藤井 風、Vaundy、Official髭男dism、SUPER BEAVER……それぞれの表現で向き合う“生きる”ということ
Official髭男dismの「Chessboard」は、『第90回NHK全国学校音楽コンクール』中学校の部の課題曲として制作された。〈幸せと悲しみの市松模様〉とあるように、良い時も悪い時もある人生をチェスボードに喩えたこの曲では、〈行ける場所 行けない場所 目指すべき場所 知らないままで息をする〉〈このフィールドで今度はどんな事が待ち受けているのだろう?〉といったように、未来への不安が滲み出ている。同じメロディが何度も登場することも繰り返しの日々を表すようだが、少しずつアレンジが変わり、転調やオクターブ上の歌唱も含めて楽曲はドラマチックに展開していく。そして、終盤では〈美しい緑色 こちらには見えているよ〉と歌い、幸せも悲しみもすべて自分を形成するものだと教えてくれるように、未来への希望を灯してくれるのだ。決して中学生だけでなく、さまざまな世代の人がこの楽曲に救われたことだろう。
SUPER BEAVERの「切望」は、昨年リリースのフルアルバム『音楽』のオープニングを飾った1曲。高揚感を誘うドラムとギターに、ベースも加わって重厚感を増すイントロ。疾走するバンドサウンドに、〈人ひとりの幸せに どれだけの人生が/携わっているだろう そんなことを思った〉というボーカルが重なる。SUPER BEAVERの真骨頂とも言えるストレートなロックナンバーであり、曲に込められているのは〈僕は笑顔の 渦を作りたい〉〈ずっと笑顔じゃいられない日々に/ひとつでも多く 大笑いの瞬間を〉という純粋な願いだ。人生は楽しいことばかりじゃないけれど、できるだけ多く笑っていたい。さらには笑顔が伝播していくのが見たい。そんな力強いメッセージと熱のこもった演奏は、聴き手の気持ちを自然と上向きにさせ、同時に、生きるうえで欠かせない人と人との繋がりを教えてくれるようである。
アーティストそれぞれの表現で描かれた“生きる”ということ。その違いも感じながら、楽曲を通して生きる勇気をもらってはいかがだろうか。