椎名林檎、back number、LE SSERAFIM、SUPER BEAVER、Tele、LIL LEAGUE……注目新譜6作をレビュー

 毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回は椎名林檎「芒に月」、back number「ある未来より愛を込めて」、LE SSERAFIM「Kawaii (Prod. Gen Hoshino)」、SUPER BEAVER「主人公」、Tele「硝子の線」、LIL LEAGUE「真夏ノ花火」の6作品をピックアップした。(編集部)

椎名林檎「芒に月」

椎名林檎 - 芒に月

 ドラマ『ひとりでしにたい』(NHK総合)主題歌となる新曲。昨年行われたアリーナツアーのバンドメンバーであり、東京事変からの盟友である伊澤一葉のバンド・APPAの原曲を起源とし、作詞・椎名林檎、作曲・伊澤一葉、編曲・村田陽一によって再構築されたそう。昭和のキャバレーで流れていそうなジャズやブギウギを派手なビッグバンドで鳴らす、まさに彼女の十八番と言える豪華絢爛な大舞台。ユーモラスな笑いとシリアスな憂いを飲み込みながら〈連れ去りたもれ/いずこへなりと〉と旅を続け、トロンボーン、ハープ、エレキギターなど名脇役を入れ替えながら圧巻のフィナーレへ! 6分強の尺はかなり長めであるが、聴き終えた時に受け取るのは、名作映画を一本見終えたような満足感だ。(石井)

back number「ある未来より愛を込めて」

モスバーガー「食べる、HAPPY!」篇30秒

 モスバーガー新ブランド『食べるHAPPY』編CMソングとなる最新曲。ダンスミュージックを意識したアレンジは通常のバンドサウンドに羽が生えたようで、どこまでも爽やかに空を飛んでいくイメージを描き出す。歌い出しは〈教室の中じゃ/答えを探せない君〉で、そこに続くは〈悪口を言われて/それでも笑ってた君〉なのだが、清水依与吏(Vo/Gt)の筆にいつもの自虐癖はない。今日より明日、百年の恋より千年の愛。“今”ではなく、忘れられない“あの日”でもなく、続く日々の先にある“未来”を立脚点とした歌詞がかなり彼らにしては新鮮。これまで若者たちの共感を呼ぶ恋愛ソングを量産してきた清水が、実は頼り甲斐のあるいい大人であることを改めて思い知る。(石井)

LE SSERAFIM「Kawaii (Prod. Gen Hoshino)」

『My Melody & Kuromi』予告編 - Netflix Anime

 アニメ『My Melody & Kuromi』(Netflix)主題歌を星野源がプロデュース、作曲・編曲・作詞を手がけた新曲「Kawaii (Prod. Gen Hoshino)」は、LE SSERAFIMのもともとのコンセプトである“恐れることなく前に進む”を改めて際立たせると同時に、彼女たちの新たな魅力を引き出すことに成功している。浮遊感をたたえたシンセ、深みのあるベース音、心地よく跳ねるビートを軸にしたトラックとともに放たれるのは、「大好きな友達たちと求める場所に行こう」というメッセージだ。「Kawaii」は他者に見せるためではなく、自分たち自身を肯定し、支え合うためのキーワード。〈So, with my melody, let’s go〉というリリックの通り、音楽やメロディが持つポジティブなパワーが溢れているのもこの曲の大きな魅力だろう。メンバーそれぞれの個性を活かしたボーカルワークも素晴らしい。(森)

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