清水美依紗、映画『ウィキッド ふたりの魔女』で叶えた夢と等身大で歌う新曲「花占い」 多忙な日々を語る
ボーカル的にも心情的にも、等身大の自分で私らしく歌えたんじゃないかな
――そのように多忙を極めるなかで、新曲「花占い」が完成しました。一体いつ楽曲制作をしてるんだろうか、という感じもしますが。
清水:(笑)。「花占い」はテレビドラマ『霧尾ファンクラブ』のオープニングとして、清水楽曲ではおなじみのMitsu.JさんとSHOWさんに書き下ろしていただきました。
――ドラマの内容としては、霧尾くんという男子生徒に想いを寄せる親友同士の女子高生ふたりが繰り広げる“推し活”の様子をコミカルに描くものとなっています。それに対して、楽曲のムードはかなりシリアスですよね。
清水:そうなんです。「こういう切り口できたか!」と、いい意味のギャップを感じました。歌詞のなかにはひとつも学生感のあるフレーズはないですし。
――たしかに(笑)。
清水:ドラマの主人公ふたりは、霧尾くんを巡ってかなりぶっ飛んだ発言をし合うんですけど、ああいう学生時代特有のテンション感ってあるんですよね。同じ人を好きなことがお互いにわかっているからこそ、心のなかでは絶対に何か思うところがあるはずなんですけど、あえてふざけ合って楽しんでいるという。その感じが「すごく青春だな」と感じました。「花占い」は、そんな彼女たちを、少し年齢を重ねた大人の目線から見つめるような楽曲なんです。過去に散っていった花びらを思い浮かべながら歌うイメージで、レコーディングに臨みました。
――原作マンガを読む限りでは、『霧尾ファンクラブ』は基本的にだいぶコメディではあると思うんですけど、でもそれだけじゃなくて、実は繊細な心の動きもしっかり描かれる作品ですよね。「花占い」は、思いきってその側面にフォーカスした楽曲なのかなと感じました。
清水:ああ、嬉しいです。まさにおっしゃるとおりで、Mitsu.JさんとSHOWさんのそういう着眼点はすごいなと思いました。前回の「Finale」、その前の「TipTap」(フジテレビ系連続ドラマ『全領域異常解決室』OPテーマ)もドラマ主題歌としておふたりに書いていただいたものですけど、このふたつは作品にストレートに寄り添う楽曲だったんです。それに対して、今回は一瞬「ん?」と考えるような曲になっていて。でも、聴けば聴くほど、歌詞を読み込めば読み込むほど、噛めば噛むほど、味が出るというか。
――逆にコメディ要素が引き立つ作用もありそうですしね。
清水:はい。前の2曲は作品の世界観やキャラクターの心情に入り込んで歌うような、お芝居に近いアプローチだったんですけど、今回はもっとナチュラルに“自分”として歌いました。ボーカル的にも心情的にも、等身大の自分で私らしく歌えたんじゃないかなと思います。レコーディングもすごく楽しかったですね。
――今「等身大で歌えた」というお話がありましたが、実際に聴かせていただいてまず感じたのが、まさに生々しさでした。特にそれを感じたのがブレスの使い方で、これまで以上にブレスを“音”として使っている印象が強かったです。
清水:あまり意識してはいなかったんですけど、たしかに「ブレスのタイミングが拍子とずっと合致しているな」という感覚は歌っていてもありました。ブレスの音って、通常はミックスの段階で消すことも多いんですけど、今回は表現のひとつとして成立しているので、あえて残しているのかな。
――なるほど。あれが意識的じゃなかったというのは逆に興味深いですね。
清水:ナチュラルさを出せた要因としては、キーを上げたことがいちばん大きかったのかなと私は思っていて。この曲、もともとのデモではキーがひとつ低かったんですよ。
――ああ、そうなんですね。
清水:プリプロの段階でキーをひとつ上げるかという話が出て、実際にキー上げで歌ってみたら全体の音域が喋る時のレンジに近づいた感覚があって。意識せずともナチュラルに歌えるということに気づけたので、今の高さで歌うことにしたんです。それによって儚さが増したというか、声の明度や透明度が曲のイメージとぴったり合った感じがしました。年齢的には大人になったけど、精神的には大人になり切れていない自分自身をナチュラルに投影できて、すごくいい声が生まれたなって。
――たしかに、曲ってキーが半音変わるだけで全然別モノになりますもんね。
清水:そうですよね。そんな過程があって、タイトなスケジュールのなかでもしっかりと時間をかけて話し合いながら、ベストなものを探っていく制作ができました。またひとつ、宝箱に宝物が増えましたね。
――宝箱の容量が心配になってくる勢いですね。
清水:どんどん宝物で埋まっていってる(笑)。
――(笑)。サビの〈ひらひらひら〉の表現には、個人的にすごく耳を奪われました。全体的に息遣いが印象的な一曲ということもあって、息の量多めで歌われるこの部分が「必殺技が決まった!」という感じがしたというか。
清水:必殺技(笑)! ここはやっぱり花びらが散っていく感じをいちばんに出せるパートなので、それを声でどう表現しようかなと考えて。花びらが舞う時って、ゆっくりになったり ,速くなったりするじゃないですか。その様子をイメージしながら、ウィスパー気味ではあるんですけど、音としては明瞭に「ひっらー! ひっらー!」という感じで一音一音強調することを心がけました。
――だから表現としては儚いんだけど、意外にリズムは強いという。
清水:そうなんです! 意外にちゃんと強い。この曲のリズムって、ずっと縦ノリなんです。私はベースが横ノリの人間なので、縦ノリの曲を普通に歌うとどうしても(拍を取るのが)遅れちゃうんですよ。そこを合わせるのがすごく難しかったです。この縦ノリのリズムを体に染み込ませるまでには、ちょっと時間がかかりましたね。
――言われてみれば、たしかにボーカルのグルーヴ感が独特だなとは感じました。
清水:Mitsuさんは歌メロのリズムや旋律の振れ幅などを複雑に構築する方なので、歌いこなすのが難しいんです。でも、その“Mitsu節”のおかげで、どんどん歌える曲の幅が広がっている自覚があります。鍛えられていますね。