Oasisは最高峰のロックバンドとして帰ってきた――名曲の凄みを惜しみなく届けた東京ドーム公演

Oasis、怒涛の名曲ラッシュが生んだ名シーンの数々

 ノエルのボーカルによる「Talk Tonight」「Half the World Away」「Little by Little」を挟んだライブ後半の始まりは、3rdアルバム『Be Here Now』(1997年)収録曲「D’You Know What I Mean?」だったのだが、ハーフタイムを取ったせいかさらに声が出ていて、ロックボーカリストとしての圧倒的な存在感を誇示していた。ツアーが始まった頃の映像を観ると必死の形相で歌うシーンあり、“Oasisの名曲に食らいつく”という印象もあったのだが、約4カ月に渡ってUK、アイルランド、北米、韓国などを回っていくなかでフィジカルも技術も確実に上昇。全盛期と比べても見劣りしない最高のコンディションを見せつけた。ライブ序盤から「アリガトッ!」と感謝をストレートに伝え、投げキッスを振り撒き、「Stand by Me」では「Let’s sing, Tokyo!」と呼びかけていたが、ここまで積極的にコミュニケーションを取るリアムは初めて観たような気がする。

 本編ラストの「Whatever」「Live Forever」「Rock 'N' Roll Star」では、曲の良さ、演奏のすごさ、リアムのパフォーマンスを含め、Oasis史上最高峰のステージングが出現。解散前、筆者はOasisのライブに6度参加したが、今回の『Oasis Live '25』は間違いなくこれまでのキャリアハイを更新するツアーだと言っていい。特に2009年の『フジロック』(『FUJI ROCK FESTIVAL』)はバンドのテンションが明らかに低く、その直後に解散が発表されたときも「ですよね」以外の感想がなかったのだが、その16年後にこんなにも素晴らしいOasisを体験できるとは(「今回、初めてOasisのライブを観た」という皆さん、安心してください。「昔のほうがよかった」などということはまったくなく、あなたたちは史上最高のOasisを目撃したのです)。

 その最大の要因は「とにかくOasisの名曲をダイレクトに伝えるんだ」という強い意思だったのではないか。ファッキングレイトな楽曲を最高の状態で伝えれば、最高のギグになるに決まってるだろうーーというのはもちろん筆者の妄想だが、それくらい“Oasisの曲のすごさ”がダイレクトに伝わるライブだったことは名言しておきたいと思う。そして、ギャラガー兄弟の互いを称え合うハグの尊さよ!

 さて、Oasisのライブといえば観客の大合唱である。もちろん本国UKに比べれば音量は小さめだったと思うが、やはり「Don’t Look Back in Anger」では渾身のシンガロングが発生したし、十分に一体感を楽しむことができた。UK公演を観た人たちからは「観客の合唱が大きすぎて演奏が聴こえなかった」みたいな話も聴いていたが、そんなことはまったくなく、リアムの歌、バンドの演奏も全身で味わい尽くすことができた。ライブの環境としては世界一では? とさえ思ったし、日本のオーディエンスは誇っていいと思う。

 ノエルが日本語で「一緒に歌おう」と呼びかけたり、リアムがポズナン(UKのサッカーファンの定番、ピッチに背を受けて客が肩を組んで飛び跳ねるアレ)を促したり、ファンのシンガロングを兄弟が満足そうに聴き入ったり、演奏ミスに苦笑いしてノエルが「Sorry」と言ったり、見どころだらけの東京公演を終えたOasisはこの後、オーストラリア、南米へと向かい、11月23日のブラジル・サンパウロ公演で『Oasis Live '25』はエンディングを迎える。9月末のウェンブリー・スタジアム公演でリアムが「来年会おう」と発言したことも報道されているが、ぜひともまたツアーを実現させてほしい。ボーンヘッドの雄姿も観たいし、何より今回の東京公演のチケットを確保できなかったファンの方々にも今のOasisを体験してほしい。新作も出して、ツアーも当たり前にやって、「え、Oasisまた来るの?」となるくらいまでやってほしい。世界中のロックファンがそれを願っている。

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