L'Arc-en-Cielの根底にある“美”の正体 識者3名がモンスターバンドの魅力を語り尽くす

 L'Arc-en-Cielが今年1月に東京ドーム公演『L'Arc-en-Ciel LIVE 2025 hyde BIRTHDAY CELEBRATION -hyde誕生祭-』を開催。その模様が、4月29日よりWOWOWにて独占放送&配信が開始され、5月13日にはリピート放送も予定されている。

 同公演は、L'Arc-en-Cielにとって初のメンバー誕生祭ライヴ。さらに主賓であるhydeが公演のプロデュースを担当し、当日のセットリストや演出内容においても、バンドのキャリアにおいても、極めて稀有なライヴとなった。

 本稿ではL'Arc-en-Cielに取材をした経験を持つ音楽ライターである東條祥恵、大前多恵、後藤寛子の3名による鼎談をお届けする。『L'Arc-en-Ciel LIVE 2025 hyde BIRTHDAY CELEBRATION -hyde誕生祭-』を見た上でのポイント解説はもちろん、L'Arc-en-Cielの魅力、30年以上も愛され続けるすごさについて語り合ってもらった。(編集部)

バンドの未来を提示する、挑戦的な東京ドーム公演

ーー今回“hyde誕生祭”ということで、L'Arc-en-Cielとして初めてメンバーの誕生日にフォーカスしたライヴが行われました。このコンセプトに対して、まずはどんな印象を受けましたか?

大前多恵(以下、大前):hydeさんがライヴ前のインタビューで、GLAYのメンバープロデュース ライヴに刺激を受けたとおっしゃっていましたよね(※1)。GLAYはそのような企画が成り立ってもL'Arc-en-Cielはそれをしないというのがバンドのカラーとも言えましたが、「今後メンバーがそれぞれやってもいいかなぁと思いつつの企画です」と語っていたので、hydeさんの中にメンバーの個性をもっと出していきたいという気持ちがあって、まずは先陣を切ったのかなと思いました。なので、自分のことを祝ってほしいというだけではなく、バンドの今後を考えたテーマ設定だったのかなというのが第一印象です。

後藤寛子(以下、後藤):L'Arc-en-Cielはこれまで様々なコンセプトのライヴに挑戦していますが、メンバーの誕生日を祝うコンセプトのライヴは今までありそうでなかったので、その切り札を切ったんだなと思いました。L'Arc-en-Cielは4人が横並びに立っていて、誰か一人が中心になるということはあえてやらないバンドだったと思うんですよ。その中でhydeさんが大きな一歩を踏み出した印象を受けました。ライヴの本数が決して多くない中、いわゆるベスト盤的セットリストから脱却したかったのかもしれないなという勝手なイメージもありますね。

東條祥恵(以下、東條):それをhydeさんがあえて自ら先陣をきってやることで、こういうL'Arc-en-Cielもありという前例を作ったんじゃないですかね。

hyde
tetsuya
ken
yukihiro

ーー今回のライヴはhydeプロデュースということでしたが、彼のプロデューサーとしての手腕についてはどう思いますか?

後藤:昔から圧倒的に素晴らしいプロデュース力を持っている方だと思います。元々すごくプロデューサー気質ですよね。

東條:自身のソロ活動もプロデュースしているし、L'Arc-en-Cielにも彼ならではのエッセンスを入れることに卓越しているので、そういう視点で物事をクリエイトしていく才能は抜群にありますよね。

大前:自分やバンドがどう見られるかという客観的な視点を持っていて、自身の美意識にもとづいて作っていく人ですよね。今回のバースデー ライヴも、ケーキすら出てこなかったじゃないですか。お祭りというよりは曲の構成によって見せたい世界というのがしっかり構築されていて、それを崩さない美しいライヴだったと思います。yukihiroさんが花束をドラム台に置くといった盛り上がる場面やエンターテインメント性がありながらも、芸術性をしっかり軸に置くというのがhydeさんらしいなと。

東條:やっぱりhydeさんの美意識は芸術性ですよね。芸術性を高めながらも、その世界観を楽しませて、必ずキャッチーでポップなところは忘れない。「え、こんなこともやっちゃうの?」みたいないい意味でアンバランスな感じがhydeさんらしいですよね。

後藤:開演前の演出やアンコール待ちのウェーブに至るまで目配せしていて、会場に入った瞬間から出る瞬間までトータル プロデュースしている感じもありました。また、自分が目立つために周りを整えるのではなく、周りを整えて世界観を作った上で、自分が登場人物となって最大のパフォーマンスをするという角度の美意識もあると思います。

 今回のライヴで言えば、クラッカーを観客が一斉に鳴らす場面がありましたが、その流れもすごくhydeさんらしかったですよね。もっとお遊びっぽくしてもいいはずなのに、自分で指揮を執ってお客さんに練習の場を設けて、理想のタイミングで鳴らすという完璧主義っぷり。

東條:しかも伴奏がオーケストラという豪華さ(笑)。オーケストラに「ハッピー バースデー トゥー ユー」の歌を乗せる。それがhydeさんの中では美しかったんだと思います。

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