離婚伝説、初ワンマンライブでの余裕と貫禄　メロウに奏でた至福のひととき

　今年3月20日にセルフタイトルの1stアルバムをリリースした離婚伝説が、初のワンマンライブ『1st ONEMAN LIVE 愛が一層メロウ-Love is more Mellow-』を3月23日、東京Zepp Shinjuku (TOKYO)にて行った。

　すでに熱心な音楽リスナーの間では大きな話題となっている離婚伝説は、松田歩（Vo）と別府純（Gt）により2022年1月に結成された。そのユニークな名はマーヴィン・ゲイのアルバム『Here My Dear』（1978年）に由来することは、すでに多くの人が知っているだろう。今年1月には「RADAR: Early Noise 2024」（Spotifyが、その年に躍進を期待する次世代アーティスト10組を選出するプレイリスト）にも選ばれ、その知名度は上がる一方。この日も会場のある新宿・歌舞伎町タワー周辺では、彼らの晴れ舞台を一目見ようと駆けつけた人々が、開演前から長蛇の列を作っていた。

　定刻となりサポートメンバーのjumbo-t（Dr）、彌生（Ba）、柿沼大地（Key）、石川裕大（Gt/Mnp）という面々が姿を現すと、超満員となったフロアから大きな歓声が湧き起こる。遅れて松田と別府も登場し、まずは2022年6月にリリースされ、彼らの名を一躍有名にした1stシングル曲「愛が一層メロウ」からこの日のライブはスタートした。

　山吹色のジャケットを羽織り、肩まで伸びた長髪をなびかせながら透き通るようなファルセットを響かせる松田。その横では別府が満面の笑顔をオーディエンスに向けながら、軽やかにギターをかき鳴らしている。ルックスも佇まいも全く違う2人だが、まるで最初からこうなることが決まっていたかのように、並んだ姿がしっくりくる。抑制の効いたバンドアンサンブルに乗せて、延々と繰り返されるサビの〈愛が一層メロウ〉をオーディエンスとともにシンガロングすると、早くもライブは最初のピークを迎えた。

　「みんな最高だよ、ありがとう！」と松田が叫び、続いて演奏されたのは「あらわれないで」。艶やかなファルセットボイスで歌われるサビのメロディが、狂おしいほど切ないミドルチューンだ。離婚伝説の楽曲は、どれも一度聴けばすぐに口ずさみたくなるようなキャッチーなメロディを持っている。それでいながら後ろで鳴っているコードが目まぐるしく変化したり、あるいは前半のセクションと後半のセクションでは全く違うコード進行を鳴らしたりすることによって、同じメロディでも全く違う響きを作り上げるところにその“中毒性”の秘密が隠されているように思う。さらにこの曲は途中で演奏がブレイクし、水を打ったような長い沈黙のあと再び演奏が戻るという演出により、フロアに熱狂とカタルシスをもたらしていた。

　間髪入れずに「スパンコールの女」へ。回るミラーボールの下、松田がセクシーなファルセットでハミングをすると、フロアはダンスホールに。〈キャンディ・ステップ／絡まったように／キャンディ・ステップ／溶け合う二人〉という官能的なサビの歌詞を浴びながら、そのファンキーな演奏に思わず身体が動いてしまう。The Isley Brothersの「Summer Breeze」が持つ寂寥感を彷彿とさせるスローバラード「追憶のフロマージュ」では、音数を削ぎ落としたミニマルな演奏がエンディングに向けて少しずつ熱を帯びていく。チョーキングやビブラート、ロングトーンなどを巧みに織り交ぜながら、別府が咽び泣くようなギターソロを披露すると、フロアからは大きな歓声が上がった。

　「ついに来ましたね、この日が。なんかあっという間でしたけど、ここまで連れてきてくれてみんなありがとう」と松田が改めて感謝の言葉を述べる。「僕たち二人、この新宿という街で出会って離婚伝説を結成したわけですけど、そんな僕たちのスタート地点ともいえる1stワンマンライブを、ここZepp Shinjukuでできて本当に嬉しく思います」と喜びを丁寧に伝え、会場からは温かな拍手が湧き起こった。