FRUITS ZIPPERは“いま最もフェスに求められるアイドル”に アウェイで輝く、実力派グループとしての姿
この夏、日本全国の音楽フェスティバルで最も鮮烈な存在感を放ったアーティストのひとつはFRUITS ZIPPERだった。『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2025』、『SUMMER SONIC 2025』といった首都圏開催だけでなく、『JOIN ALIVE 2025』や『MONSTER baSH 2025』、『イナズマロック フェス 2025』といった地方開催のものまで全国各地のフェスに出演。アイドルフェスを除いたクロスジャンルの大型フェス出演数において、彼女たちはほかのアイドルを大きく上回り、“いま最もフェスに求められるアイドル”のポジションを確立している。この夏におけるライブシーンの象徴的な出来事だったと言えるだろう。
なぜ彼女たちは、全国のフェスでこれほど求められる存在になったのか。その鍵を握るのは、音楽とパフォーマンスが一体となって生み出される幸福感である。
音楽面では、代表曲「わたしの一番かわいいところ」に象徴されるように、四つ打ちのリズムを基盤に、シンプルかつ中毒性の高いメロディが繰り返される。クラブミュージックやエレクトロポップにも通じる構造は、ロックファンにとっても違和感なく音に身体を預けられる普遍性を持ち、初見の観客でもすぐに参加できる。フェスという限られた時間のなかで、グループに興味を持ってもらうための間口を最大限に広げていると言えるだろう。
もうひとつの強みは、視覚的なパフォーマンスだ。7人全員が高いエネルギーを維持し、ダンスの精度と笑顔を絶やさない。観客との距離がある大規模会場であっても、ステージから放たれる視覚的なエネルギーは観客席全体に拡散される。特にアイコンタクトや大きな動作でのアピールは、言語的なコミュニケーションが難しい場面でも効果的であり、観客の心を一気に解きほぐしていく。小さなライブハウスから始まり、対バンライブやリリースイベントなど、数えきれないほどの現場経験とそれぞれの地道な努力によって実力を磨き続け、着実にステップアップしてきたFRUITS ZIPPER。だからこそ、歌とダンスの高い実力と持ち前のサービス精神で、初めて彼女たちを観る観客の心をも掴むのだ。最初は距離を置いていた観客が徐々に体を揺らし、やがて振り付けに加わる光景は、この夏のフェス各地で繰り返し生まれていた。明らかにバンドファンであるバンドTシャツを着た観客が次第に腕を振り上げ、最後には笑顔でコールに加わっていた姿が忘れられない。ジャンルの壁を越えて「楽しい」という感情だけが共有される、その場の空気の変化こそが、FRUITS ZIPPERの最大の武器だと実感した。
バンドファンが大多数を占めるアウェイのフィールドでも、FRUITS ZIPPERはしっかりと爪痕を残している。SNSにはフェスの盛り上がりや余韻を伝える声が多く見られていたし、フェス終演後もしばらくはFRUITS ZIPPERのパフォーマンスに言及するロックファンも散見され、「FRUITS ZIPPER集客凄過ぎたしみんな歌えるなんて聞いてない」「生歌うますぎ」など特に確かな歌唱力に賞賛が集まっていた。これこそフェスの醍醐味であり、ジャンルの壁を越えて偶然の出会いが生まれ、新たなファン層が広がっていく瞬間だ。アウェイでの出演が単なる挑戦にとどまらず、次なるブッキングや大規模ステージへの足がかりとなっていくのも、こうした反響が確かに存在するからこそだろう。
そんな熱狂を積み重ねた先に待つのは、さらに大きな挑戦だ。FRUITS ZIPPERは、2025年10月より『FRUITS ZIPPER 1st ASIA TOUR 2025』を開催する。単独公演2度目となる台北に加え、初の上海、ソウルでの公演も予定されており、国内で培った熱量をそのままアジアへと広げていく。
次なる目標として見据えるのは東京ドーム公演の成功だ。日本の音楽シーンにおいて東京ドームはアーティストが全国的な成功を証明する舞台であり、アイドルにとってもひとつの到達点である。アウェイのフィールドで積み重ねてきた勝利と、フェスで得た新しいファン層の広がりがあるからこそ、その成功は現実味を帯びてきた。もはや単なる願望ではなく、確かな道筋として目の前に見え始めている。
FRUITS ZIPPERがこの夏に示したのは、音楽的魅力と確かなパフォーマンス力で、アイドルシーンの外からも“ライブ”が求められているという事実だった。そして、その人気は確実に日本全国にまで広がっている。観客の笑顔と拍手が積み重なり、その道は東京ドームへと続いていく。FRUITS ZIPPERがそこから先の未来に何を見せるのか、大いに期待したい。