山内惠介を象徴する“必聴の10曲” 類稀なボーカル表現で演歌から幅を広げてきた25年の歩み

山内惠介を象徴する“必聴の10曲”

 2025年4月にデビュー25周年を迎えた演歌界の貴公子・山内惠介のミュージックビデオを特集する60分番組『山内惠介特集 ベストヒット演歌』が、5月9日19時より「スカパー!歌謡ポップスチャンネル」にて放送される。デビュー曲「霧情」から最新曲「北の断崖」までの主要なシングル表題曲を網羅し、山内本人が撮影時の思い出を語るシーンも挟まれる、ファン必見の内容だ。

 この機会に改めて山内惠介という不世出のシンガーが持つ魅力に迫るべく、本番組でも特集される代表的な10曲をピックアップして以下に解説する。長年のファンには彼の25年間を振り返る際の一助として、はたまた「『NHK紅白歌合戦』などで存在はよく知ってるけど、そういえばちゃんと歌を聴いたことなかったな」という方には入門のきっかけとして、そしてもちろん番組の副読本として、それぞれご活用いただけたら幸いである。

「霧情」

 山内が17歳のときに「ぼくはエンカな高校生」のキャッチコピーとともに華々しく世に放たれた、2001年4月18日リリースの記念すべきデビュー曲。作曲は山内の師匠・水森英夫、作詞は故・星野哲郎という巨匠コンビが手がけており、その布陣からも期待の大きさが窺える。セールス面では成功を収めたとは言いがたいものの、幼少期から美空ひばりに憧れて演歌歌手を志してきた山内を夢のスタートラインに立たせた重要な1曲である。その歌声は今聴くとやはり初々しさが際立つ一方、10代の新人歌手らしからぬ巧みな節回しと非凡な情感表現には、才能の片鱗を存分に感じ取ることができる。

山内惠介「霧情」Music Video

「流氷鳴き」

 2005年1月19日リリースの5thシングル曲。福岡県出身ながら活動初期より何かと北海道に縁のあった山内が、オホーツク海の雄大な自然を歌ったダイナミックな1曲だ。のちに北海道エリアでのブレイクを経て全国区へと羽ばたいていった彼のキャリアを暗示するような楽曲とも言え、ファンからの人気も高い。勇ましいトランペットに導かれて始まる3連リズムや、ヘヴィメタルばりに深く歪んだディストーションギターで奏でられるリードフレーズは、まさに演歌の醍醐味を凝縮したようなイントロ。サビで挟まれるゴリっとしたスラップベースも心憎いアクセントだ。

山内惠介「流氷鳴き」Music Video

「恋する街角」

 2008年10月1日リリースの8thシングル。タイトルからも推察できる通りポップス色を強めた意欲作で、朗々とした明るい曲調が幅広い層に受け入れられた。コンサートでは盛大な「惠ちゃん!」コールが会場を一体にする光景が定番化しており、セットリストに欠かせない1曲としてファンに愛され続けている。ジャジーなムードの軽快なビート、短調ながら陽気に響くリズミカルなメロディラインなど、伝統的な歌謡ポップステイストにあふれ、日本人なら誰もが心躍らずにはいられない要素が満載だ。歌声を聴くだけでにこやかに歌う山内のえびす顔までもが容易に想起される、表情豊かなボーカルも特筆に値する。

山内惠介「恋する街角」Music Video

「風蓮湖」

 2009年9月23日リリースの9thシングル。ビジュアルイメージを一新して臨んだ本楽曲は、オリコン週間シングルランキングに50週連続でランクインするロングヒットを記録。デビュー以来セールス面で苦戦を強いられてきた山内にとって、ひとつの転機となった1曲である。悠然たるストリングスやブラス、寂しげなギターやフルートなどのオーガニックサウンドが混然となって北海道・風蓮湖の風景を鮮やかに描き出し、山内の堂々たる伸びやかな発声がその輪郭を際立たせていく。彼の演歌スタイルのひとつの到達点がここにあると見ていいだろう。北海道エリアでの人気を決定づけた、彼のキャリアを代表する曲のひとつ。

山内惠介「風蓮湖」Music Video

「スポットライト」

 2015年2月18日リリースの15thシングル。念願の『NHK紅白歌合戦』初出場を果たした際に歌唱された楽曲であり、山内本人にもファンにとっても特別な意味合いを持つ。レンジの広いメロディラインが特徴的な1曲で、高音から低音までを自由自在に美しく響かせる山内の確かな発声スキルを余すところなく堪能できるほか、やや過剰なまでにコブシを強調する山内流の“濃い味スタイル”が完成の域に達していることも見て取れる。そんなエモーショナルなボーカルとは対照的に、バックトラックはやや抑えめな音作り。それによって、山内の巧みな情感表現がより際立つ構図となっている。

山内惠介「スポットライト」Music Video

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