『蓮ノ空』による『Fes×LIVE』とは? ライブ形態の面白さ、『ラブライブ!』シリーズにおける革新性
キャストそのものがステージに立つ意味、『Fes×ReC:LIVE』の意義とは?
また、『Fes×LIVE』のバーチャルライブという要素が、リアルライブに新しい意味を問うている点も見逃せない。『ラブライブ!シリーズ』の魅力としてよく挙げられるのが、アニメ映像のキャラクターの動きを、声優が寸分違わぬパフォーマンスを展開するシンクロパフォーマンス。それは2次元の動きを現実に投影することで現実と虚構の境目を曖昧にし、いわゆる“2.5次元”を体現するひとつの手段として成立しているからだろう。
しかし『Fes×LIVE』では、各キャラクターの担当キャストがモーションキャプチャーを用いてリアルタイムでライブを行う。つまり、キャラクターの動きを再現する以前に、モニターに流れる映像自体がキャストによるライブ“そのもの”なのだ。そのため、単に同じ動きをするだけでは“自分の過去をなぞる行為”になってしまう可能性すらある。だからこそ、『蓮ノ空』のリアルライブでは、よりキャスト自身がステージに立つ意味が問われていると感じられるのだろう。
一方で、キャラクターとキャストのパフォーマンスが地続きになっているからこそ、リアルライブを通じてキャラクターの成長をダイレクトに受け取ることができる。つまり、リアルライブすらもキャラクターの過去と今を繋ぐ“点”として組み込んでしまえるのだ。
では、録画形式のライブである『Fes×ReC:LIVE』の魅力とは何か? 『Fes×LIVE』との最大の相違点は、実際のライブ会場を利用した、有観客形式のバーチャルライブであることだ。事前収録した3D映像を大型モニターに投影し、まるでメンバーがステージに立っているかのようなライブ体験ができる。だが、わざわざ記録映像を使ってまで、あえてリアルでバーチャルライブを行う理由は、それだけではないだろう。前年の開催時には、103期の『Fes×LIVE』を映像データとしてだけでなく、空気感、体験すらも保存するという意図がある、と語られていた。自分たちの軌跡を、記録としてだけでなく、改めてファンに記憶として過去を刻んでもらいたい。そのための最も有効な手段こそ、生のライブ空間として体験させることだったのだろう。歴史の授業のようにただただ映像を流すのではなく、観客に“思い出”として持ち帰ってもらう。それが、『Fes×ReC:LIVE』最大の意味だと筆者は考えている。
もちろん、リアルタイム性を追求する『蓮ノ空』だからこそ、過去を追体験させるのではなく、6人の「DEEPNESS」のように、今実現可能なパフォーマンスも収録されている。『Fes×ReC:LIVE』で観ることのできる映像はリアルタイムで行われているものではないが、ファンが目撃するのはアーカイブではなく、間違いなく“今”できる体験だ。
5thライブ『みらくらぱーく!』公演で披露される『Fes×ReC:LIVE』は、9月更新の活動記録を見る限り、金沢から今の『蓮ノ空』を発信するライブになると予想される。同時に、百生吟子の最初の夢の形である“Bloom Days”、それを忘れられないイベントにするための第一歩でもある。それはまさしく、かつての『Fes×ReC』のように、今しかできない体験を経て共有し、思い出を刻むためのライブとなるのではないだろうか。