KAT-TUNが歩んだ24年間、hyphenとの絆――長い航海を終え、歴史を刻んだ『Break the KAT-TUN』一万字レポ
KAT-TUNが一夜限りの復活を果たしたライブ『Break the KAT-TUN』が11月8日に、千葉・ZOZOマリンスタジアムで開催された。グループ初となるスタジアムライブでは、会場に集まった約30,000人のファン、そして配信で参加するファンに向けて、KAT-TUNの全シングルを含む51曲を披露。ラストは晩秋の夜空に3,000発の花火を打ち上げ、シャンパンファイトで有終の美を飾った。hyphenと過ごした約3時間に及ぶプレミアムなライブの記録をここに綴る。
『Break the KAT-TUN』すべてのライブ写真を見る(ソロカットあり)
“6人”のメンバーカラーがステージを照らした「Real Face」
17時の開演5分前ほど前から、開演を待ちきれないファンによる「KAT-TUNコール」が始まる。その声は3分前頃から次第に大きくなり、彼らの名前とクラップが響き続ける。そして、メインステージの上方から3人の姿が見えると、大歓声が上がった。
メインステージには巨大な3面のLEDスクリーンが設置され、そこに映るは風に吹かれて揺れるドクロの帆や“KAT-TUN”と刻まれた酒樽も。暗転すると、スクリーンには大海原を力強く進む船が現れる。これまでのライブ映像をバックに、荘厳な音楽が響き渡る。水柱、炎、流れる音楽が一層激しさを増し、『Break the KAT-TUN』と大きく掲げられた。〈ナ・ナ・ナ〉と「ハルカナ約束」の一節をアカペラで歌う3人の声。上田竜也が叫ぶ。「野郎ども、最後の出航だー!」――「GOLD」とともにステージの端から端まで特効の音と火花、煙が彼らを包んだ。
KAT-TUNのライブではお馴染みの尖った煽り、そして控えめな風に乗って火薬の香りが鼻をかすめる。メンバーの歌声とダンス、スクリーンの映像やグラフィック、技巧を凝らした光と特効、そして熱風と火薬の香り……視覚、聴覚、嗅覚、熱の感覚など、さまざまな角度から感情を揺さぶられる。これぞKAT-TUNのライブだ。
「騒がねぇと命はねぇからなー!」という中丸雄一の煽りから、上田の歌唱、そして亀梨和也へと繋ぐ。亀梨がサングラスを少しずらして「Are you ready?」と指先をくるくると回して翻弄。それを合図に、ステージの特効に加えて上方では花火が打ち上がった。ステージをゴールド色に染めながらKAT-TUNのライブは華々しく幕を開けた。
一瞬の静寂で観客を惹きつけると、亀梨から「WILDS OF MY HEART」がスタート。〈聞こえない〉の歌詞に合わせて、亀梨があえてマイクを外し、“聞こえないよ”とジェスチャーするとファンのボルテージも最高潮に。ムービングステージで会場の中央へと進みながら、上田が「声がまだまだ足りねぇぞ!」と煽ると、すぐさま応えるオーディエンス。
雷光のような激しい光の演出と、尋常ではない量のスモークをバックに「青天の霹靂」へ。スモークが風になびいて右から左へと流れていく中、ブルーの光に照らされながら中丸が歌い、マントを揺らす上田、そして稲光を背に、唇から首すじをなぞる亀梨。3人のハモリが怪しげに響き、歌詞に合わせた情熱的な仕草と美しいターンで魅了していく。
再びスモークが噴出すると、ムービングステージがせりあがり、より後方のファンへと近づいていく。亀梨が上田の肩を抱き、中丸も寄せてギュッとする3人。わちゃわちゃとする3人に大きな歓声が上がった。
それぞれがシャウトするように歌い、「SHE SAID...」で亀梨がロングトーンを響かせる。上田は「Hey! 声出せる準備できてんのかよ!」「もっと、もっと出せ!」「1曲、1曲、心に刻みながら声帯ぶっ壊せー!」と煽る。続く中丸も「hyphen!」と呼びかけ、「今日は特別な日です。KAT-TUN史上最高の日を作ります! よろしくー!」と力強く投げかける。少し間を置いて、亀梨がサングラスを外して笑顔を見せると、「Hey! hyphen!」と全身を使って叫び、「ここで思いっきり感じて、心の中にいっぱい宝物詰め込んで帰れ!」「今夜、俺らと最高の歴史を作るぞー!」と気合いを入れると、それに呼応するhyphen。ペンライトが激しく揺れ、サビからはより一層熱気を帯びていた。
そして、イントロから大歓声に包まれた「Le ciel ~君の幸せ祈る言葉~」では、上田が高らかに語りかけてスタート。その後も「DRIVE ME DRIVE ON」「FIGHT ALL NIGHT」「Red Sun」と懐かしのナンバーを披露。彼らはトロッコに乗り換えて、会場をくまなく回って顔を見せた。オーディエンスも、イントロから食い気味に反応するなど、赤く燃える太陽をバックに熱い時間が続いた。
スクリーンに「2001」と年号が表示され、「2006.3.22」までカウントするとステージにはオレンジ、ブルー、レッド、ピンク、イエロー、パープルと、初期メンバーを含めた6人のメンバーカラーがステージを照らす。悲鳴のようなファンの声援を浴びながら、KAT-TUNのデビューシングル「Real Face」へ。
亀梨の伸びやかな歌い出し、中丸のカウント、上田がラップを披露。ここで、元メンバーである赤西仁の歌声が響く――。当時のオリジナル音源を使用し、噴出するスモークをメンバーに見立ててパフォーマンス。亀梨は赤いスモークの周りを歩き、横並びになって横目で“相方”を見やると、会場からは大歓声が沸き起こった。
続いて、田口淳之介、田中聖の歌声も流れ、上田も噴出するスモークへ触れるような仕草を見せる。これまでも折に触れては元メンバーの名前を呼んできた彼らは、一緒に歩んだ仲間の証を堂々と刻んでみせる。オーディエンスも〈リアルを〉からは、ペンライトをすっと上に掲げるなど、回を重ねてきたからこその迷いのないペンラ芸を披露。この一体感もKAT-TUNのライブの醍醐味だ。デビュー曲であり、KAT-TUNの代表曲として親しまれ、最も歌ってきたといっても過言ではない「Real Face」が、粋な演出によってまた新鮮みを帯びていた。
ここからは「HISTORY OF KAT-TUN」として、過去の映像を盛り込んだ映像が流れると、そこには元気にはしゃぐメンバーの姿が。バックに流れる「春夏秋冬」のインストゥルメンタルが、キラキラと輝く彼らの青春を彩っていた。
「SIGNAL」のイントロから、ブルー、グリーンと透明感ある照明と、サイケデリックなグラフィックをバックに当時のMVを彷彿とさせる世界観で魅了。「RESCUE」では会場を真っ赤に染め、亀梨の「Dance!」で3人がダンスを披露。高々と燃え上がる炎の熱風が客席を覆い、地鳴りのような重低音が会場を揺らした。「Love yourself ~君が嫌いな君が好き~」ではブルー、紫とミステリアスな雰囲気を醸し、亀梨が階段をゆっくり降りながら歌う。続いて、亀梨のうつむいた姿勢からはじまる「ONE DROP」では、〈この瞳に映るよ〉で目を指す亀梨。〈BYE‐BYE〉に合わせてペンラも左右に揺れる。「喜びの歌」ではファンの近くへと歩み寄り、「僕らの街で」では都会のビル群の煌めくネオンをバックに、しっとりとした大人のステージを届けた。最後は亀梨がきれいにターンを決めて締めくくった。
「HISTORY OF KAT-TUN」を挟み、カジュアルな衣装に着替えたメンバーが「Going!」を披露。空気をガラリと一変させた「In Fact」からはレーザーと重低音が会場に刺激を与え、ピンクの照明が彼らを怪しげに照らし、よりディープな世界へ。「不滅のスクラム」「RUN FOR YOU」「FACE to Face」「ULTIMATE WHEELS」と、オーディエンスの感情を激しく揺さぶるようにパフォーマンスを届けていった。さらに、「UNLOCK」では亀梨がムービングステージに座り、ギターのリフをバックにささやくように歌い始める。ジャケットをはだけさせながら、中丸もガナるようにエッジを効かせ、機材も限界ギリギリというほどに地面からは突き上げるような重低音が響いていた。
そんな激しさから一変、「YOU」では3色のメンバーカラーが交差する照明を浴びながら、柔らかい歌声を響かせる3人。トロッコに乗ってくまなく会場を回った。亀梨がカメラ目線でピースしたり、上田と中丸も近場のファンと目を合わせたりとオーディエンスとやり取りを交わしていく。亀梨が指を使って〈ふたつがひとつに〉と表し、笑顔を見せていた。
「White X'mas」では、リフターに乗った3人が熱唱。舞い散る雪のような演出で、一足早くクリスマスの幻想的な世界観を届けた。「EXPOSE」「CHANGE UR WORLD」で激しく再び重低音が響かせたかと思えば、「WHITE」では爽やかな雰囲気に。ここでも上田が煽り、Bメロではファンもペンラを挙げ、「一緒に歌おうぜー」の誘いに応える。3人の曇りのないユニゾンが清々しく、晴れやかな気持ちにさせてくれた。
ここからはMCへ。中丸が「今宵も寒いなと思ってましたけど、そんなことないですね」と切り出し、「僕たちがKAT-TUNですよー!」と声を張ると、上田も「どうもKAT-TUNです」と続け、大きな歓声が響いた。亀梨は「座ってもらって、身体冷えないようにしてくださいね」と気遣い、「話を聞いていて寒いなって思ったら……」両腕を掴んで小刻みに身体を揺らして温めてという仕草で「ちゃんと自家発電してください」と笑いを誘っていた。
「本番では汗をかく」と亀梨。上田も「調子に乗って次の日風邪ひくパターンだと思ってる」と続けると、中丸が「それ、あれですか? ランウェイ歩く感じ……夏のね」とコメント。上田は「ごめんなさい、何言ってるかわからない(笑)」と返答。これまでと何ら変わらないトークが始まる。亀梨が「中丸くんのそのサングラス、合ってるんですか?」とツッコミをいれると、中丸は「これはね、合ってないです。だってサングラスってもともと太陽のあれだから」とコメント。亀梨がタオルなどの入ったカゴを取りにいく間、中丸がトークを続ける。
「今回のライブなんですけど、概要を簡単に説明しますと、実は僕ら解散してます(笑)」という説明に、「えぇ!?」と上田。亀梨も「まじっすか!? まじっすか!?」と続ける。そのまま話し出す中丸に、上田は「まじっすか、言わないんだ」とぼそっとツッコミを入れるなど、彼ららしいやり取りは健在。さらに中丸が「解散してるんですけど、その声が届いたんです!」と声を張り、「最後に僕らも懇願しました」と3人が事務所に掛け合って今回のライブが実現したという経緯を説明。ここで亀梨が配信で視聴しているファンにも「繋がってくれてる!」を声をかけるなど、手を振りながら全国のhyphenをひとつにした。
結成して24年と上田と中丸が振り返ると、亀梨は「今日、俺と中丸くんに関しては会社に入った日なんですよ」「98年だもん」と11月8日がオーディションを受けた日であることを回顧。続けて「27年前の今日、オーディションを受けて、27年後の今日も最後のステージに立つわけ」と感慨深げに語った。
中丸が「“特別”っていうものをもう1個持っていると」と切り出し、「これまでいろんな場所でライブやイベントをしてきたが、1ピースだけ欠けているものがある」と話し、野外ライブをやっていなかったことに触れた。亀梨が「2011年の5周年の時に、本当は初の野外やる予定だったんですけどね」と懐かしそうに語り、海沿い、海賊船という要素を挙げ、念願の野外ライブに思いを馳せていた。
改めて中丸が「解散したーグループで何を話せばいい?」と直球なコメントに、会場からは大きな笑い声が。さらにユニークなラリーは続き、亀梨が「上田、中丸のことよろしく頼むぞ」と言えば、上田は「無理だよ」と即答。中丸が「面倒みろよ」と上田に向けて話すも、「なんでじいちゃんの介護しなきゃいけないんだ」と、笑いに溢れるMCが続いた。
3人は思い出話に夢中。亀梨がビデオカメラを購入した時に撮影した映像の話題から、「KAT-TUNってやっぱ青春だったよね!」と言えば、上田も「本当ですよ」と続き、中丸も「そのものでしたね」と懐かしんでいた。また上田が「解散してからの初めてのコンサートになっている」との言葉には歓声が上がる。亀梨も「なんならこの会社に属していない人間(笑)」と自虐的に語り、「ありがとうございます!」と各方面に感謝を伝えた。「記録作るのも頑張ってさ、若い頃やってきたじゃない。これもある種の歴史よ、記録よ」と、前向きな言葉を口にした。
後半に向けて、「野外どうよ?」という亀梨の呼びかけに、さまざまな声が飛び交う会場。彼らにとっても初の野外ライブの音の響きは新鮮だった様子。亀梨がカゴを片付けにいくと、中丸が「hyphenの底力見せてくださいー」と叫び、オーディエンスも呼応。そしてこちらもお馴染み「カトゥネット高丸」の映像が流れ、楽しい時間は続いた。
布の揺れが美しい、白い衣装に着替えて後半戦へ突入。「CRYSTAL MOMENT」からスタートし、「Dead or Alive」、「TRAGEDY」「EUPHORIA」「BIRTH」と息つく間も与えずに、壮大な世界観で魅了した。
そして、初コンサートなどデビュー前の伝説的なライブに始まり、全国各地をまわったライブ映像とともに、公演数や動員数などの記録が流れると、会場からは鼻をすする音が聞こえてきた。
赤を基調にした絢爛豪華な衣装で登場した3人。上田から手を差し出し、中丸、亀梨の順でゆっくりと手を重ねる。亀梨がふたりの手を握るようにギュッとしたのち、3人は拳を作って掲げる。バックには3人時代の象徴、堂々たるUNIONのロゴ。「Ask Yourself」、「We Just Go Hard feat. AK-69」とメッセージ性の高い楽曲を、刺激的な歌唱でオーディエンスを揺さぶる。亀梨が妖艶な仕草でサングラスを外してキスの音を響かせ「LIPS」へ。
ここで3人はCO2のバズーカを手に、客席に噴射するなど会場を走り回り、「Keep the faith」、「PERFECT」と続いた。再び照明を落とし、怪しげに光るブルーの光の中で「NEVER AGAIN」を届けていく。そして亀梨が肘を打ってクラップ、勇ましいイントロの「DON'T U EVER STOP」へ。後半でも衰え知らずな彼らのダンス。バチバチの特効を背に熱唱する3人。中丸のボイパ、上田のラップ、亀梨もリズムに合わせて激しく体を揺らす。音に合わせて打ちあがる炎、照明……KAT-TUNのライブ演出が、スタジアムで映える。「Roar」が彼らの姿とリンクするように、一層情熱的に響いた。
そして、3色の彼らのこれまでの写真が大きく掲げられ、本編ラストを飾ったのは「PRECIOUS ONE」。イントロから悲鳴のような歓声が上がる。先ほどまでの激しさから一変、柔らかくも強い光に照らされながら、しっとりと歌詞を噛み締めるように楽曲を届けていく。スクリーンには会場のファンの姿が映し出され、180度hyphenに囲まれた演出で〈君のそばにいる〉〈1人じゃない〉とファンに語り掛けるように丁寧に歌い上げた。
エンドロールでは、「THANKS TO JIN AKANISHI KOKI TANKA JUNNOSUKE TAGUCHI」と仲間へのメッセージ。そして3人の後ろ姿が映し出され、ラストはKAT-TUNと大きく掲げたのち「-」にフォーカスした。