WEST.、音楽への飽くなき好奇心と7人の情熱が織りなすエンタメ “僕らの歌”が紡いだかけがえのない瞬間

 現在、全国アリーナツアー『WEST. LIVE TOUR 2025 A.H.O. -Audio Hang Out-』を開催中のWEST.。9都市28公演を周るこのツアーは、計28万7500名を動員する大規模ツアーであり、横浜アリーナ公演は、5月2日、3日、5日、6日の4日間で計5公演が行われた。本稿では、5月2日の横浜アリーナ公演1日目の模様をレポートしていく。いくつかの象徴的な楽曲について曲名を挙げながらレポートしていくので、これからツアーに参加する方はご注意を。

 今回のツアーの要となっているのが、3月12日にリリースした、彼らにとってデビュー11年目にして11枚目のフルアルバム『A.H.O. -Audio Hang Out-』の多彩で多様な収録曲たち。アルバムのタイトルには、「AHOになって“Audio Hang Out(音で遊ぶ)”する」という想いが込められていて、自分たちの表現の幅を広げていく、または表現の深さを突き詰めていく--この2つのベクトル、言うなれば、2つの遊び方を内包した作品になっている。それぞれの曲の中で、7人がこれまで以上に、音楽的な好奇心や探究心、遊び心を遺憾無く爆発させている必然として、同作を携えて行われた今回のツアーは、かつてないほどに大きな振り幅を誇るライブエンターテインメントになっている。クールな曲、セクシーな曲、キュートな曲、そして、トンチキな曲。これまで以上に多様で多彩なセットリストを通して浮かび上がる7人の多面的な魅力から、最初から最後まで目を離すことができない。

 今回のツアーで特に鮮烈な存在感を放っているのが、アルバム表題曲「A.H.O.」である。1曲の中で多彩なジャンルを不敵に往来していくカオティックなミクスチャーナンバーで、アイドルとしての矜持を大切にしながら、どこまで音楽的に大胆に遊ぶことができるか、というテーマに果敢に挑戦した最新アルバムを最も色濃く体現した楽曲。バンドメンバーの生演奏を推進力にして、また、大量の炎や火花に彩られながら、「AHOになって“Audio Hang Out(音で遊ぶ)”する」7人。ジェットコースターのように目まぐるしい展開の中で炸裂する彼らの爆発的なエネルギーに、何度も圧倒されてしまった。

 また、最新アルバムには、グループにとって初めての試みとして、音楽的嗜好がそれぞれ異なる一人ひとりのメンバーが制作に携わった楽曲が1曲ずつ収録されていて、その7曲こそが、アルバムにおける表現のバラエティの豊かさ、また、深さを司る重要な役割を果たしている。もちろん今回のツアーにおいても、それらの多様な楽曲が随所で重要な役割を果たしている。

 その1つが、重岡大毅が書き下ろした快活でストレートなロックナンバー「それいけベストフレンド!」。同曲のレコーディングにおいて、重岡はブルースハープの演奏を自身で担当しており、今回のツアーにおいては、彼が高らかに奏でる情熱的な調べを堪能することができる。言葉では表し切れないエモーションの昂りをありのまま伝え抜いていく渾身のパフォーマンス、あまりにも熱烈だ。

 WEST.の音楽的挑戦を牽引し続けている神山智洋が制作に携わったヒップホップナンバー「WESTraight」も圧巻だった。音源は、一つひとつのヴァースのフロウに明確なこだわりを感じさせる仕上がりになっていて、ライブにおいては七者七様とも言うべき各々のフロウに滲む一人ひとりの熱きバイブスがダイレクトに伝わってくる。各メンバーが会場全体を力強く闊歩しながらヴァースを蹴り合っていく展開を受け、客席から並々ならぬ熱狂が生まれていて、また、神山の超高速ラップを受けて飛び交った歓声の大きさは特に凄まじかった。

 濵田崇裕が制作に携わった「Rainy Rhapsody」も、特に忘れがたい一幕となった。今回のツアーには、恒例のアコースティックコーナーが設けられていて、この曲はその一環として披露された。重岡がピアノ、中間淳太がグロッケンシュピール(鉄琴)、桐山照史がパーカッション(カホン)、濵田と神山がアコースティックギター、藤井流星がタンバリン、小瀧望がシェイカーを演奏。カジュアルで、ピースフルなムードの中、随所で豊かなコーラスワークを挟みながら、儚く切ない恋心を丁寧に送り届けてゆく展開に、深く惹き込まれる。

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