藤井 風、King Gnu、Suchmos……Honda「VEZEL」CMから新たなヒット曲誕生? 離婚伝説「ファーストキス」起用の必然
離婚伝説の新曲「ファーストキス」が10月24日にリリースされた。この曲は、リリース前日から放映がスタートしているHonda「VEZEL e:HEV RS」のテレビCMのために書き下ろされたものだ。コンパクトSUVとしてグローバルな人気を誇っている「VEZEL」に新たに追加されたグレードである「e:HEV RS」は、スポーティーなフォルムに先進的なテクノロジーを詰め込んだ一台。CMでも使われている「超都市型VEZEL」というキャッチコピーの通り、クールな都市の風景がよく似合うスタイリッシュなSUVとなっているのだが、そんな「VEZEL e:HEV RS」が颯爽と東京の街を走り抜ける映像に、「ファーストキス」の爽やかで軽やかなサウンドはとてもよくマッチしている。
そんな都会的で先進的なイメージを伝えるためだろうか。これまでも「VEZEL」のCMはその時その時の最先端を行くアーティストやバンドの楽曲をフックアップし、世のなかに届ける役割を果たしてきた。その最初のきっかけとなったのは、2016年。同年9月から放映されたCM「世界ヴェゼル」編で採用されたのが、Suchmosの「STAY TUNE」だった。楽曲自体は同年1月にEP『LOVE & VICE』のリード曲としてリリースされ、ラジオでのヘビープレイを中心に浸透、すでにバンドの代表曲となっていたが、リリースから半年以上を経て、「VEZEL」のCMを通してテレビで流れることで再びチャートを急上昇。翌年1月にはBillboard Japan「Hot 100」でトップ10入りを果たすロングヒットとなった。鮮烈なサウンドが鳴り響くなかハイウェイを赤い「VEZEL」が走る、あのクールなイメージを記憶している人も多いだろう。ちなみにSuchmosはその後2018年にも続けて「VEZEL」とタッグを組み、この時は「808」が起用されている。「808」のMVにHonda車が登場することからもわかるように、このコラボレーションは両者にとってとてもポジティブなものだったのだろう。
「VEZEL」のCMが契機のひとつとなって世のなかに知れ渡っていったアーティストは、Suchmosだけではない。2019年の11月から放映されたCM「PLAY VEZEL昼」篇で流れたのは、King Gnuの「小さな惑星」だった。彼らは同年2月にリリースしたドラマ主題歌「白日」でブレイクを果たし、続く「飛行艇」もヒット、そして翌年1月にリリースしたアルバム『CEREMONY』で一躍ロックシーンのトップランナーとなったわけだが、まさにそのタイミングで、「VEZEL」は彼らに白羽の矢を立てていたのだ。表の時系列だけを見れば「ブレイクしたアーティストをすぐさま起用した」ように見えるかもしれないが、こうしたCMの企画はかなり早い段階からスタートしているはずで、制作サイドのアンテナの鋭敏さを物語る事例だと言えるだろう。
また、そういう意味では藤井 風を起用したタイミングも絶妙だった。2021年、フルモデルチェンジした「VEZEL」の新たなCMが放映開始されたのは4月。そこに向けて書き下ろされた「きらり」は、その後5月に配信リリースされると、怒涛の勢いで再生され、藤井 風というアーティストを時代の寵児へと押し上げた。同年9月、藤井は日産スタジアムでの無観客配信ライブで18万人もの視聴者を集め、年末には『第72回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)に初出場、そこからの活躍については誰もが知るとおりだ。豪華なキャスト陣の弾けるような笑顔と、藤井 風の軽やかな歌声、そして街も自然も駆け抜ける生まれ変わった「VEZEL」。そのコンビネーションは、この新しい車の魅力を十分に伝えるもので、実際にこの時期、「VEZEL」は大幅に販売台数を伸ばしている。SuchmosやKing Gnu同様、ここでも双方にとって大きなメリットをもたらすシナジーが生まれていたのだ。