和田アキ子、人生のすべてを刻む魂と愛の歌 57年目の新曲「愛ヶ十」――Tani Yuukiとのコラボパフォーマンス収録現場に密着!

 10月22日リリースの『和田アキ子 オールタイムベスト』に、Tani Yuukiが提供した新曲「愛ヶ十」が収録される。和田のためにTaniが書き下ろしたこの曲が表現しているのは、出会ったたくさんの人々への感謝だ。デビューから57年目に入った和田アキ子の歌手活動の軌跡だけでなく、過ごしてきた人生のすべてが歌に刻まれているのを感じる。

 その「愛ヶ十」と「あの鐘を鳴らすのはあなた」を和田とTaniがともに歌うコラボレーションパフォーマンス映像の収録が行われた10月某日。その模様にリアルサウンドは密着。ここにそのレポートと収録の合間に行った対談の模様をお届けする。

 Tani Yuukiがスタッフたちと談笑していると、和田アキ子が収録スタジオに現れた。「よろしくお願いします!」と挨拶を交わして、椅子に座って並んだふたり。床には赤い絨毯が敷かれているが、それ以外の大道具、小道具類は見当たらない。シンプルな空間での映像収録。まさに声を中心に置いた映像を予感させる。

 「重いですね」と手渡されたマイクの感触を試したあと、サウンドチェックを始めた和田。歌声とオケの音量を何度も確認しながら、少しずつ理想のバランスに近づけていく。Taniもマイクを通して声を響かせ、コーラスの加減を探っていた。そして準備が終わり、「愛ヶ十」の映像収録の本番が近づいてきたのだが、急に言葉数が少なくなった和田。緊張の空気が伝わってくる。「何度でもやりましょう!」とマネージャーに励まされているのが、なんだかかわいらしい。歌う曲に対して全力で向き合う姿勢は、キャリアをどれだけ重ねても変わらないのだろう。

 機材のセッティングが完了して、1回目の収録がスタート。1コーラス目をTaniが歌い、2コーラス目からは和田のパート。出会ってきた人々から貰った言葉、気持ち、支えなどのすべてを〈愛〉と呼ぶこの曲は、彼女の歌声で表現されると一際の深みを帯びた。横で耳を傾け、時折コーラスを加えるTaniは、自身が手掛けた曲が輝くのをまざまざと感じたに違いない。穏やかなトーンが続く展開を経て、一気に躍動感を帯びたDメロ。ビートをダイナミックに乗りこなしながら響かせる歌声のパンチが利いている。リズム&ブルース、ソウルミュージックが土台にある和田の歌唱スタイルが発揮されていた。

 イヤモニを通して聴こえるクリックと歌の入りのタイミングの兼ね合いを確認したのち、2回目の収録へ。「デビューする前から数えると、59年くらい歌ってるけど緊張する。普段はもっと上手いのよ」と和田が言い、「上手いじゃないですか!」と返すTani。一緒に歌ったことにより、どんどん打ち解けている様子が見て取れる。歌い始めたTaniの声に耳を傾けながら和田が潤ませた瞳が、ライトを浴びながら光った。歌い始めた彼女の声に一際の輝きが生まれたのを感じる。収録が終わった直後、「めちゃくちゃよかったです!」とTaniが感嘆の声をあげていた。しかし、和田は「まだまだ探り探り歌っているんです。歌い出しが低いので難しいんですよ」と言う。

 そして、ついに最後テイクだ。歌いながらふたりが時折交わす視線が温かい。響き合う歌声が、スタッフたちの心を優しく包み込んでいる。和やかな雰囲気が漂うなか、「愛ヶ十」の映像収録は終了した。そこにカメラマンが歩を進め、記念のツーショット撮影へ。和田に肩を組まれたTaniは「そんな!」と謙遜している。しかし、「自慢します!」と浮かべた笑みが明るかった。

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