PLAVE、初日本単独ライブで示した進化と“リアルさ” 未来を語り続ける先にあるもの――無二である理由を観た
バーチャルボーイグループ・PLAVEが、千葉県・幕張メッセイベントホールで『2025 PLAVE Asia Tour [DASH: Quantum Leap]』を開催した。本公演は8月から行われているアジアツアーの日本公演で、11月1日、2日の2日間にわたって行われたもの。本稿では11月2日公演の模様をレポートする。
PLAVEは、YEJUN、NOAH、BAMBY、EUNHO、HAMINによるK-POPバーチャルアイドルグループ。作詞、作曲、振り付けをメンバー自身が手掛けるセルフプロデュースグループでもあり、今年6月にはシングル『かくれんぼ』で日本デビューを果たした。今回のライブは初のアジアツアー、そして初めての日本単独ライブとなる。
開演前にはPLLI(ファンの呼称)によってSEに合わせたコールが巻き起こり、早くも熱気に包まれた会場。照明が落とされ、ムービーがスクリーンに映される。宇宙船から飛び出した5人が地球に向かって急降下し、ステージへ降り立つ。オープニングナンバーは「Watch Me Woo!」。早速、大きなコールと大歓声に包まれた。曲が終わると、それぞれ日本語で挨拶をし、韓国でのアンコール公演前の最後の公演であるこの日のライブについて「思いっきり楽しめるよね?」と観客を盛り上げる。
衣装をチェンジし、それぞれがキュートでコミカルな動きを見せた「Virtual Idol」、カジュアルな衣装で軽やかなダンスで魅せた「RIZZ (Japanese Ver.)」と序盤から会場の熱気を上げていく。深海にたたずむ彼らを映し出したムービーから「Island」へ。黒いスーツに身を包んだ5人。中央には白いグランドピアノが置かれ、HAMINによるピアノ伴奏でしっとりと歌われた。そこから「12:32 (A to T)」に続き、PLAVEの高い歌唱力が示される。「The 6th Summer」はPLLIによる大きなコールも相まって、ライブならではのエモーショナルなグルーヴを生み出した。
ステージを覆うように紗幕が下り、水中に巻き込まれるような映像が映し出される。そのなかで、5人は「From」を披露した。深海の底のようなステージで儚く美しいハイトーンで歌い上げる。そこから美しいビーチに流れ着き「Dear. PLLI」へ――。彼らの仲の良さが感じられるリラックスしたやりとりが楽しい。
ここで生バンドがステージに登場。「Are you ready?」の声とともに始まったのは、PLAVEらしい爽やかなバンドサウンドが際立つ「WAY 4 LUV」。さまざまな背景へと切り替わるスクリーンをバックにしたダンスパフォーマンスは、物語から飛び出してきたようだ。
さらに秀逸だったのは、「Dash」。想像力を刺激されるようなパフォーマンスだった。サイレンも聞こえるイントロが流れるなか、赤いライティングとレーザーライトでスクリーンに映された豪奢な建物が破壊されていく。バンドの音圧と炎の特効もあわさり、瓦礫のなかからPLAVEが現れ、それぞれ髪型をアレンジし、顔や衣装に傷をつくり、シリアスな表情を見せている。一瞬で映画のなかに飛び込んだような感覚だ。コンテンポラリーの要素も含みながら、激しいダンスで楽曲のハードでクールな一面を表現していった。
「Chroma Drift (Japanese Ver.)」も、バーチャルならではの演出が光った。キラキラと光るメイクを施した5人が、ドライブをしながら歌唱。ステージのカラーリングや次々と流れていく背景のタッチは、楽曲の醸し出すシティポップの世界観そのものだ。
続いて、ガラッと空気を変え、BLACKPINKのカバー「Pink Venom」へと続き、ハードなダンスで魅せる。一瞬でビジュアルを変化させ、空間のムードを変えていけるのは、バーチャルならではの強みと言えるだろう。
「No Develop, No PLAVE」と称した企画コーナーでは、日本のPLLIにプレゼントを用意したと語り、King & Prince「シンデレラガール」を美麗なボーカルでカバー。「プリンスになったから!」と、それぞれが甘い言葉とともに王子様ポーズを披露し、歓喜の悲鳴が巻き起こる。さらにブルージーンズの衣装にチェンジし、HANA「Blue Jeans」のダンスを披露したり、メンバーがひとりずつ思い思いのポーズや30秒間客席のPLLIとアイコンタクトを交わすコーナーなども行われ、大盛り上がりの企画コーナーとなった。
いよいよライブも終盤へ。スタンドマイクで披露された「l Just Love Ya」、制服衣装に身を包み、教室のようなキューブのセットでアイドルらしいポップさを見せた「Pump Up The Volume!」と展開していく。この日いちばんの歓声とコールで迎えられたのは、日本デビュー曲「かくれんぼ」。客席からのシンガロングとストーリー性のあるコレオがシンプルに映え、感動的な一曲となった。
人気曲「Wait for you」は、長い回廊や美しいステンドグラスをバックに、煌めく光のなかで歌われた。5人ならではの息の合ったフォーメーションダンスをはじめ、ひとつの生命体となったようなパフォーマンスからは荘厳さすら感じさせ、客席からの歌声とともに静かな感動を呼ぶ。
本編最後の曲は「Pixel world」。冒頭には「シンデレラガール」を一部マッシュアップするなど遊び心満載で、チャーミングな一面を見せ、ステージを楽しんでいる様子だ。それぞれ頭の上にピクセルのハートを浮かべ、キラキラとしたエフェクトを振りまいていく。客席に向かって手を振り、笑顔を見せる。最後、彼らの頭上にはプレゼント箱が浮かび、「また会おう」の5文字が贈られ、歓喜の声が巻き起こった。
アンコールでは、PLLIによるシンガロング企画で会場がひとつになり「Chroma Drift (Japanese Ver.)」を大合唱。メンバーの再登場を待ちわびる。そうして始まったアンコール、1曲目は「Why?」。つなぎ衣装に肉球のグローブというチャーミングな姿で再登場し、コミカルな表情やキュートなポーズを織り交ぜながらパフォーマンスした。
最後、客席との記念撮影に続いて、メンバーから日本語を交えながらのメッセージが贈られる。そのいずれもが感謝にあふれ、「一緒に歩いていきましょう」「いつもそばにいます」「愛してる」と日本のPLLIへの惜しみない愛が言葉となる。
月や星、雲の形をしたイルミネーションを模したゴンドラに乗り、メンバーが手を振り続けた「Merry PLLIstmas」は、アンコールにぴったりのロマンチックな一曲。最後の曲に選ばれたのは、「Our Movie」だ。シンガロングやハンドクラップで客席とステージがひとつとなる。次々と衣装や背景を変え、彼らの紡いできたこれまでを再現するような演出だ。PLAVEのライブの魅力がぎゅっと詰まった、未来を予感させるようなステージで、この日のライブの幕が下りた。
バーチャルアーティストは今や数多くおり、ライブ会場に降り立ち、“こちら側”へきてくれるという点ではPLAVEも共通している。だがPLAVEは、楽曲に合わせてステージや衣装を含む演出を矢継ぎ早に変えていく。そのグラデーションによって観客がPLAVEの世界へ引き込まれ、より濃密に彼らの存在を実感できるような体感があった。ボーカルや生演奏、そしてPLLIが贈るペンライトの光や歓声といった、ライブ会場だからこそ味わうことができる空気も臨場感を感じさせる。
バーチャル表現の高い技術力と、その進化にも驚かされた。ウェブトゥーン風のデザイン、そして彼らの個性にマッチした表情や身体表現の細やかさが鮮明に伝わり、彼らの存在感をより際立たせていた。『Quantum Leap』の冠の通り、昨年よりもさらに表現の幅を広げたPLAVE。MCでも「期待していてください」「楽しみにしていて」と未来を語り続けた彼らが、これからどんな驚きの表現を繰り出してくるのか、さらに楽しみになったライブだった。