yukaDD、『FOGDOG』主題歌「flashback」と重なる葛藤の記憶 初心に立ち返って再発見した歌う意味

 9月22日に最終回を迎える平祐奈×丸山隆平によるドラマ『FOGDOG』。その主題歌「flashback」を歌唱しているのが、次世代を担うシンガーのyukaDDだ。“今”を大事に生きていこうというメッセージが込められた力強いバラード曲に仕上がった。また、MVには平祐奈と福山翔大が出演していることも話題に。ドラマ本編には描かれないアナザーストーリーのような内容は『FOGDOG』視聴者も必見だ

yukaDD「flashback」Music Video/ドラマDiVE『FOGDOG』エンディング主題歌

 これまでもドラマ主題歌を担当してきたyukaDDだが、刑事ドラマというテーマは初めてのこと。新たな挑戦となった「flashback」の制作エピソードとともに、自身の音楽キャリアやシンガーとしての核心について語ってもらった(編集部)

音楽への目覚め、学生時代の不安や葛藤とも重なった「flashback」

ーー最初にテレビドラマ『FOGDOG』のエンディング主題歌を手がけると知ったときはどう思いましたか?

yukaDD:今までは恋愛をテーマにした作品を担当することが多かったのですが、刑事ドラマは初めてで、自分にとっては挑戦でした。台本を読みながら「どんなふうに歌えばこの作品の世界観に寄り添えるのかな」と考えるうちに、期待とワクワクが膨らんでいきました。

ーー確かに恋愛ドラマではなくて刑事ドラマだと、楽曲のテイストもこれまでと違うものが提示できますもんね。

yukaDD:そうなんです。実際、声色も変えたし、これまでの楽曲とは違う感じに仕上がっていると思います。

ーー作詞作曲はこれまで同様Jin Nakamuraさんですが、初めてこの曲を受け取ったときはどのように感じましたか?

yukaDD:ゆったりした楽曲ですが、ドラマの雰囲気的にもバラードになりすぎないようにしたいなと思っていたので、最初は「難しそうだな」と思いました。サウンド的には日本の80年代の楽曲に近いのかなと思ったので、その時代の曲を聴いたりして、声の出し方も研究しました。

ーー声色や歌い方をいつもと変えたとのことですが、レコーディングではどのように?

yukaDD:タイアップのときはいつも、作品の雰囲気に合わせた歌を歌いたいなと思っていて。だから台本を読ませていただいたんですが、そこで感じたのは“今は霧の中にいて不安だけど、前に進んで行こう”というメッセージ。そんなドラマの内容とリンクするような歌を歌いたいなと思いました。

ーーそのメッセージを表現するために、具体的にはどのような歌い方をしたのでしょうか?

yukaDD:固くなりすぎない方がいいのかなと思って。柔らかいけど、どこか力強さがあるみたいな。私はクリスティーナ・アギレラが大好きなこともあって、これまでは力強く歌うことが多かったんです。この「flashback」も、歌おうと思えば特にサビは壮大に歌うこともできたけど、この曲の世界観的にはちょっと違うなと思った。“盛り上がるけど、切なさも感じられる”というものに仕上げたかったので、そこは意識しながら歌いました。

ーー先ほど、この曲を歌うにあたり、80年代の楽曲を聴いて研究したとおっしゃっていましたが、具体的にはどのようなものを聴いていたのでしょうか?

yukaDD:私、幼少期、島津亜矢さんが大好きだったんですよ。演歌歌手になりたくて。だから島津亜矢さんや小柳ルミ子さんといった昔好きだった曲を改めて聴いて、「こうやって歌うんだったよな」って思い返すという感じでしたね。

ーーどこか初心に帰るような。

yukaDD:はい。「あのとき、こういう感情で歌っていたな」と思い返したり、歌の発表会でドレスを着て演歌を歌ったときのことを思い出したりして。

ーーちなみに3、4歳の頃はどんな気持ちで演歌や歌謡曲を聴いていたのでしょうか?

yukaDD:ただ「歌が好き」「歌って楽しい!」みたいな気持ちでした。今もその気持ちに変わりはないですが、もっとクリアだった気がする。その心を思い出しました。

ーー歌詞の内容も、基本的にはドラマの内容に寄り添っていますが、yukaDDさんとして自分と重なるように感じた部分や共感できたものはありますか?

yukaDD:サビは結構自分と重なりますね。〈強くなれるはずと ただ じっと じっと 胸に 言い聞かせた〉とか。未来は見えないけど、とりあえず前を向いていくかないという状況は自分にも似たようなことがあって。

ーー側から見ると、これまでにタイアップも多く手がけていて、すごく順調に見えますが、yukaDDさんにもそういう時期があったんですね。

yukaDD:はい。高校は音楽の学校に通っていたんですけど、周りがデビューしたり、進路を次々と決めていくなか、自分は進路が決まるのが遅かったんです。そのとき自分だけ何も形になっていないと不安にもなったし、焦っていて。それこそ霧がかかってるみたいな気持ちでした。「前に進みたいけど、どう進んだらいいかわからへん」みたいな。そのときの記憶が“フラッシュバック”しましたね。

ーーそうだったんですね。そのときのことを、デビューして、しかもタイアップ曲として歌っていると思うと、報われているような感覚になりますね。

yukaDD:はい。この曲を高校時代の私に聴かせてあげたいです。

ーーMVも「FOGDOG」とのコラボで作られています。

yukaDD:作品の世界とリンクしたMVというのは初めてで、撮影はめちゃくちゃ緊張しました。平祐奈さんと福山翔大さんが目の前で演技されているので、私もドラマの世界に入っているみたいでうれしかったんですけど……それにしてもめっちゃ緊張しました。

ーー平さん、福山さんとは何かお話はされましたか?

yukaDD:はい、お話しさせていただきました。「『flashback』すごくいい曲ですね」と言っていただけて。そのほかにもお話ししたんですけど、緊張していて何を話したのか思い出せない……。でもすごく優しかったし、お話できてうれしかったです。

ーー映像の質感もドラマと同じで、「FOGDOG」ファンの方も楽しめるMVですよね。

yukaDD:はい。ドラマの中では描かれていない、錐とお父さんとの再会シーンもあるし、ドラマのファンの方にも絶対に見てほしいです。

ーー先ほど「昔は演歌歌手を目指していた」というお話がありましたが、改めてyukaDDさんの経歴についても聞かせてください。音楽を志したのは、演歌を歌い始めたのがきっかけですか?

yukaDD:そうです。小さい頃、おじいちゃんが病気で入院をしていて。子供ながらに「元気ないな」というのはわかったので、何か元気付けたいなと思っていたんです。そこで「おじいちゃん、めっちゃ歌好きやったな」と思って、入院先で歌ってあげたらめっちゃ喜んでくれて。それがすごくうれしかった。そこで、「歌っていいもんなんやな」と思って、歌手になろうかなと思ったのがきっかけです。

ーー素敵な理由ですね。でも、今のyukaDDさんは演歌歌手ではないですよね。ということは、そこから今日までにいろいろな音楽と出会って影響を受けてきたと思うのですが、音楽遍歴はどのようなものですか?

yukaDD:3~4歳から演歌を歌っていて、7~8歳のときに安室奈美恵さんに憧れてダンスボーカルを始めました。その後、9歳くらいで洋楽に出会って、クリスティーナ・アギレラが大好きになりました。「この人みたいに歌えるようになりたい」と思って、今のスタイルになったのかなと思います。

ーー小学生でもう今のスタイルを形成する音楽に出会ったんですね。その後、音楽の道を目指して、高校で音楽の専門学校に?

yukaDD:そうですね。でも中学3年生の頃に、歌を続けるかやめるかで悩みました。その頃にはもう周りの音楽の仲間や知り合いの子がデビューしていて。周りは成功しているのに自分は成功していないなっていう気持ちがあって。

ーー中学生ですでに。

yukaDD:はい。その頃はもうSNSもあったので余計に。でも親には音楽を辞めるか悩んでいるということは話していなかった。だけどお母さんは薄々気付いていたみたいで「まだ頑張れる力残っていると思うよ」ということを言ってくれて。その言葉に背中を押されて音楽の専門学校に進んだことが今につながっているので、本当にあのときやめなくてよかったなと思います。

ーーお母様は今のyukaDDさんの活躍、喜んでいらっしゃるでしょうね。

yukaDD:はい。めちゃくちゃ喜んでくれています。それこそドラマの放送後に「見たよ」と連絡もくれるので、それだけで「やっていてよかったな」と思います。

ーーそれこそ、おじいさまを喜ばせるところからyukaDDさんの音楽の道は始まっているから、今でも歌でご家族を喜ばせられるというのは一番うれしいですよね。

yukaDD:そうなんですよ。私の活動が形になって、リアルタイムで楽しんでもらえるのは本当にうれしいです。ライブも、大阪でやるときは必ず見に来てくれるし、うれしそうにしてくれて。本当に歌っていてよかったなって思います。

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