クラシックからポップスまでほぼ全ジャンルを網羅しているのが強み（桶家）

ーーたしかに、ショート動画でもしっかり作品に興味が持てるようなものが多いような気がします。音楽だと、矢野さんの「楽譜アキネイター」シリーズもヒットコンテンツですよね。

桶家：ひたすら彼がすごいですよね（笑）。基本的に僕が問題を作っているんですけど、こんなに言い当てられすぎるとすごすぎて、「どこまで曲を覚えているんだろう？」って思います。編成や拍子、テンポだけで当てるようにしてるみたいです。

ーーそれはどうしてですか？

桶家：「ポリシー」って言ってました。やっぱそっちのほうがかっこいいじゃないですか。

ーー（笑）。音楽系の動画でいうと、そういったクイズ系の動画以外にも「勘冴えて悔しいわ」（ずっと真夜中でいいのに。）、「走れSAKAMOTO」（Vaundy）というようなカバー動画も好評だと思います。

桶家：アレンジを含めてあそこまでできるのって、僕たちしかいないと思うんですよ。『アートゥーン！』はクリエイター集団のような側面もあるので、ああいう動画は続けていきたいと思います。僕たち音楽メンバーは、僕らだけでクラシックからポップスまでほぼ全ジャンルを網羅しているのが強みだと思います。だから、楽曲を「こういう感じでやってみたい」と思った時に専門知識と技術を持った人が作り上げられるし、そこからジャンルをミックスすることもできる。しかも、それがハイクオリティでできるというのは『アートゥーン！』ならではかなと思います。エンジニアの池田も最強なので。

真田：彼は立体音響の技術が学生の中でも群を抜いていて、将来日本を背負うであろう音響技師でもあるので、彼が味方にいるというのは強いですよね。

桶家：やっぱり音源の質感が全然違うと思います。

ーー今のところカバー動画はショート動画のみですが、後々横動画になったりするのでしょうか。

桶家：そうですね。期待してもらえればと思います。

音楽と美術を同時に発信するから『アートゥーン！』は“最強”

ーー音楽と美術を同じチャンネルで発信することについて、動画で桶家さんが「最強だからです」と理由を話していたのも印象的でした。

真田：僕は画家なので、美術の世界でいろいろな感動に出会いました。同時に東京藝術大学に入って音楽をやっている友達も増えて、そこで「そんなことできるんだ」という感動もたくさんありました。そういう感動を見せるためには美術と音楽を分け隔て無く出すのが一番良いだろうというのは、最初からずっと考えています。僕らにもそれぞれ専門性はあるけれど、例えば芸術に興味を持ってもらうきっかけとしてYouTubeチャンネルがあるとするなら、そのなかにもいろんなジャンルがあったほうが良いと思うんですよね。一つのチャンネルからたくさんの選択肢を発信できたら“最強”だなと思っています。

林：僕はデザインが専門ですけど、美術と音楽が（ジャンルとして）明確に分かれているほうが違和感があるというか。日常を見渡して「ここまでがデザインだよね」「ここからはアートだよね」というような線引きって、あまりないことが多いですよね。それと同じように、「音楽の仕事はここまで」「美術の仕事はここまで」と明言できる人って意外といないんだと思います。だから、「分けないといけない」というのがそもそも固定概念なんじゃないかなって。僕が『アートゥーン！』に入った時にはすでにこの形だったけど、美術と音楽を分けてないのが良いなと思って入ったという部分もあります。

桶家：リスナー側になった時に、やっぱり五感を刺激されるっていうのが一番良くて。視覚だけじゃなくて、聴覚もだし、音楽は空気の振動だから触覚も刺激できる。『アートゥーン！』がダイレクトに届けられないのって、味覚くらいなんですよね。だから、あらゆる五感を刺激できるという意味で“最強”なんじゃないかなというのは思います。

林：味覚でいうと、この前のバレンタインではチョコも作ったし。

桶家：たしかに（笑）。じゃあもう全部ですね。YouTubeというプラットフォームである以上、視覚が強いような感じがしますが、映像は総合芸術でもあって、目で見るだけじゃなくて、耳で聞くっていう多様な要素が絡まり合って一つのコンテンツとして存在しているんです。だから、どっちかに絞る必要はないし、音楽と美術をまとめて良いコンテンツとして届けることができるんじゃないかなと思います。僕は美術の素人だし、逆に美術メンバーは音楽を僕らほど知らないから、お互いの作業を見ていて素の反応ができるんですよね。それがある意味では視聴者の視点になっているのかもしれないです。

真田：（美術に関しては）僕たちのほうが若干知見はあるけど、それでもわからない部分はたくさんあるから、撮影しながら「それ何？」って聞けると、編集じゃなくて本人の口から解説が聞けるような動画になるんですよね。それが面白いと思います。