浜野はるきに宿るカリスマ性 ますます勢いを増していく未来へ向けて――『SUPER SONIC EXTRA SHOW』レポ
浜野はるきのワンマンライブ『SUPER SONIC EXTRA SHOW』が、11月1日に東京・竹芝ニューピアホールで開催された。今年5月から6月にかけて7都市を巡った自身初となる全国ツアー『LIVEHOUSE TOUR 2025 “SUPER SONIC”』の追加公演として行われたもので、10月5日の大阪・バナナホール公演に続く実質的なツアーファイナルに相当する。自主企画の初開催など精力的に動いてきた今年一年を締めくくる本公演には、多数の熱心なParufam(ファンの呼称)が集結。華やかさとストイックさの同居するステージを存分に堪能した。
開演前にはDJ §arinaがオープニングDJを務め、グルーヴィーなソウルミュージック中心のミックスやテクニカルなスクラッチプレイなどを披露。整然と並べられた座席に着いて静かに感情を高ぶらせながら開演を待つオーディエンスらを爆音で魅了した。舞台上にはDJブースとバンドセットのほかに、「Haman♡Haruki」のロゴがあしらわれた小型オートバイ型のモチーフやネオン管も鎮座。音とビジュアルの両面で期待感をじわじわ上昇させるなか、ふいに客電が落とされ、空気を一変させるバロック調の厳かなシンフォニックサウンドが放出される。それと同時にステージ背面のスクリーンにパーティの幕開けを告げる映像が映し出され、これに呼応するようにまずバンドメンバーが、続いてきらめくブルーのクロップトップとショートパンツにムートンブーツを合わせた浜野が舞台に姿を現し、それぞれ位置についた。
客席のParufamが一斉に立ち上がって手にしたペンライトを発光させると、おもむろに耳をつんざくようなアグレッシブなベースリフが会場に響きわたる。その光景を見渡して満面に笑みを浮かべる浜野から高らかに放たれた「ツアーファイナル東京、盛りあがっていけますか!」という掛け声を契機に、スリリングな最新シングル曲「Prettique Bomb」でライブがスタート。この日のステージはドラムス、ベース、ギター、鍵盤、DJ、マニピュレーターというフルセットのバンド編成で届けられた。HIPHOPやR&Bをベースにしたダンサブルなポップスをメインとしつつも、フリーキーなエクスペリメンタルチューンからフォーキーなピアノバラードまで、幅広いテイストの楽曲をポップかつキッチュに歌いこなしていく浜野。聴衆はそのパフォーマンスに食い入るように見入り、聴き入り、浴びせられ続ける音世界に身を委ねるように――それはなかば熱狂ゆえの放心状態にも近い様子で――楽曲のメッセージに聴き入った。
ステージがテンポよく進行していくなか、「元カレへの悪口を書いた紙を降らせました」と笑いを誘った「Vengeance」での紙吹雪演出や、衣装チェンジ時にインターミッションとして上映されたファンの声を集めた映像、「今まできたアンチコメントをおしゃれに着こなしました」と誇らしげに語り、罵詈雑言の数々があしらわれたハギレ類をばらまきながら披露した新曲「NET BaBY」など、音楽表現以外にもさまざまな趣向を凝らしたステージングで聴衆を釘付けにし続ける彼女。その一方で、「今日さ、この会場に世界一かっこいい女がきてるんだ。私をここまでひとりで育てた母親がきています」「この曲だけはママのためだけに歌います」と前置きしてから、アコースティックバラード「Tokyo」をしっとり歌い上げる一幕も。徹頭徹尾「個人的であることは普遍的であること」というユング哲学のような思想を(おそらく無自覚に)体現する、極めてパーソナルなステージが繰り広げられた。
ライブが終盤に差しかかり、「早いもので、ラスト2曲です。まあアンコールはあるけど(笑)」と身も蓋もなく言い放つ。そこから大阪公演で初披露されたという新曲「?OUT CaST¿」、ラストナンバー「『I』」を立て続けに披露。そして「アンコールで会いましょう!」といたずらっぽく言い残してステージを立ち去ると、すかさずParufamたちは盛大にアンコールを要求し始める。
Tシャツ&ミニスカートスタイルに装いをあらたて再登場した浜野は、会場にいる一人ひとりを指差しながら〈偉い偉い偉い偉い!〉と称賛し尽くす「CuL」、お立ち台に腰掛けて穏やかに歌声を紡ぐ「リナリア」、切実なピアノバラード「最低な君」を次々に投下。そして「これを歌わないと終われない」との宣言に続き、現時点における最大の代表曲といえる「ギジコイ」を繰り出して爽やかにステージを締めくくった。
既報のとおり、この日のステージでは1stフルアルバム『NET BaBY (FuLL Version)』のリリースや、全国10都市を巡るライブツアー『LIVE TOUR 2026 “COVER GIRLS”』の開催なども発表。ますます勢いを増していく未来を示唆して、期待を煽った。