コミュニケーションも生まれました。

――まだ治療は続いているんですか?

三上:3月上旬頃には放射線の治療も終わって退院しました。その後は、再発防止のために化学療法を月に1回受けています。レントゲンや血液検査を見る限り、がんはほぼ消えているように見えますね。本格的な検査はそう頻繁にはできないので、来年の3月頃に検査をして、そこでがんが見つからなければ根治になります。

――本当に治療が成功してよかったです。

三上:ただ、実は今ある副作用が出ています。化学療法の副作用を抑える薬としてステロイドを毎日飲んでいるんですが、これを飲むとめちゃくちゃお腹が空くんですよ。ちょうど今、池田瑛紗さんがマクドナルドのCMをやっているので、「サムライマック®」も週一で食べちゃって。がん治療の前より、10kgも太っちゃいました(笑)。がんで太っちゃったのも変な話ですが、健康な証拠なのでいいかなと思っています。太った分は、乃木坂46のライブで運動しないとまずいですね!

※1:https://x.com/mikamiyoh/status/1814920626588819782

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