草彅剛、主演映画『碁盤斬り』が海外でヒット “代表作”の更新――恩師・高倉健から受け継ぐ硬派な演技
草彅剛の瞳に宿る“耐え忍ぶ思い”――言葉を超えて伝わる演技
なぜ草彅の演技は、これほど国境を越えて人々の心に届くのだろうか。『ミッドナイトスワン』で見せたトランスジェンダーが抱える孤独と愛情、『新幹線大爆破』でまっとうした職業人としての使命と葛藤、『碁盤斬り』で表現した武士として生きる誇りと苦悩。役柄は異なれど、その根底に流れるのは、必死に生き抜こうとする人間の“耐え忍ぶ思い”だ。
草彅の演技に引き込まれるのは、その佇まいから伝わる心情、そして瞳の奥に宿る信念だ。引き算の表現によって観客の心を揺さぶり、文化や言語が異なる世界でも同じ感情を共有させる力となる。草彅の演技は、見えない心の糸をそっと手繰り寄せ、スクリーンのこちら側にいる私たちを物語の中へと引き込む。
ふと、『碁盤斬り』で象徴的に描かれていた“手談”を思い出す。“手談”とは、囲碁を通じて言葉を交わさずとも相手と心を通わせること。言語や文化が異なっても、映画という作品を介して人と人は通じ合える。そのことを、俳優・草彅剛は体現しているのではないだろうか。
さらに、『新幹線大爆破』は、草彅が俳優人生の師として仰ぐ名優・高倉健との縁を感じさせる作品でもある。1975年に公開された高倉の主演作として知られる『新幹線大爆破』のリブート版である今作。高倉の演技は「背中で語る」と称され、多くを語らずとも、人が共感せずにはいられない思いを背中で示す。その魅力は昨今、アニメ『ダンダダン』(MBS/TBS系)の影響もあり再評価されているが、それも草彅の躍進を後押ししているのかもしれない。武骨ながらも真心がブレない日本人。そんな日本映画で繊細に描かれる主人公像と、草彅が高倉から受け継いだ硬派な演技とが見事に重なっている印象だ。
近年、作品に出演するたびに“代表作”を塗り替えているような活躍を見せる草彅。それは彼自身の俳優としての成功はもちろん、今後の日本が世界に放つ作品そのものの可能性を広げていくことにもつながるだろう。「分断の時代」とも言われている今、草彅は言葉を超えて作品と観客の心をつなぐ“橋”となる。その歩みもまた、ひとつのストーリーとして私たちの心を掴んで離さない。
※1:https://eiga.com/news/20250409/22/
※2:https://bunshun.jp/articles/-/78490