バブルガム・ブラザーズ Bro.KORN、“お茶の間ファンク”を追求した40周年 「これが遺作パート1ということで……」
「WON’T BE LONG」“THE FINAL”の意味
ーーさらにKORNさんのディスクには70年代に活躍したソウルボーカルグループ、Tavaresの楽曲をカバーした「愛のディスコティック (It Only Takes A Minute)」も入っています。
Bro.KORN:こっちがいろいろあったんですよ。当時から聴いて知ってる曲だし、今回スタッフが勧めてくれて歌うことになったんですけど、英語で歌うとなったら本物を聴いた方がいいっていう話じゃないですか。本物に勝るものはないわけですから。しかも、海外の人もこの曲をいっぱいカバーしてるし。ということで、一応、日本語詞にしてみたんですよ。そしたらTOMも日本語が面白いんじゃない?って言ってくれて。だから俺は歌詞の1番の部分だけ英語で歌っておいて、2番は全部日本語でといたんですけど、TOMが英語だったら歌わないという話になって。俺が全部英語で歌う流れになっていったから、だったら全部日本語にした方がいいんじゃないか?って言ったんだけど、「いや、もう全部英語でいきましょう」って。
ーースタッフに押し切られたんですね。
Bro.KORN:そう。ソウルミュージックの曲を自分が英語で歌ってレコーディングするなんて恐れ多くて。しかもTavares様の曲ですから。だから嫌だったんですけど、とりあえず英語で録っておきましょうなんてスタッフにそそのかされて。そしたら「もう時間がない」みたいに言われて。「じゃあ、これを出しちゃうわけ?」って確認したら「それしかないんですよ」みたいな。うまく乗せられて世に出ることになったんです。
ーーじゃあ、TOMさんは歌ってないんですね。
Bro.KORN:全然歌ってないです。ひと言も歌ってない。コーラスもまったくない。TOMにフラれてそのまんまです(笑)。
ーーKORNさんは、この曲にどんな思い出がありますか?
Bro.KORN:当時、この曲で踊ってましたからね。自分たちのステージでも僕のソロのときに20、30年前から歌ってるんです。歌っていると言ってもダンスメドレーの内の1曲で、僕はサビのオイシイところだけ歌ってるくらいなんですけど。今回も真剣に歌ってもダセェなと思ったんで、ちょっと黒人なまりの崩し方で歌ったんですけど、やっぱり難しくて。まさかこの年になってフルで英語で歌うとは思ってなかったです(笑)。
ーーTOMさんの方の新曲は聴かれましたか?
Bro.KORN:実は1曲しか聴いてないんですよ。僕のセリフが入ってる「ナヤンデルタール人」は聴いたんですけど、他は聴いてない。というのも全部聴いちゃうと本製品が発売されたときにつまらないなと思って。
ーーその「ナヤンデルタール人」の印象は?
Bro.KORN:ザ・TOMですよね。どこかにメッセージ性があるのがTOMの曲で。ちょっと悲しくてジャジーなフレーズがTOMの持ち味なんで、かっこいいんですよ、曲も。
ーー幼稚園児でも歌える歌詞ですが、メッセージがすごく深いですよね。
Bro.KORN:そうなんですよ。だから、面白いっちゃあ面白いんですけどね。なんでこんな良い曲にこんな歌詞をつけたんだ?って思いました(笑)。
ーーTOMさんの方のディスクには「WON’T BE LONG (THE FINAL)」が入っています。リアレンジはこれが3回目で、TOMさんのパートを追加して2009年に発表した「WON'T BE LONG~Roots~」バージョンを下敷きにした編曲になっていますが、以前とどのような違いを出そうと考えたんですか?
Bro.KORN:まずはBPMを遅くしました。“Roots”のときはライブ用にテンポを早くしたんです。そうすると、すごくハネた感じと縦の感じの中間くらいになるんです。今回は遅くしたのでハネ系になってますね。最初の「WON’T BE LONG」と大体同じくらいだと思う。ただ、今、ライブでは早いBPMでやってるんで、ちょっとこれだと遅いかな?とは思ったんですけど。でも、雰囲気はものすごくいい。気持ちいい仕上がりになりました。歌もライブで今歌ってる感じのままレコーディングしましたから。
ーー「WON’T BE LONG」は数多くのアーティストにカバーされ、愛されてきましたが、KORNさんにとってどんな曲ですか?
Bro.KORN:僕が世界で一番この曲を歌っていると思うんです。今、銀座でカラオケバーをやってるんですけど、「KORNさん、歌ってよ」って言われて1日6回くらい歌うこともあるんですよ。ボトル入れてくれたら歌っちゃいますよなんて言うと、3本入れられて3回歌ったこともあるし。もう喉が持たないよ、みたいな(笑)。でも、そういうときにお客さんの声を聞いていると、メロディーや歌詞に神がかってるところがあるらしくて、すごく幸せになるとか、反対にちょっと哀しくなるとか。僕が歌っていると「前の彼氏とよく聴いてた」なんて言って泣き出す人もいたりして。それくらい、それぞれの方の思い出や長い人生の一部になっている。そういう意味ではこの曲を出せて良かったなと思ってます。
ーーBGBはもちろん、KORNさんの人生を変えた曲でもあるでしょうしね。
Bro.KORN:そうですね。リリース当時は反響がなかったんだけど、『オールナイトフジ』(フジテレビ系)の最終回(1991年3月)でヒロミが大好きだったから「かけよう、かけよう」なんて言ってくれて。それで2回パフォーマンスしたらウケてテレビ局に電話が殺到してヒットっていう。だから宣伝費がかかってないんですよ。その宣伝費を俺にくれってEPICソニーに冗談で言ったんですけどね(笑)。昔はヒットするとレコード会社の社員が立って拍手して迎えてくれたんです。でも、「WON’T BE LONG」の1回きりでしたね(笑)。
ーー今回の「WON’T BE LONG」には「(THE FINAL)」とついていますし、宣伝文にも「これが最後!」と書かれていますが、本当のところはどうなんですか?
Bro.KORN:最後と言いながら、アルバムタイトルを『SOUL SPIRIT Part I』にしてますし、去年から「LAST LIVE」と銘打って何回もステージをやってますからね。大阪の靴屋さんが閉店セールを何十年もやってるんですよ。最近「あの店、まだあるの?」って訊いたら「ありますよ。閉店セールの看板新しくなりましたよ」って(笑)。そういうのが面白くてね。我々もそれに近い感じですよ。
ーー去年3月に乳がんからの復活ソロライブを行い、BGBではツアーも行っています。ステージを重ねてきて、どんな手応えを感じていますか?
Bro.KORN:ステージに立てるということ自体がもう奇跡なんですよ。僕は腎不全、前立腺がん、乳がんを患ったし、TOMも心筋梗塞を発症してるし、二人でここまで生き残ってやれていること自体に感謝ですから。ステージに立っていると「あ、守られてるな」って思う瞬間があるんですよね。
ーーステージに立つとパワーがみなぎってくる。
Bro.KORN:そういうことってあるんだなと思って。3月の復帰ライブは治療中にやったんですけど、抗がん剤の副作用で倦怠感がすごくて、着替えるのも億劫で。「できねえかもしれないから担架とか用意してくれ」って言ってたのに1部、2部とやっていくうちにどんどん声が出てきたんです。昔からそういうところはあったんですけど、みんなが腰を抜かすくらいパワーが出た。むしろ僕らがお客さんからパワーをもらっている感じがしますね。
ーー9月、10月に『LAST LIVE vol.2』がありますが、どんなステージを考えていますか?
Bro.KORN:今回のアルバムを中心にしてライブをやりたいと考えています。あとは僕が毎年11月にやってるバースデーライブでは、今回のアルバムの中からゲストを呼んでパフォーマンスしたいなと思ってます。
ーーということは、佐野元春さんとの共演もあるかもしれない?
Bro.KORN:まだそれはお楽しみということで(笑)。でもどこかで実現できたらと思ってます。
ーーところで、今回のアルバムで過去曲を聴き直してみると、改めてBGBはソウルミュージックの折々のトレンドやエッセンスを採り入れて楽曲を作っていたことがわかります。ルーツにある60年代ソウルはもちろん、ディスコ、ファンク、ゴーゴー、ニュージャックスウィング、さらに90年代初頭に流行ったグラウンドビートやアフリカンビートにもアプローチしている。
Bro.KORN:それはTOMじゃなくて、僕の意識なんですよね。NYやLAに行くと、ファッションもそうなんだけど、「これは流行るな」と思ったものが大体1年後くらいに日本で流行るんです。そういうものを採り入れて、これは今度来るんじゃないかと思って作ってたんです。以前、小室哲哉とダンスミュージックについて対談したことがあって(「With t 小室哲哉音対論3」1996年刊行)。僕らは彼より年上なので、ディスコ以前のR&Bやソウル音楽で踊っていた。そのあと白人も含めたディスコ音楽が流行したんです。たとえばボニーMとかね。小室哲哉はああいうポップなディスコ音楽を日本的なわびさびのある曲に変えてヒットを出していきたいと言っていたんです。僕らはその考えでいくと、ちょっと違っていて。僕らはブルース・ブラザーズが大好きだし、ジェームス・ブラウンやレイ・チャールズ、アレサ・フランクリン、あとRUFUSとかのファンクとか、ああいうところを和製ファンクにしようということで“お茶の間ファンク”という言葉を僕が作ったんです。そしたら見事にそれがハマったんです。
ーー「WON’T BE LONG」もその系譜ですよね。
Bro.KORN:当時、久保田利伸が「KORNさん、あれってラガジャックスウィングですよね?」って言ったんですよ。まさにその通り。レゲエとニュージャックスウィングの間っていう。「それ、もらっていい?」「全然いいっすよ」って。そういう言葉はなかったからね。だからこの話をするたびに、「実は久保田が言ったんだけど……」って添えなきゃならないんだけど(笑)。他にもタイトルをパクったりしてるしね。Lakesideのヒット曲をもじって「FUNKASTIC OYAGE(ファンカスティック・オヤージ)」(1994年)とか(笑)。
ーー今回のアルバムを聴いていると、ギターのリフとかシンセの音色とか、「アノ曲のアレだよね」というのがたくさん出てくるんです。
Bro.KORN:マニアックなヤツをニヤッとさせたかったんですよ、僕は。「KORNさん、わかっちゃったんですよ。あのフレーズはアノ曲のアレですよね?」「正解!」みたいな(笑)。たとえばナイル・ロジャースはストラトキャスターでサラサラなカッティングをするけど、それはもうみんな当たり前のように使っている技法。ホーンセクションもEarth, Wind & Fireのように高音域を使うんじゃなくて、僕らは中音域のホーンセクションを重視して作っていたので、どちらかというとCommodoresとか、あの辺を意識して作っていた。それがかっこいいというのが僕らの美学なんですよ。
ーーそういうエッセンスを日本流に翻訳するとき、どんなことを意識していたんですか?
Bro.KORN:たとえばワシントンはゴーゴー、シカゴはハウスといった具合にアメリカの音楽には地域性があるじゃないですか。ミネアポリスだったらプリンスがいてとか。みんな形が違って方言のような面白さがある。それを総合体でできたらいいなって考えたんです。ラップのソロアルバムをNYで作ったときに、僕はどちらかといったらLAっぽいギャングスタスタイルのフレーズを作ったら「KORNさん、どっちなの?」って言われて。僕は日本で出すからどっちにもこだわってはいないと。LAに行ったときも向こうのギャングはカラーが違う。ブラッズは赤色、クリップスは青色を着てる。一回、青を着てブラッズの方に行こうとしたら「お前、その格好で行くのか? 殺されるぞ」と言われて。それで白いトレーナーに着替えて行きましたから(笑)。僕はそういうスタンスなんです。
ーーそんなKORNさんにとって、ソウルミュージックの魅力とは?
Bro.KORN:体で聴けること。リズムの音楽だから体で聴ける。ソウル音楽は体で聴いてソウルで感じるものだと思っていて。耳で聞くんじゃなくて、体で聴いて、頭で快感を感じる。そんな感じがするんです。それを自分で体現できたかどうかわからないけど、今も体現しようとめざしてるんです。めざしてる間にたぶん死んじゃうんだと思うんですけど(笑)。
ーーそんなことは仰らずに。まだまだ元気な姿を見せて頂きたいです。今後ソロとして、BGBとして、どのように活動していきたいですか?
Bro.KORN:BGBはBGBで、今の形をあまり崩さずにやっていきたいですね。二人が揃えばBGBというブランドになるので、それはもう崩さなくてもいいと思ってます。個人的にはリズム&ブルースとかソウルミュージックをもうちょっと追求していきたいと思ってるんですよね。だからもしソロアルバムを作れるんだとしたら、本当に最後の最後に、僕のメッセージみたいなメロディーとリリックをちゃんと曲にしてソウル音楽への愛を込めたアルバムを作りたいなと思ってます。
バブルガム・ブラザーズ デビュー40周年特設ページ
https://bubblegumbrothers.com/bgb40th
■リリース情報
『SOUL SPIRIT PartⅠ~ジジイは恋の合言葉~』
発売日:2025年8月27日(水)
仕様:通常盤、CD2枚組(BSCD2)
品番:MHCL-31090~31091
価格:¥4,950(税込)/ ¥4,500(税抜)
発売元:Sony Music Labels Inc. / Lagacy Plus
<収録内容>
Disc-1:Bro. KORN SIDE
01.SOUL SPIRIT PARTⅢ feat. 佐野元春 <新録音>
02.HARLEM 125
03.DESTINATION
04.ITSUMO
05.Torokel Lady
06.Tokyo Sweet Memories <新録音>
07.God damn Saturday night
08.弩 LUCKY DREAMIN’
09.JUICY GIRL
10.恋の落とし穴~Friday Night Fever~
11.It’s a MIRACLE CHANCE
12.恋はI MY ME MINE
13.JAFRICAN BEAT(JUJU MIX)
14.愛のディスコティック(It Only Takes A Minute) <新録音> ※カバー楽曲
<Disc-2:Bro. TOM SIDE>
01.WON’T BE LONG(THE FINAL) <新録音>
02.Beautiful People~明日への叫び
03.SOUL大臣
04.ヘイ!TAX
05.潮時・ポーカーフェイス
06.恋はMISTY(Wanna be your everything)
07.恋はうたかた
08.青き獣たち
09.JUST BEGUN
10.恋心キュル
11.Chance is Love
12.BLUE MOON
13.ナヤンデルタール人 <新録音>
14.Aucune guerre n’est bonne(正しい 戦争なんて 無い) <新録音>
『SOUL SPIRIT PartⅡ』(リマスター再発)
発売日:2025年8月27日(水)
仕様:通常盤(BSCD2) *最新リマスタリング
品番:MHCL-31092
価格:¥3,080(税込)/ ¥2,800(税抜)
発売元:Sony Music Labels Inc. / Lagacy Plus [オリジナル発売(LP):1985年 / 初CD化:1991年]
<収録内容>
01.忘れじのエヴリナイト
02.不注意なLove Song
03.下心もいとしさで
04.Working Class Solitude
05.そんな今夜悲しくてLove Sick
06.SOUL SPIRIT PartⅡ
07.はにかみのプライバシー
08.灯ともし頃のBay Blues
09.移り気の4 SEASONS
10.心残りのアヴェニュー
アルバム2作品の購入はこちら
『SOUL SPIRIT PartI~ジジイは恋の合言葉~』(MHCL-31090~31091)
https://BubblegumBrothers.lnk.to/SS_part1
『SOUL SPIRIT PartⅡ』(MHCL-31092)
https://BubblegumBrothers.lnk.to/SS_part2
■ライブ情報
『~ジジイが街にやってくる!また?~バブルガム・ブラザーズ LAST LIVE vol.2』
2025年9月10日(水)
ビルボードライブ横浜(1日2回公演)
・1stステージ 開場/16:00 開演/17:00
・2ndステージ 開場/19:00 開演/20:00
https://www.billboard-live.com/yokohama/show?event_id=ev-20722
2025年9月23日(火・祝)
ビルボードライブ大阪(1日2回公演)
・1stステージ 開場/14:00 開演/15:00
・2ndステージ 開場/17:00 開演/18:00
https://www.billboard-live.com/osaka/show?event_id=ev-20723
2025年10月5日(日)
銀座BASE GRANBELL(1日2回公演)
・1stステージ 開場/15:30 開演/16:30
・2ndステージ 開場/19:00 開演/20:00
https://basegranbell.jp/schedule