ROSÉ×PUMAのコラボから日本人ダンサーKYOKAの活躍まで――韓国トレンドレポート2025年9月号

 K-POPや韓国ドラマにとどまらず、2025年の韓国カルチャーはアート、ファッション、フード、ストリートまで多彩な分野を横断し、グローバルでの存在感をさらに強めている。この連載では音楽・ファッション・食が交差する“いま”の韓国を毎月スナップしていく。

 8月の話題を追った9月号では、BLACKPINKのROSÉと『PUMA』による初のコラボコレクションを皮切りに、ソウルでラストマッチを飾ったサッカー選手のソン・フンミンのアメリカ・メジャーリーグサッカー「ロサンゼルス FC」移籍、『Maison Margiela』がソウルで初公開した新ライン「Line 2」、日本人ダンサー・KYOKAが仕掛ける『UNIQLO Korea』や『Matin Kim』とのファッションコラボ、そして『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』(Netflix)と「NONGSHIM」が手を組んだ劇中アイテムの現実化まで――さまざまなエンタメの境界を軽やかに越えながら、韓国カルチャー最前線をお届けする。

ROSÉと『PUMA』、初コラボレーション公開

 BLACKPINKのROSÉがグローバルアンバサダーを務める『PUMA』との初コラボレーションコレクション「PUMA x ROSÉ」を発表した。ブルーノ・マーズとのコラボ曲「APT.」が大ヒットし、K‑POPアーティスト初の『MTVビデオ・ミュージック・アワード』(『MTV VMAs』)の「年間最優秀楽曲賞」を受賞するなど音楽面でも歴史的快挙を重ねている彼女は、『Saint Laurent』や『Tiffany & Co.』のグローバルアンバサダーを務めるなど、ファッション界でも存在感を示してきた。そんなROSÉが初めて手掛けたコラボレーションコレクションが「PUMA x ROSÉ」だ。

 ROSÉがデザインから参加した今回の「PUMA x ROSÉ」コレクションは、本人の美学と感性を色濃く反映したパーソナルな内容となっている。モノクロームを基調としたカラーリングの各アイテムは、“静かな反逆精神”が感じられるROSÉのポエティックな世界観を込めたデザインが特徴。ROSÉ自身、「このコレクションは、ステージ上でも日常でも、“私自身”を強く反映している特別なものです」(※1)と語るように、飾らない自分らしさを大切にするメッセージが随所に表現されている。

 レーシングシューズをROSÉ流にアレンジした「Speedcat Ballet」はバレエシューズ風のリボン紐が目を引き、「Speedcat OG Premium」はアッパー全体を包み込む大胆なシューレース使いで存在感を放つ。アパレル、アクセサリーのいずれもROSÉの個性と『PUMA』のスポーツDNAが融合した仕上がりだ。

ソン・フンミン、「ロサンゼルス FC」へ電撃移籍

 韓国が誇る世界的なサッカースター、ソン・フンミン(孫興慜)。彼が「トッテナム・ホットスパー」での最後の試合を母国・韓国ソウルで飾り、米メジャーリーグサッカー(MLS)の「ロサンゼルス FC」へ移籍した。ソン・フンミンはプレミアリーグでアジア人初の得点王(2021-2022シーズン、23得点)や2020年に『ザ・ベスト・FIFAフットボールアウォーズ2020』プスカシュ賞などに輝いた圧倒的な実力で“アジア史上最高のフットボーラー”と称する声も多く、韓国はもちろん、世界的に高い評価と人気を得ている。

 今年、彼は10年在籍したチームで待望の初タイトルとなる『UEFAヨーロッパリーグ』優勝を果たした。クラブにとって2007-2008シーズンの「カラバオ・カップ」優勝以来の主要タイトル獲得であり、ソン自身にとっても悲願のトロフィー獲得という快挙となった。その後、8月3日にソウルのワールドカップ競技場で開催された「トッテナム・ホットスパー」対「ニューカッスル」のプレシーズンマッチが彼の壮行試合となり、両チームから花道(ガード・オブ・オナー)で見送られる感動的なフィナーレを迎えた。地元のファンに別れを告げ、涙ながらにフィールドを後にする姿は大きな話題となった。

 直後に「ロサンゼルス FC」への移籍が正式発表され、メジャー史上最高額となる2,600万ドル超の移籍金で契約が成立したとも報道されている。到着早々にロサンゼルス市から名誉市民の称号が贈られるなど、地域ぐるみでソンを受け入れる熱狂ぶり。「ロサンゼルス FC」加入後、ソンのユニフォームは爆発的に売れ、全スポーツ選手中で世界一の売上を記録しているとの報道もある。メジャー全体も彼の参戦を大歓迎して、「メッシ以来の最大の話題」としてリーグの注目度向上に繋がった。韓国国内ではイングランドプレミアリーグの舞台から去る寂しさを語る声もありながら、変わらない応援が続いている。その熱狂に応えるように、彼はすでに11試合で9ゴール・3アシストを記録(11月1日時点)し、9月18日(現地時間)には移籍後初のハットトリックを達成するなど大活躍している。

Maison Margiela ライン2 初公開を予告

 『Maison Margiela』が、新しいナンバリングライン「Line 2」の始動を発表した。同ブランドのナンバリングシステムは、0や1、4、10などの数字が割り振られ、それぞれがメゾンのラインを示している。今回、これまで未使用だった“2”の番号が割り当てられたのだ。新ラインは、ブランドにとって数十年ぶりの新ライン誕生となる。新ラインは、“無形のプロダクト”とも称されるアートやカルチャーのコラボレーション企画に特化した試み。“2”という数字が象徴するように、二人の異なる分野のクリエイター同士がタッグを組み、新たな価値を生み出す場として位置付けられている。

 「Line 2」の第1弾プロジェクトは、韓国・ソウルで9月開催された世界的なアートフェア『Frieze Seoul 2025』に合わせて初公開された。ソウル・漢南洞のフラッグシップストアにて展示されていたインスタレーション作品「Elsewhere, Rhema, Open Torso」は、ビジュアルアーティストのチョン・ヒミンとサウンドアーティストのチョユルによるコラボレーション作品。この没入型インスタレーションでは“記憶と変容”をテーマに、ファッション、アート、空間演出がシームレスに融合した独自の世界観を体験できるものになっていた。

 「Line 2」が、韓国で初披露されたというのもポイントだろう。今回「Line 2」ローンチの場に選ばれたことは、同ブランドが韓国のクリエイティブシーンを重視している表れとも取ることができるだろう。ブランドの象徴である“カレンダータグ”に新たに刻まれた数字=“2”が、ソウルをスタートポイントにして、今後どのような革新的プロジェクトを生み出していくのか、注目が集まっている。

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