Aqua Timez、Official髭男dismらが繋いできた“バンド×ピアノ”の方程式 新たなサウンドを奏でるJIJIMが貫く普遍性
この20年ほどのJ-POPシーンを振り返ると、ピアノやキーボードを担当するメンバーが在籍するバンドが数多く躍進していることに気づく。たとえば、2000年代にはAqua Timezが、2010年代にはSEKAI NO OWARI、sumika、Official髭男dism、Mrs. GREEN APPLE、緑黄色社会などが鮮やかなデビューを飾り、ピアノの音色にもフィーチャーしたバンド楽曲を次々とヒットさせてきた。バンドという形態ではないが、YOASOBIや藤井 風も同じようにカテゴライズでき、ヨルシカ、ずっと真夜中でいいのに。をはじめ、ピアノサウンドが存在感を放つ楽曲を次々とヒットさせているアーティストは非常に多い。
ここで挙げたそれぞれのバンド/アーティストの躍進の理由はさまざまだが、各楽曲において共通しているのは、バンドサウンドのなかで埋もれることのないピアノの澄み切った清廉な調べがフィーチャーされていること。日本人の音楽観に依拠する話にはなるが、J-POPシーンにおいては、歌のメロディの美しさや親しみやすさが重要な要素をつかさどる。ピアノは、和音(コード)を鳴らしながら同時にメロディを奏でることができる楽器であり、なおかつ、バンドサウンドと分離して響くという特性もある。ピアノは、歌とともに各曲のテーマとなる象徴的なメロディ、サウンドとしての役割を果たすことが多く、J-POPの楽曲が広く受け入れられ、長く親しまれている理由と分かちがたく結び付いていると思う。ピアノをフィーチャーした楽曲が広く求められているのはそれより前の年代においても同じで、遡っていくと、日本のポップミュージック史における“ピアノ×バンドサウンド”の系譜が浮かび上がってくるのだ。
その系譜に連なりつつ、この令和時代におけるポップミュージックの最新形を体現するバンドがJIJIMであり、新曲「スタンドバイユー」がまさにそれである。
JIJIMは、コロナ禍に結成された6人編成のバンド。2024年の7月以降、自主レーベル Kilim recordより精力的に楽曲をリリースし続けている。バンドのソングライターであるシンジュ(Vo)は、自身の音楽性に影響を与えたアーティストとして、ノラ・ジョーンズやジャミロクワイなどの海外アーティストから、大橋トリオや星野源、Nulbarichなどを挙げており、JIJIMのバラエティに富む各楽曲には、それらのアーティストからの多彩な影響が節々に滲んでいる。そして、ヒトカ(Key)が奏でるピアノサウンドもひとつのバンドの大きな武器である。シンジュが描く楽曲ビジョンを的確に汲み取り、バンドアンサンブルに彩りや深み、奥行きを与える重要な役割を担っているとも言えるだろう。シンジュの歌とバンドアンサンブルの呼応するように、それぞれの楽曲の随所でヒトカのメロディアスなプレイが光っている点も大切なポイントだと思う。