三代目JSB 小林直己、40代を迎えた等身大の自分 ダンス、映画、アート、紅茶が積み上げる一つの道
年齢を重ねて考える「もっと本質的なところで纏う空気が美しい人になりたい」
――光が差し込む美しさに関連して、強い光が差し込むカットがあざやかなカットが多くあると思います。今回の写真集は光がテーマである部分もありますか?
小林:「光」はテーマの一つでした。カメラマンのカーティは写真を撮るテーマに合わせた意図を考える方です。写真集にどういうことを求めるのか。被写体にとってシンボルになるものはあるか。そこで僕はこの写真集では「今の素の自分を見せたい。僕自身を感じてほしい」とお伝えすると「それはリビールすること、つまりさらけだす行為なんだね」と。バスタブのカットについては「水というものに何か感じるものがある」と話すと「あなたにとって水は聖なるものなのかもしれない。それに触れることで浄化され、それを写すことであなたは新しい自分になるのかもしれないね」と。作品テーマの解像度を高めていただいて、ニューヨークでの撮影を決めて本当によかったなと思います。
今回の写真集は2人のカメラマンに撮影していただきました。色合いはそれぞれの美しい技が光ります。カーティーさんのカラーリングはアナログの工程で、コダックのフィルムに近づけるようなイメージで調整されていました。もうお一方は、できるだけテーマ性を浮き上がらせるために、クリーンに仕上げたカラーリングをしていただきました。僕自身でも見たことがない素の顔や表情が多く、新しい自分を発見するような感覚でした。
――発売コメントの結びに「新たな僕を知ってもらえたら嬉しいです」と書いていましたが、小林さんご自身も新しい自分を発見したわけですね。
小林:それはもう本当にそうですね。上がってきた写真を見た時、これまで活動してきた経験や時間が積み重なって見えました。年を重ねるということはもしかするとその時間を作っていくことではないか。これはアートなのかもしれない。そう思うとこれまでの時間が愛おしくなりました。さらにこれから年を重ねていくとどんなものが作れるんだろうとワクワクしました。そういう思いで写真を見返しながら『Art & Age』というタイトルに決めました。写真集の読み手は人間です。人の心に残るものや影響を与えられるものを心がけて作りました。
――40代になった小林さんの物語そのものがビジュアライズされたようです。少なからず映画のストーリーを意識されていたんですか?
小林:特に前半部は、映画のキャラクターを演じている感覚です。名場面を切り取る映画ポスターの連続をイメージしました。その分、中盤は本当に素の自分の内面を切り取ってもらう。従来の写真集というよりは、アートブックを見ているような感覚に近いと思います。
――アートブック的な写真集の被写体になることと映画俳優としてのたたずまいは明確に違うものですか?
小林:今回はまったく違うものでした。『Art & Age』の考えにいたるまでは長い道のりです。三代目 J SOUL BROTHERSとしてデビューして目標にたどり着くためにがむしゃらだった。とにかく走っていた。40代になり、人生の折り返しを感じる中で、限りある時間で何をどう選んで動いていくのか。そう考えて定めた方向性を知ってほしい。それをビジュアルで捉えてほしいというのが今回の企画です。一方、映画でキャラクターを演じるというのは見せ方だと思っています。
――それで思い出したのは、『アースクエイクバード』ロンドン国際映画祭ワールドプレミアで、小林さんが製作総指揮のリドリー・スコット監督から「君は映画に必要な存在感がある」と言われたことです。小林さんが思う「映画に必要な存在感」を言語化するなら?
小林:リドリー・スコット監督と2度目にお会いした時にその激励をいただきました。改めてそれがどういう意味なのか。今回『Art & Age』を経て僕が好きな俳優について思うことは、見せ方として演じてらっしゃるのかもしれませんが、その人の人生や生き方も透けて見える方であることです。若さの勢いで新陳代謝が行われる段階から、もっと本質的なところで纏う空気が美しい人になりたいと僕は思っています。
昔からのキーワードですけれど、美しさというのは、強くてシンプルです。鍛練の結果がそこにあると思っています。そういう空気感を持つ人はたぶん、自然と醸すものがあるのかなと思います。映画はコマ数が少ない分、そういった空気感も捉えるから愛してやまない対象になり得るのかもしれません。
――24コマの間に透けて見えるものということですね。
小林:映画にはさらに自分の人生を投影できる隙間がありますよね。役を見ているようで、自分を写し出して見ているところがある。これは僕自身が観客として思うことでもあります。そうした二重の隙間を感じさせられるだけの(俳優の)器は、経験からくるものなのか。その人の人生からくるものなのか。もしかしたら生まれつきなのかもしれない。いずれにせよそこに人生を並走できるものがある。それが、存在感であり、人生というものが透けてみえることが「映画に必要な存在感」ではないかと考えています。
――『Art & Age』を踏まえて演じてみたい役はありますか?
小林:うーんそうですね……。家族や大切な人と過ごす時間、夫婦や子どもへの愛情、先生と生徒の愛情、バディや親友に対する思い。人間的な繋がりを演じてみたらどうなるんだろうと興味があります。
――人間関係の繋がりそのものを考える役ということですか?
小林:立ち回りがある役でも人間関係からその理由を深掘りできる役があるような気がします。
ポジティブでカジュアルなバースデーソング「ヨンジュウ」は“おかしみの曲”
――『Art & Age』に収録されるソロ曲についても教えてください。タイトルがずばり「ヨンジュウ」であり、サビでは〈もうヨンジュウになりました〉とストレートに歌います。曲調と相まってひたすら愉快で面白かったです。
小林:「ヨンジュウ」はおかしみの曲なので「面白かった」という感想をいただけるのは嬉しいです(笑)。そのおかしみも踏まえて等身大の自分を歌いたいというコンセプトが写真集と連動しています。楽曲クリエイターさんにはとにかく僕が今感じている思いを伝えました。上げていただいた歌詞を読んで「そう!」と刺さってしまいましたね。40代になった今、こんな風に笑顔で答えられているということは、これまで積んで生んできたものがあるからだと思います。年を重ねることが嫌な人もいると思うんです。でも『Art & Age』にも込めたように、積み重なってきたことがArtになり「繋がっていくことは楽しいよね、今の自分も素敵じゃない?」と。年を重ねていくことに対して、ポジティブでカジュアルなバースデーソングになったらいいなと思います。
――応援ソングにもなっている「ヨンジュウ」で興味深かったのは、アメリカンポップスのちょっとしたトレンド感にもなっている通話形式のイントロです。小林さんのアイデアですか?
小林:クリエイターさんからいただいたアイデアです。通話形式のイントロは最初、セリフ(文字)でもらいましたが、アメリカンポップスやR&Bナンバーでよくある通話をここで持ってくるのかと僕もテンションが上がりました。それでいて僕が考えたメロディがカントリーの曲調でアレンジされています。カントリーはライフスタイルミュージックで、ライフステージを歌っていくものですから、等身大のテーマ性が音作りとしてダイレクトに表現されています。
――もう一つサウンド面で印象的なのはギターです。2023年にAbemaTVで放送された『密着36時間 三代目JSBを2日間 自由にさせてみた』では、小林さんがアコースティックギターで「夜空ノムコウ」(SMAP)を披露していました。今回のソロ曲ではギターサウンドがマストだったわけですか?
小林:ギターの音がシンプルに好きですね。弦を鳴らして、木に反響させる。鳴っている時の空気が伝播するし、木自体もエイジングしてくると音が変わります。経年する深みを感じるギターの音と自分のメッセージを自分のスタイルで届けたい気持ちがリンクしました。
――三代目JSBの6度目のドームツアー『三代目 J SOUL BROTHERS PRESENTS “JSB LAND”』では、小林さんのギタープレイが炸裂しました。ギターによってドームに広がる空気を感じていましたか?
小林:僕のようにギター少年だった人間からすると、あれは夢のまた夢です。ドームど真ん中の一番高所で花火を浴びながらギターを弾いたことは、小学生や中学生当時の僕に言っても信じないと思います。毎年目標がある中で、写真集とオリジナル曲が同時に出せるとは思っていませんでしたが、せっかくの一曲ですからこれを届ける場を作りたいなと思って計画している最中です。
――小林さんの熱い眼差しはギターだけでなく、紅茶にも注がれています。CLで配信されている「三代目 J SOUL BROTHERSの休日」では紅茶レッスンを体験していました。
小林:CLの紅茶レッスンは習ってみたいと思っていたので提案させていただきました。ギターを継続して弾きながら、紅茶も好きで飲んでいる。ここ数年、それらをミックスしようと具体的に動き出しているところなのかなと思います。さまざまなタイプの紅茶が飲みたくなる興味関心が広がり、自分の好きな紅茶を辿っていく。静岡の茶園さんにコンタクトを取り、一緒に紅茶を作るまでになりました。それでプロデュースしたのが、昨年発売した「小林直己 produce MATEのいちごキャラメル紅茶」です。
紅茶は誰かのために淹れるのも楽しいですよね。5分くらいの間、茶葉を蒸らす時に「美味しくできたらいいな」と思います。これは人から教わったことですが、何かの会でお茶があれば、用件が済んでも5分か10分は滞留できる。そうすると相手のバックグラウンドを知ることができます。それがコミュニケーションだと思うんです。その時間と誰かを思って淹れる時間とともに紅茶は香りが広がり、空間が包まれる。それが紅茶を好きになった理由です。昨年はファンクラブイベント『三代目 J SOUL BROTHERS OFFICIAL FAN CLUB presents “NKの紅茶PARTY“』を開催しました。おすすめの茶葉を僕が思う美味しい淹れ方でファンの方々に淹れてもらう。6人くらいのテーブル席でお互いに感想を言い合う(笑)。音楽やエンタテインメントの延長でより親しげな相互コミュニケーションを楽しんでいただけました。
――ティーパーティによって、MATE(三代目JSBのファン)の皆さんと共有する空気感を作れるわけですね。
小林:会場で淹れた茶葉は、持って帰って楽しめます。その時間を思い出して今日一日リラックスして明日頑張ろうと思っていただけたら嬉しいです。『Art & Age』では、EXILE TETSUYAがプロデュースするAMAZING COFFEとコラボして、オリジナルスペシャルティードリンクを3月29日から4月20日まで発売させていただくんですよ。ちょうど桜の時期なので桜ティーを考えていますが、興味関心から発展的なこともできるわけです。
――年齢を重ねていく小林さんの活動領域の広がりが楽しみです。昨年のドームツアー『三代目 J SOUL BROTHERS LIVE TOUR 2024 “ECHOES OF DUALITY”』では山下健二郎さんがMCで、自分たちが米寿になっても百寿になってもついてきてくれるかと会場を盛り上げていました。40歳の節目を迎え、88歳、100歳までどんなふうに年齢を重ねていきたいか。5月に開幕する8度目のドームツアー『三代目 J SOUL BROTHERS LIVE TOUR 2025 “KINGDOM”』への意気込みと合わせて教えてください。
小林:『“KINGDOM”』は『“ECHOES OF DUALITY”』からかなり短いスパンで開催しますが、間違いなくエンタテインメントのレベルがステップアップしたライブになると思います。会場でしか起こらないことが巻き起こる、ここでしか見られないライブを是非会場で体感してほしいなと思ってます。米寿、百寿までできるかはわかりませんが(笑)、40代という折り返しから今回考えた思いの流れが『Art & Age』には込められています。そこで得られた世界観によって新たな道が見えました。おそらく40代はその繰り返しの先にあるのかなと思うと今までとは違うワクワク感があります。同時に皆さんのアートを皆さんのやり方で積み上げていただいて、その道を一緒に歩いていけたらなと思います。一緒に素敵な大人になりませんか?
■商品情報
タイトル:小林直己1st写真集『Art & Age』
発売日:2025年4月2日(水)
価格:5,360円(税込)
仕様:A4変形/128ページ/小林直己の楽曲ダウンロードシリアルコード付き
出版社:株式会社blueprint
ISBN:978-4-909852-56-4