Mrs. GREEN APPLE、SuchmosからBillyrrom、First Love is Never Returnedまで 30回目の『ラブシャ』で必見のバンド
音楽フェス『SWEET LOVE SHOWER』(以下、ラブシャ)が今年も8月29日から31日の3日間、山梨県・山中湖交流プラザ きららで開催される。1996年の初開催から数えて30回目の節目となる今回も、注目のニューカマーからベテランまで、キャリアもジャンルもさまざまなアーティストやバンドが多数出演する。その数、実に全93アクト。もちろんどれも必見だが、その中でも今観ておきたい出演者を独断と偏見でピックアップした。ラブシャならではのバラエティ豊かなラインナップを感じさせながら、湖のほとりの開放的なシチュエーションで観る彼らのライブは最高に決まっているだろうな……と妄想しながら選んだので、同じように山中湖に吹き渡る風を感じながら読んでほしい。
まず1組目は初日8月29日、LAKESIDE STAGEのトリを飾るMrs. GREEN APPLEだ。ご存知のとおり、今年は彼らにとってデビュー10周年のアニバーサリーイヤー。7月に行われた横浜・山下ふ頭での野外ワンマンライブ『MGA MAGICAL 10 YEARS ANNIVERSARY LIVE 〜FJORD〜』をはじめ様々なプロジェクトが展開される中、この夏はラブシャに加え、『SUMMER SONIC』や『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』といったフェスにも続々出演。ラブシャについていえば、彼らが登場するのは2016年以来、実に9年ぶり。2022年の「フェーズ2」開幕以降ではもちろん初めてとなる。その9年の間に彼らが果たした躍進については言うまでもないだろう。ワンマンライブでは演出面も含めてとてつもないスペクタクルを生み出し続けている彼らだが、フェスでもそのスケール感は健在。ヒット曲だらけのセットリストで圧倒してくれるはずだ。
同じく初日、GOOD VIBES AREA改めJAMMING COURT STAGEに出演するOmoinotakeにも注目したい。昨年5月にスペースシャワーTV開局35周年を記念して開催された「春のラブシャ」こと『SWEET LOVE SHOWER SPRING 2024』には出演していた彼らだが、夏のステージに登場するのは今回が初めて。「幾億光年」の大ヒットに『第75回NHK紅白歌合戦』出場と大躍進を遂げた2024年を経て、満を持してのラブシャ参戦となる。激動の1年を詰め込んで年明けにリリースされたアルバム『Pieces』はバンドとしての自由さとそこに1本芯を通す力強さが大爆発した快作となったが、彼らの本領はやはりライブ。路上ライブ時代から磨き上げてきた演奏と、オーディエンスの耳に最短距離で飛び込んでくる藤井怜央(Vo/Key)の表情豊かなボーカルは、音源で聴く以上にパワフルで親密だ。そんなOmoinotakeの音楽とJAMMING COURT STAGEの祝祭的なムードはどう考えてもベストマッチ。夕暮れの湖畔で、その美しいメロディに身を委ねたい。
続いては2日目、8月30日のMt. FUJI STAGEのラストに登場するSuchmos。彼らとラブシャを主催するSPACE SHOWERとは切っても切れない関係性で、「STAY TUNE」でブレイクスルーを果たした2016年から3年連続でラブシャに出演。Suchmosにとっては“ホーム”のようなフェスだと言ってもいいかもしれない。そんな彼らは今年、活動休止から完全復活。6月の横浜アリーナでのワンマンライブ『Suchmos The Blow Your Mind 2025』でも、そして7年ぶりの出演を果たした7月の『FUJI ROCK FESTIVAL '25』でも、ファンから大歓迎を受けながら充実のステージングを披露していた。様々な出来事を経て再び集ったメンバーたちによる演奏はどこか懐かしくもあり、しかし同時にとても新鮮だった。7月リリースのEP『Sunburst』からの楽曲はもちろん、過去の曲たちも今の彼らによってまた一味違ったグルーヴを生んでいるので、ぜひ現在進行形のSuchmosに期待してほしい。
最終日、8月31日のJAMMING COURT STAGEにトップバッターとして立つレトロリロンにも要注目。2020年の結成以来じわじわと支持を拡大し、今年ついにメジャーデビューを果たした。5月には『オールナイトニッポンX』(ニッポン放送)のパーソナリティに抜擢され、今夏には『SUMMER SONIC 2025』や『WILD BUNCH FEST. 2025』といった数々のフェスに出演、今年リリースしたEP『アナザーダイバーシティ』ではポップさにおいても演奏のパワーにおいても格段の進化を刻むなど、その勢いは増し続けており、ラブシャでのステージにも期待がかかる。また、最終日のJAMMING COURTでもう1組、ぜひ目撃してほしいのが、初出演にしてステージのトリを任されたBillyrromである。2020年に地元である東京・町田で結成された6人組は、2023年から『FUJI ROCK FESTIVAL』に2年連続で出演。1stアルバム『WiND』を携えて今年行われたツアーではZepp Shinjuku (TOKYO)や台湾での公演もソールドアウトさせている。Mol(Vo)のカリスマ性溢れるパフォーマンス、ジャンルをクロスオーバーさせながらエモーションもしっかり刻まれたサウンド……まだ彼らのライブに触れたことのない人にこそ、この機会に出会ってほしい。
最後にもう1組、今回のラブシャ初出演組で旋風を巻き起こしそうなバンドを紹介したい。北海道・札幌出身の5人組、First Love is Never Returnedである。結成は2018年、前身バンドを含めれば2016年に活動開始という、年数だけを見ればそれなりのキャリアと言えるが、なかなか芽が出ないままコロナ禍で実質的に活動休止状態となり、メンバーチェンジを経て2022年末から本格的に動き出した紆余曲折のあるバンドである。だが、いやだからこそ、彼らが鳴らす音楽にはぎゅっと実が詰まっている感じがする。R&Bやシティポップを基調にした洒脱なサウンド、ニューヨークへの音楽留学経験もあるKazuki Ishida(Vo/Gt/key)の伸びやかなボーカル、ぐんぐんと外に向かって広がっていくような気持ちのいいメロディライン。ソウルやファンクへの憧憬と知見をしっかり持ちながらも、それをどこまでもキャッチーなポップスに仕立てていくセンスは、まだまだここから大きく状況が拡大していく可能性に満ちている。
上京した素直な心境を極上のグルーヴに乗せてダンサブルに歌い上げた「OKACHIMACHI FRIDAY NIGHT」、祝祭感に満ちた「僕らの行進曲」から、まるで語りかけるようにしっとりと歌い上げるミドルバラード「挿入歌」まで、ラブソングを基調にしながらも彼らの作風は実に幅広い。そんなFirst Love is Never Returnedは8月6日に最新配信シングル「微炭酸」をリリースしたばかり。バンドにとって初のサマーソングで、華やかなホーンセクション、とりわけサックスソロが印象的な1曲だが、この楽曲もきっとラブシャで披露してくれるだろう。〈微炭酸〉をモチーフに、ひと夏の恋の情景を描写した歌詞もいい。夏の終わり(というにはまだまだ暑い盛りではあるけれど)、ちょっと切なくなりながら甘酸っぱいムードに浸るにはぴったりの曲だ。
今年のラブシャを彩るアクトはどれも見逃し厳禁。現地に行く人は他のフェスにはない会場の開放感や周囲の景色も含めて、楽しみ尽くしてもらいたいと思う。
『SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER 2025』公式サイト
◾️First Love is Never Returned リリース情報
「微炭酸」
配信中:https://flinr.lnk.to/bitansan
◾️First Love is Never Returned ツアー情報
『#FLiNR S/A TOUR 2025 [WHAT IS "POP OUT"?]』
9月5日(金)Shibuya WWW X
9月27日(土)札幌ペニーレーン24
購入:http://eplus.jp/flinr/