稲葉浩志、峯田和伸、宮本浩次……東京スカパラダイスオーケストラが引き出すボーカリストの魅力

 東京スカパラダイスオーケストラが、稲葉浩志をゲストボーカルに迎えたニューシングル『Action (VS. 稲葉浩志)』を9月3日にリリースする。

 シングルには、表題曲「Action (VS. 稲葉浩志)」と「タイムカプセル (VS. 稲葉浩志)」の2曲が収録される。1曲はスカ、もう1曲はミドルバラードと明かされており、2曲で違った雰囲気を楽しめそうだ。谷中敦(B.Sax)のコメントによれば、以前から稲葉と作品を制作したいとは思っていたものの、まさかの稲葉からの逆指名があったことで今回のコラボレーションが実現したのだという。稲葉も「常に全員参加の、部活のようなレコーディング作業は、正しい音楽の作り方を見せられたようで刺激的でした」(※1)とコメントを寄せており、互いへのリスペクトが伝わってくる。

 今作は、スカパラが「戦うように一緒に音楽を作っていく。」というコンセプトを掲げて2022年よりスタートさせた“VS.シリーズ”の第4弾にあたり、シリーズとしては今回が初のパッケージ作品リリースとなる。一方で、“VS.シリーズ”が始まる以前にも、スカパラはさまざまなアーティストをゲストに迎え、コラボを果たしてきた。

 彼らのコラボレーションの歴史が始まったのは2001年。田島貴男をフィーチャーした「めくれたオレンジ」をはじめ、チバユウスケとの「カナリヤ鳴く空」、奥田民生との「美しく燃える森」と、3枚連続でボーカリストを招く形で作品をリリースした。この3作は「歌モノシングル3部作」と呼ばれ、ここからボーカリストを迎え入れて楽曲を制作するというスタイルもよく見られるようになってくる。

「ちえのわ feat.峯田和伸」 MV+ドキュメンタリー -YouTube Ver.- / TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA

 男性アーティストとの歌モノ作品では、たとえば、峯田和伸を迎えて2018年にリリースされた「ちえのわ feat.峯田和伸」が挙げられる。人間関係を知恵の輪に喩えたこの楽曲は、峯田の剥き出しの感情を乗せるようなボーカルに、ブラスサウンドが溶け合うことでどこかあたたかさを感じさせる楽曲に仕上がっているように思う。アッパーチューンでありながらも、メリハリを利かせたアレンジも印象的だ。華やかなイントロと峯田のシャウトで幕を開けたかと思えば、歌い出しはピアノのコードが裏拍で鳴るのみ。そのままBメロまでは音数が少なく、サビでバンドがフル編成で合流して一気に盛り上がるが、サビ終わりの〈ばらばらにしたくない〉〈離れたくないんだ〉といったフレーズでは再び音がミニマルに。全体を通して、峯田の歌声をリスナーにしっかりと聴かせる構成になっているのだ。

東京スカパラダイスオーケストラ - 明日以外すべて燃やせ feat.宮本浩次

 同じく2018年にリリースされた「明日以外すべて燃やせ feat.宮本浩次」は、宮本浩次をゲストボーカルに迎えた作品。インタビューによれば、宮本の声の音域の広さを踏まえ、10年以上も前からあたためていたメロディをもとに制作されたのだという(※2)。峯田との「ちえのわ」がボーカルに寄り添うようなアレンジだったとすれば、「明日以外すべて燃やせ」はボーカルとバンドが共鳴している作品とも言えるかもしれない。特にサビでは、言葉の一つひとつに魂のこもった宮本のボーカルと、それをなぞるようにブラスが同じメロディを奏でており、一緒に熱いメッセージを届けているような印象を受ける。リリース当時はエレファントカシマシがデビュー30週年を迎え、スカパラが翌年にデビュー30週年を控えていた。ともに音楽シーンの第一線で活躍してきた二組が、次世代へとエールを送るような歌モノ作品だったのだ。

 峯田や宮本など、圧倒的な存在感を放つボーカリストをゲストに招いてきた東京スカパラダイスオーケストラ。振り返ってみると、ゲストアーティストの魅力を最大限に引き出しながらも、どの曲にもスカパラらしさがある。それは、ゲストボーカリストとの化学反応を楽しみ、彼らがあくまでもスカバンドとしての軸をぶらさずに、リスペクトをこめて楽曲を制作してきたからこそなのではないだろうか。

 今回の『Action (VS. 稲葉浩志)』も、両者の魅力が発揮された作品になっているはずだ。作品が届けられる日を楽しみに待ちたい。

※1:https://tokyoska.net/news/detail.php?id=1126570
※2:https://realsound.jp/2018/11/post-285772.html

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