国内外クリエイターの“コライト交流”、京都開催『SONG BRIDGE 2025』をレポート 宅見将典に聞く参加の手応え

その曲を誰が作ったかなんてリスナーには関係ない

ーー宅見さんはもう1セッション参加されたんですよね。

宅見:はい。2日目はタイのSlot Machineというロックバンドと、ショーン・ボウというプロデューサーと一緒にハードロックナンバーを作りました。ギャビちゃんの曲が街中をかわいい車でドライブしている感じだとすると、こっちはフリーウェイを爆走しているイメージ(笑)。現代版「Kickstart My Heart」(Mötley Crüe)みたいな感じです。

ーー最高ですね。

宅見:もともと僕はロックバンドでデビューしているのですが、YOSHIKIさんに憧れてツーバスを踏みまくっていたところが原点なんですよ。そこから音大に行ったりジャズにいったりしたわけですけど、根底にはロックがあるんです。だから今回、2曲とも全然タイプは違うんですけど、どちらも原点回帰できたセッションだったなと感じていて。普段の仕事みたいに「何かっぽく」ということを一切考えることなく、そこにいるアーティストがロックの人だからロックを作り、フレンチポップの人だからフレンチポップを作るっていう。コライトではありつつ、プロデュースに近い感覚もありましたね。

ーー「バンドがコライトに参加する」って、少し不思議な感じもします。もともとチームみたいなものじゃないですか。

宅見:そうなんですよね。僕も「なぜ?」とは思ったんですけど、たぶん自分たちだけの中から出てくるもの以外にチャレンジしたかったんじゃないでしょうか。

ーーもしかしたら今後、積極的にコライトをしたがるバンドも増えてくるかもしれませんね。

宅見:かもしれないですね。新しいエッセンスが欲しいタイミングというのは、バンドであってもあるものでしょうから。そのときにどこの国の人とやるべきかと考えると……日本人ってゼロイチはあまり得意じゃないけど、1を10や20にするのはすごくうまいじゃないですか。だから日本に来てコライトを試すことをオススメしたいですね(笑)。

Foet(Slot Machine)、Gak(Slot Machine)、宅見将典、Seann Bowe
宅見将典、Seann Bowe、Gak(Slot Machine)
宅見将典

ーーそうすることで、解散するはずだったバンドが解散せずに済むかもしれない。

宅見:そうそう。たとえばBon Joviの「You Give Love A Bad Name」とか「Livin' On A Prayer」とかって、外部の作家を入れてるんですよ。自分たちだけで作った曲じゃないんです。

ーーそれは知りませんでした。

宅見:「あの曲をもらえたことに感謝してる」っていうジョン(・ボン・ジョヴィ)のインタビューを読んだことがあります。その感覚って、日本のバンドにはあまりないですよね。「バンドなんだから自分たちでやらなきゃ」という意識が強い。でも実際、その曲を誰が作ったかということは、熱心なファン以外には関係ないじゃないですか。曲さえよければ。外部の作家を入れることでうまくリフレッシュして、バンドが長く続いてくれるならファンにとってはそっちのほうがよっぽどいいわけで。たぶん今回のSlot Machineも同じだと思うんですよね。「自分たちだけで」にこだわるのではなく、外部からフレッシュなものを取り入れようという。しかも、違う国の人と一緒にやるということが重要だったんだろうなと僕は思っています。

原点に戻れる機会だった

ーー宅見さんご自身はいかがですか? 「今後、行ったことのない国に行ってコライトをしてみたいな」という気持ちが芽生えたりしました?

宅見:そうですねえ……どちらかというと、行ったことのない国へ行って道端でセッションとかをしてみたいですね。あと、ちょっと話は逸れますけど、これだけアメリカで定着しているコライトという手法が日本ではそこまで一般化していないのって、国民性もあると思うんですよね。アメリカではシェア文化が浸透していて、セグメントがものすごくハッキリしている。しかも、個人個人のディベート能力も高い。それぞれの立場が明確で、ちゃんと意見を言い合えるから成り立つんですよ。

ーーなるほど! たしかにそうかもしれません。

宅見:日本では年功序列が重んじられているから、大先輩と一緒にやるとなったら言いたいことが言えなかったりする。そうなっちゃうと、いいものってできないですよ。ここが、僕がロサンゼルスへ行って一番学んだことです。

ーーお話を伺っていると、いろいろな経験を重ねてこられた中で、どんどん宅見さんの音楽に対する欲求がプリミティブな方向へ向かっているように感じます。

宅見:そうですね。もともとそういうタイプではあったんですよ。でもやっぱり音楽を仕事にするのって大変なことで、いろんなことにアジャストしていかなければいけないんです。ちょっと変な話ですけど、たとえばオーディオインターフェースを通してギターを録音するときって、レイテンシー(遅延)というのがあって発音タイミングが少し遅れるんですね。僕はその環境に慣れすぎちゃって、そのレイテンシーを想定してちょっと早めに弾ける体になってるんですよ。

ーーそれはすごいですね……!

宅見:だから、たまーにスタジオでギターアンプにつないで弾くと、レスポンスが早すぎて「え? まだ弾いてないのに音が鳴ってる!」という感覚になるんです(笑)。それって、時代とともに発達するテクノロジーに人間側が適応していくということの一例ではあると思うんです。今、どんな業種でもその二極の共存について問われているじゃないですか。AIもそうですし。

ーーおっしゃるとおりですね。

宅見:その意味でも、今回のこの『SONG BRIDGE 2025』でのセッションというのは、僕にとって原点に戻れる機会だったなと。ロサンゼルスでやるセッションとは全然タイプの違う、アーティスト本人とのプリミティブなセッションを体験できたというのが一番よかったですね。

■開催概要

『CEIPA x TOYOTA GROUP “MUSIC WAY PROJECT” Global Co-writing Camp -SONG BRIDGE 2025-』
日程:2025年5月18日(日)~5月21日(水)計4日間
地域:平安神宮 尚美館、興正寺、京都芸術劇場 春秋座 studio21、大西常商店 京町屋
主催:CEIPA x TOYOTA GROUP “MUSIC WAY PROJECT”
協力:Sony Music Publishing、UNIVERSAL MUSIC PUBLISHING、FUJIPACIFIC MUSIC、NICHION、SURF Music
協賛:YAMAHA、オーディオテクニカ、高峰楽器製作所、BEAMS

【参加クリエイター】(アルファベット順)
Ace Hashimoto (日本) / ALYSA (日本) / AVOKID (韓国) / Benny Sings (オランダ) / EL CAPITXN (韓国) / ESME MORI (日本) / Helge Moen (ノルウェー) / her0ism (米国/日本) / Johnson (マレーシア) / Kwon Beats (韓国) / Lil’Yukichi (日本) / Maesu (米国) / Marcello Jonno (日本) / 宅見将典・Masa Takumi (日本) / me-mai (日本) / MONJOE (日本) / Ryuji Yokoi (日本) / Seann Bowe (日本) / sheidA (日本) 計19名

【参加アーティスト】(アルファベット順)
Furui Riho(日本) / Gabi Hartmann(フランス) / Rol3ert(日本) / 乃紫(日本) / Slot Machine(タイ) / SKY HI(BMSG)(日本) / ☆Taku Takahashi(m-flo)(日本) / 山本大斗(日本) / Wez Atlas(日本) 計9名

【公式SNS】
公式X:https://x.com/songbridgecamp
公式Instagram:https://www.instagram.com/songbridgecamp/
公式Facebook:https://www.facebook.com/songbridgecamp/

【CEIPA×TOYOTA GROUP "MUSIC WAY PROJECT"とは】


コロナ禍によるライフスタイルの変化や、ストリーミングビジネスの伸長により、エンタテインメントコンテンツの市場規模は拡大しています。また、日本文化の存在感も国際的に注目されつつあります。
これらが世界中の人々を熱狂させ始めている今、日本のコンテンツをもっと世界に発信すべく、日本音楽の未来を切り開いていく若者たちが進む「道」を共創し、本質的な日本音楽のグローバル化・持続的な成長を推進する。それが「MUSIC WAY PROJECT」です。
「日本の音楽が世界をドライブする」を合言葉に、若き才能がさらに活躍する場を提供してまいります。

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