乃木坂46 賀喜遥香&井上和が“挑戦”の場に寄り添う意味 『閃光ライオット』アンバサダーの必然性
井上は、加入からの成長スピードと、ジャンルを超えた活躍が際立っている存在だ。2022年の加入以降、5期生にとって初めての期別楽曲「絶望の一秒前」でセンターを務めると、翌年には33rdシングル表題曲「おひとりさま天国」で単独センターに抜擢。その後は36thシングル表題曲「チートデイ」でもセンターに選ばれ、まさに“今”のグループの中心として牽引してきた。彼女のその表現の多様性は特筆すべきだ。専属モデルとして『non-no』(集英社)で活躍し、『乃木坂LOCKS!』のMC、『乃木坂46"5期生"版 ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」2024』やドラマ『スプリング!』(テレビ朝日系)など、演技の場でも確かな足跡を残してきた。
加えて、1st写真集『モノローグ』(講談社)には、10年のバレエ経験で培った身体のしなやかさと、“素の自分”を見せることへの覚悟が詰め込まれていた。あらゆる角度から「表現とは何か」ということに向き合ってきた彼女にとって、挑戦とは日常そのものだったのだろう。「最初はリスクばかり考えていた」と語る彼女が、今では「挑戦を楽しむことが一番大事」と話すようになったのだ。MTV主催の音楽授賞式『MTV VMAJ 2025』で披露した「リレイアウター」(稲葉曇)のような難易度の高い曲を1人で向き合ったときの戸惑いも、演技で他者の感情を受け止めたときの衝撃も、すべてが成長の糧になっている。井上もまた挑戦の先にある痛みも、喜びも知っているからこそ、10代にとって次の自分を想像する手がかりになっていくことだろう。
今回のアンバサダー就任の背景には『SCHOOL OF LOCK!』でそれぞれ“副担任”と“講師”としてリスナーに寄り添ってきた時間も、今回のアンバサダー就任と深く結びついている。
番組内では、生徒から寄せられる悩みに丁寧に耳を傾け、自らの体験を言葉として届けてきた2人。その姿勢は、単に“話す側”ではなく、“同じ目線で向き合う存在”としての信頼を築いてきた証でもある。だからこそ、『閃光ライオット』という舞台とは、本質的に相性が良い。夢の入り口に立つ10代の背中を押す役割において、彼女たちはすでに、日々の放送を通じてその準備を積み重ねてきたとも言える。
さらに『閃光ライオット2025』から新設された「ボカロステージ」も、彼女たちの表現スタイルと深いところで接続している。幼い頃から絵を描くことを表現の軸としてきた賀喜は、イラスト文化と親和性の高いボカロの世界にも自然と馴染んでいる。井上は、ラジオを通じて積極的にボカロ楽曲を紹介し、「綺麗事だけじゃないところに惹かれる」(※2)と語ってきた。そこにあるのは、ただの流行としての消費ではなく、表現としての真摯なリスペクトだ。カルチャーを、個人の感性としてきちんと受け取ってきたからこそ、彼女たちの存在は新たな領域に挑む10代の背中を確かに押すだろう。
『閃光ライオット』は、10代のまだ形になっていない可能性を外に向かって放つ場所でもある。そんな挑戦の場で、賀喜と井上という、挑戦と共感を体現する2人が寄り添う意味は大きい。彼女たちは、過去に誰かの背中に憧れ、今は誰かの背中を押している。そして今後も、表現することの素晴らしさ、喜び、そして痛みをも伝えながら、光を照らしていくだろう。
※1:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003617.000004829.html
※2:https://realsound.jp/tech/2025/04/post-1978785_2.html