Leina、期待のハードルを悠々と越えていく シンガーソングライターの枠に囚われない才能と好奇心
Leinaのワンマンライブを初めて観た。昨年の『SUMMER SONIC 2024』や今年の『JAPAN JAM 2025』『GREENROOM FESTIVAL 20th Anniversary』といった大型フェスに名を連ね、SNSでのトレンド、バイラルチャートでのヒットからアジア各国でも広がりを見せていることは見聞きしていたのだが、実際に目の当たりにするとやはり印象は変わる。ライブ現場にはネットや生成AIに聞いても分からない、最先端の今が詰まっていることを痛感させられた。
3月28日にKT Zepp Yokohamaにて開催された『J-WAVE presents Leina Live Tour 2024-2025 "愛の産声、哀の鳴き声"』。昨年11月からスタートした韓国単独公演を含む、全11公演のツアーファイナルであり、Leinaにとっては初のZepp公演にして、誕生日翌日の20歳になって初めてのステージというメモリアル尽くしのライブだった。およそ2時間にわたる、アンコールを含む全17曲+αでLeinaが示したのは、スマホの画面越しでは伝わらない実体を伴うパフォーマンス。バックバンドを基本スタイルにして、アコースティックギターの弾き語り、エレキギターの演奏、ドラムソロ、バックダンサーとのフォーメーションダンス、即興ソング、とシンガーソングライターという枠に囚われない、才能と好奇心の塊であり、さらなる伸びしろを感じさせるところが末恐ろしい。
筆者が特に心を掴まれたのは「君が死にたいっていうなら-acoustic ver.」だった。ステージ上にベッドを用意し“Leinaの部屋”を再現してのアコギでの弾き語り。「Leinaが救われた音楽のように、この歌があなたにとってもお守りになってくれたら。もしも泣く夜があるなら、一緒にその夜を乗り越えていけたら」と語りかけ、16歳の時に部屋で一人で作った楽曲を、夢だったZeppのステージから目の前にいるLeiny(Leinaファンの呼称)へと届けていく。2Aパートにある〈君が明日を恐れるなら 何もしなくていいさ 何十年残ってる人生 何年か無駄にしても大丈夫だから〉という歌詞は、当時生きづらさを抱えていた弟に、父が投げかけた言葉だ。開演前、会場BGMとしてLeinaのルーツにある曲、現在好きな楽曲が流れていたが、その中の1曲に中島美嘉「僕が死のうと思ったのは」があった。かつて、Leinaが音楽に救われたように、今度はLeinaの楽曲がLeinyの心に“タッチ”する形で寄り添っている。
また会場BGMとして流れていた曲の中にはBillie Eilish「SKINNY」もあった。確かに楽曲の世界観やボーカルには通ずるポイントがあり、彼女の特徴的なハスキーボイスはその一つだ。ただ、ライブ全体を観ていて感じるのは、彼女の発声の仕方がミックスボイスにあること。中でも「君が死にたいって言うなら」のラストでは、高音域に達するホイッスルボイスに近いレベルまで達していく。端的に言って、めちゃくちゃ歌が上手い。それは優里とのコラボセッションの動画を観ても一目瞭然だろう。例えば、彼女の代表曲にある「どうでもいい話がしたい」。サビでは〈愛しすぎぐらいがちょうどいい〉のフレーズに始まり、〈いい いい いい いい yeah〉とひたすら「い」の母音で歌い続けている。通常であれば「あ」のような母音が歌いやすいはずで、そこをあえて「い」を選んでいるのは、自身のボーカルの特徴を最大限に活かせるからではないだろうか。地声のままで絶叫していくような歌い方の「Donuts」も驚いた一曲だ。
セットリストは、「未開封の恋」の紗幕越しでの弾き語りに始まり、1stフルアルバム『愛の産声、哀の鳴き声』全曲披露という潔い構成。Leinaがアコギからエレキに持ち替えた「カロリーメイト」ではバンドサウンドを強く感じさせながら、「I don’t need your love.」「食わず嫌い」のようなノリのいいダンスチューンでは自らバックダンサー8人に混ざってダンスシーンを作ってしまうのがLeinaだ。本人は「間違えた~」と嘆いていたが、正直それがどこだったのか分からないほどに、ダンサーとして溶け込んでいた。アンコールでのドラムソロ然り、恒例となっている即興ソングでは「20歳」「初のZepp」といったMCでのワードや曲名を散りばめたヒップホップ的なセンスと頭の回転の速さで挑んでいったりと、もはや怖いもの知らず。次は何が飛び出してくるのだろうという期待のハードルを悠々と越えていってしまうのだから、やはり末恐ろしい。
そんなLeinaのパフォーマンスに呼応するかのように、ファンたちLeinyも熱量を持ってライブを楽しんでいるのが印象的だった。開演前に、紗幕で影絵を作っているところから微笑ましく眺めていたのだが、序盤の「うたたね」、さらに「どうでもいい話がしたい」と、Leinaがマイクを預けたくなるのが理解できるほどに、歌う、歌う、歌う。極め付けは、Zeppオンリーの特別企画としてステージにLeinyを迎えての「君の前だと溶けちゃうの」。“プリンセス”相手にバックハグにキスと、その距離の近さからLeinyをメロメロに。また、最前列にいたファンの名前と同じ誕生日であることを覚えておりグッズを手渡すという一幕もあり、それはSNSのような距離の近さではなく、物理的にも、精神的にも近い、思い思われている関係性であることを伝えている。
ライブの終わりにはリリースが決まっていない新曲「medicine」を披露していた。撮影OK。すでにSNSには多くのライブ動画が上がっており、〈何より一番の薬は君です〉というフレーズと指先を口に持っていく振り付けがキャッチーな楽曲だ。それは同時にアルバム『愛の産声、哀の鳴き声』の次のフェーズに入っていることを表してもいる。『愛の産声、哀の鳴き声』には、その人の色の重なり方は生き様であり、それぞれの個性が尊重される世の中になればいいという祈りが込められている。ライブ全体ではLeinaの衣装がカラフルから真っ白へと変化しており、それはツアーで色を重ねてきたLeinaが、ここからまた新たな一歩を踏み出していくことを示している。今回が今年最後のワンマンライブで、次は来年という驚きの一言もあったが、その頃にはどれだけの色が重ねられているのだろうか、想像がつかない。
■関連リンク
公式X(旧Twitter):https://mobile.twitter.com/doumo_leinadesu
公式Instagram:https://www.instagram.com/doumo_leinadesu/
公式YouTube:https://www.youtube.com/@doumo_leinadesu
公式TikTok:
https://www.tiktok.com/@doumo_leinadesu
公式サイト:
https://lit.link/Leina