サザンオールスターズ、『THANK YOU SO MUCH』5年代連続首位 楽曲に潜むギャップ、“らしさ”の真骨頂

和と洋のすれ違いが生む独自の音楽世界とその真髄

 ラテン調の「歌えニッポンの空」にも言えることだが、サザンオールスターズは故郷をテーマにする際に、サウンド面でも言葉の面でも、その故郷らしい要素を取り入れるのに加えて、ごった煮性も押し出してくる。

サザンオールスターズ - 歌えニッポンの空 [Official Music Video]

 たとえば、能登半島地震に関する被災地の取り組みの報道をきっかけに書かれた「桜、ひらり」は、故郷への複雑な思いを未来へのメッセージに繋げる1曲だが、いかにも日本を思わせるような単語を散りばめつつ、自然の美しさを託した四字熟語の〈柳暗花明〉が持つ響きは、歌の中で換骨奪胎されていく。巧みな和洋折衷というよりも、和と洋が互いに交わることなく、すれ違うことを際立たせようとしているかのようだ。そんなことはいまさら言うまでもない、そこがまさにサザンオールスターズの“らしさ”だと言えるのだろう。

サザンオールスターズ - 桜、ひらり [Official Visualizer]

 こうした屈折をよりスマートに洗練させた形で表現したり、あるいはキャッチーな一語に集約してプレゼンテーションすることも可能だし、そのようにして人気も評価も獲得しているJ-POPのアーティストやバンドは数多いだろう。サザンオールスターズもその潮流に影響を与えつつ、むしろ枠に収まらない独自のスタイルを築き上げてきた存在だ――というか、むしろ歴史上最も成功した例のひとつと言えるかもしれない。

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