はるかぜに告ぐ とんず、KANA-BOONやRADWIMPSらに目覚めた青春時代 邦ロック好き芸人がトゲナシトゲアリに受けた衝撃
メディアミックス『ガールズバンドクライ』発のガールズバンド・トゲナシトゲアリが、9月23日に約束の地・日本武道館でワンマンライブ『トゲナシトゲアリ LIVE in 日本武道館 "奏檄の叫"』を開催する。2023年に活動をスタートしてから約2年、着実にワンマン公演の規模を広げ、対バンやフェスなどで認知度を拡大してきたトゲトゲの集大成を見せるステージになるだろう。
リアルサウンドでは、そんな彼女たちの魅力を広めるべく、バンド好きのお笑い芸人にトゲナシトゲアリのライブに触れてもらい、その感想を語ってもらうインタビューを企画。今回はJ-ROCK好きを公言している、はるかぜに告ぐのとんずにオファー。彼女がロックバンドにハマったきっかけや愛聴している音楽を振り返ると共に、トゲナシトゲアリに対する印象も語ってもらった(編集部)。
KANA-BOONの衝撃「全員マッシュやったんですよね」
ーーとんずさんは邦楽ロックが大好きで、はるかぜに告ぐのコンビ名もLUCKCAMEというバンドの「春風と成れ」にインスパイアされて付けたというお話です。そもそもバンド音楽とはどのように出会ったのでしょうか。
とんず:バンドに目覚めたのは中学3年の時ですね。中3のタイミングで引っ越すっていう、なかなかトリッキーなことをしたんですけど、もともと通っていた中学のレベルがすごく低くて、引っ越し先の中学はレベルが高いから、「今の学校では成績は良い方だけど、このままだと高校に行けなくなるぞ」って言われて(笑)、元の学校に親の車で送ってもらってたんです。その時に毎朝、FM802(※大阪のFMラジオ局)を聴いていたんですけど、当時、KANA-BOONの「ないものねだり」が流行ってて、ずーっと流れてたんですよね。眠たい朝に〈ゆらゆらゆらゆら〉言うてて、これはなんや? と。それでKANA-BOONというバンドの存在を知って、めちゃくちゃハマりました。
ーー「ないものねだり」はKANA-BOONがまだインディーズで活動していた時期、2013年の楽曲ですね。
とんず:で、兄ちゃんに「KANA-BOON知ってる?」って聞いたら、実はめちゃくちゃバンドに詳しいことがわかって。「じゃあこれも好きちゃう?」って色々教えてもらって、その時代の邦ロックにすごいハマったのが入り口ですね。ちょうどその頃、SEKAI NO OWARIがテレビに出てたり、クリープハイプとかSHISHAMOも出てきて、ちょっとしたバンドブームだったので。初めて自分で買ったCDは、キュウソネコカミの『人生はまだまだ続く』。人生で初めてタワーレコードに行ってみようと、三宮のタワレコ(タワーレコード神戸店)に1人でリュックを背負って冒険みたいな気持ちで行って、ドキドキしながら買ったのをすごく覚えてます。
ーーキュウソネコカミもお兄さんに教えてもらったんですか?
とんず:そうですね。ただ、めっちゃ聴くようになったきっかけは、その頃ちょっと気になってた先輩がキュウソネコカミ好きということを知って、そこから「うわー!」って猛勉強して好きになりました(笑)。その先輩とはその後、2人で三宮や北野坂に遊びに行ったんですけど、「今度友達が好きな子とデートするらしくて、いいデートスポットがあったら教えてって言われたから、そこを巡りたい」みたいな感じで言われて。なんかデートの下見に付き合わされて、「あ、これ、全然ないわ」と思って儚く散りましたね(笑)。でも、それ以降もキュウソにはどっぷりって感じでした。
ーーバンド音楽にハマる前は、どんな音楽に触れていましたか?
とんず:音楽は子供の頃からずっと好きで、世代的には、GReeeeN、西野カナ、湘南乃風、Superflyとか、『Mステ』(『ミュージックステーション』)に出てる人たちを聴いてる感じでした。そんななか自力でたどり着いたのがKANA-BOONで、邦ロックというジャンルやった感じですね。
ーーそれまではいわゆるJ-POPを聴いていたなかで、邦ロックやバンドサウンドのどんなところに惹かれたのでしょうか。
とんず:これはほんまに世代やからやと思うんですけど、当時マッシュヘアーが流行りだしたんですよ。それまでは、襟足を伸ばすようなチャラい髪型が流行ってたから、うちらの周りではマッシュが出てきた時の評判の悪さと言ったらすごかったんです。「なんてけったいな髪型」みたいな扱われ方の中で、KANA-BOONは「ないものねだり」のMVでメンバー全員マッシュやったんですよね。それまでアーティストってキラキラしたイメージやったのに、これはすごいカルチャーショックで。それこそ自分もマッシュになりたいと思うくらいの衝撃があって。
ーー実際にマッシュヘアーにしたんですか?
とんず:大学の時にすごく重たいマッシュになりました(笑)。ともかく、それまでの自分の周りの世界って、女の子はジャニーズ(現:STARTO ENTERTAINMENT)好きとか、西野カナ、AKB48が流行ってて、自分はそれに全然ハマれなかったんです。中学とか高校の女子の社会って、何か共通で好きじゃないとあかんみたいなのがあるじゃないですか。なので曲は知ってるしダンスも練習するけど、別にそんなに好きじゃないなって時に、自分にビターンってハマったのが邦ロックというジャンルで。居場所を見つけた感じはありましたね。
ーーそれで夢中になって聴くようになったわけですね。
とんず:当時はまだサブスクが一般的ではなくて、自分でCDを買ったり、TSUTAYAで借りてきてダビングしたり、YouTubeを流しながら曲を聴く時代やったからこそ、曲と景色がすごくリンクしてるんですよね。今でもその頃に聴いていた曲を耳にすると、その当時の景色とか感情がパッと思い出されるっていう。自分が主人公の映画のBGMを自分で選んで聴いてるみたいな感じというか。今思えば当時から自分の中に「受験の時期はこの曲」みたいなのがあったので、昔から自分のBGMを選ぶ作業が好きやったんやと思います。
ーーインスタのストーリーズでも「#今日のOP」と題して、いろんなバンドの楽曲をセレクトしてますよね。
とんず:そうそう。「今日はこの曲で出勤しよう」っていうの、ありません? そういうのは今でも無意識にこだわってやってますし、バンドサウンドが自分の人生のサウンドトラックみたいになってる感じです。
ハルカミライはジャンプ漫画の主人公「ルフィやな、こいつは」
ーーかっこいいですね。そんなとんずさんがこれまで出会ったなかで、一番衝撃を受けたバンドを教えてください。
とんず:ひとつ選ぶのは難しいんですけど、初めてライブを観に行ったのがRADWIMPSなんです。高1の時、バンド好きと言いだしてから仲良くなった子に誘われて、神戸のワールド記念ホールでのワンマンに行ったんですけど、当時の自分はRADWIMPSのことをあまり知らなかったうえに、朝から物販に長時間並ばされて、足に乳酸が溜まりまくって、ライブ前からめっちゃイライラしてたんですよ。でも、なんと席は最前列で、会場が暗転して、モニターにキラキラした映像が流れて、1曲目の「ドリーマーズ・ハイ」が始まった瞬間にアドレナリンがブワーって出る感じがして、疲れが一気に吹っ飛んだんです。初めてパチンコで当たった時の脳汁というか、そんなんじゃ収まらんぐらいのドーパミンが出て、「これはヤバい!」ってなって。一度そんな感覚を味わったら、それを求めてしまうじゃないですか。そこからライブにのめり込んでいきました。
ーー人生で初めてのライブがRADWIMPSで、しかも最前列だったのであれば、それはハマりますよね。
とんず:しかも『君の名は。』でブレイクする前、アルバムで言うと『×と○と罪と』の頃の、まさに黄金時代のライブだったので。これはもう誘った友達が悪い(笑)。そこからRADWIMPSはもっと売れて国民的なバンドになったので、ライブのチケットも全然取れなくなりましたけど、ずっと好きで、自分が大学生の頃、コロナでツアーがなくなるまでは行けるだけ行ってたし、徳島まで遠征とかもしてましたね。最初に誘ってくれた友達と一緒に。
ーーその他に、今まで観たバンドのライブで印象に残っているのは?
とんず:昔の話で言うと、今話したRADのライブの次、なんばHatchでKANA-BOONのワンマンライブを観た時に、生のライブがかっこよすぎて衝撃を受けました。曲の印象でキャッチーなイメージやったけど、実際に観たら「お前らってロックバンドなんかい!」と思って。その時に初めてライブハウスで生の音を浴びて、「あ、バンドって見に行かなあかんもんやな」と思ったんですよね。
それとAge Factoryは、ほんまに30人くらいしかお客さんがいない頃からライブを観ているバンドなんで、今ワンマンがソールドアウトするぐらいでっかくなったのは嬉しいですね。それも大学の時に好きやった先輩の影響なんですけど(笑)、最初に観た時はめっちゃ狭いハコで、人が少ないからすごく観やすいし、すごくかっこよかったんですよ。最近のライブでお客さんが大合唱してるのを見ると、昔はなかった光景やから感動します。
あと、最近めっちゃ良かったのはハルカミライ。あまりにもいろんなバンドが好きなんで、ハマり過ぎたら破産すると思って、結構有名なバンドでもあえて通ってないことがよくあるんですけど、ハルカミライもそういうバンドのひとつで。でも、メンバーと偶然お会いする機会があって、一緒に飲んだ時にライブに誘ってくれたんですよね。それで観に行ったらまんまとハマりました(笑)。それこそトゲトゲさんの聖地の川崎クラブチッタで観たんですけど、後ろの方で腕組んで見てた他のバンドのファンのおじさんが、ライブの最後に両手あげて「めっちゃ最高やったー!」って叫んでるのを見て、このバンドは人を魅了する力がえぐいなと思って。マジでジャンプ漫画の主人公みたいでした。「ルフィやな、こいつは」っていう。