UNFAIR RULE「ここまで連れてきてくれてありがとう」 ツアーファイナルで約束した“誰も置いていかない”未来

 UNFAIR RULEのワンマンライブツアー『ずるい約束 -ONEMAN LIVE-』が5月11日に東京・Spotify O-WESTにてファイナルを迎えた。3月5日リリースの配信シングル「ずるい約束」のタイトルを冠し、同日より全国を巡ってきた本ツアー。初日の愛知公演にて長らくバンドのサポートメンバーを務めてきた悠瑞奈(Ba/Cho)の正式加入が発表され、約2カ月間にわたって山本珠羽(Vo/Gt)、杉田崇(Dr/Cho)との磐石のアンサンブルをさらに強固なものへと磨きあげてきた。

 ワンマンライブとしては自身最大規模となる会場には多数のファンが詰めかけ、フロアは立錐の余地もないすし詰め状態。開演時刻間際に来場した観客が居場所の確保に難儀するほどの盛況となった。期待感に満ちた異様な熱気が空間を支配する中、定刻を少し回ったところで客電が落とされ、ステージが夕景を想起させるオレンジ色に染まる。するとメインスピーカーから唱歌「にじ」ののどかなパストラルサウンドが大音量で轟き、舞台袖から山本、杉田、悠瑞奈がゆっくりと姿を現した。

山本珠羽(Vo/Gt)

 3人は満員の客席を満足そうに見渡しながら誇らしげにタオルを掲げ、手を振り、笑顔を振りまく。大きな拍手と歓声で迎え入れるオーディエンスたちを尻目に山本がジャズマスターを、悠瑞奈がジャズベースを構え、杉田の鎮座するドラムセット前に集結して円陣を形成。3人はいくつか言葉を交わしたのちに散開し、おもむろに山本がたおやかなコードストロークとともに〈「また2人でご飯に行こう」「いつもの散歩をしよう」〉と切実な歌声を響かせ始めた。次いでドライブペダルを踏み込んで歪ませたギターをザクザクかき鳴らすと、アグレッシブなベースラインと躍動的なドラムビートがこれに追従する。疾走するメロコアチューン「君にさよならを言わない」が、ライブの幕開けを高らかに告げた。

杉田崇(Dr/Cho)
悠瑞奈(Ba/Cho)

 たちまち会場の熱気はロケットエンジンばりの加速度で急上昇を開始。オーディエンスたちは前のめりに体を激しく揺らし、高らかに拳を突き上げ、感極まったように叫声を上げる。実直で飾り気のないむき出しのスリーピースサウンドと山本のややハスキーながら透明度の高い歌声が渾然となったエモーショナルかつプリミティブなグルーヴがフロアの空気を絶え間なく大きくうねらせ、曲目を重ねるごとに聴衆のボルテージを際限なく押し上げ続けた。山本は1曲ごとにカポタストのポジションを変えながら、楽曲に込めた思いや意図を怒号のごとく訴えかけながら歌を届け、内包されるメッセージを1ミクロンたりとも余すところなく伝え切るのだと言わんばかりの構え。悠瑞奈と杉田はそんな山本の一本気な姿勢を菩薩のような微笑とともに温かく見守りつつ、時にはコーラスワークを交えて着実に歌世界を下支えし、また時には援護射撃よろしく観客を煽り、三位一体となってエネルギッシュかつエキサイティングな空間を形成していった。

 ライブ中盤からは山本がテレキャスターに持ち替え、ミディアムチューンやメロウなナンバーも織り交ぜながら進行。サイケデリックなベースラインが耳を引く「曖昧」、シューゲイザーさながらの轟音パートが鮮烈な最新曲「言葉に恋する君が」、オルタナムードに満ちた開放弦リフが炸裂する「消しゴム」など、ミニマルな編成ならではの工夫を凝らした多彩なアンサンブルが畳みかけられていく。そしてステージが終盤に差しかかると、山本が再びジャズマスターを抱えて「今日も私は歌でみんなに寄り添えたかな? これからも歌で、イヤホンの中で、ライブで、みんなに寄り添えたらいいなと思ってます」とオーディエンスに語りかけ、バンドは怒涛のラストスパートを開始。「こんな日には」「ラストソング」「バーカ!」「かわいこちゃん」とアグレッシブな高速エイトビートナンバー群が容赦なく連発され、フロアではシンガロングやクラウドサーフが次々に発生した。

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