守乃まもの人生に刻まれた“初期衝動”の連続 THE BLUE HEARTS、神聖かまってちゃん……音楽のルーツを探る

守乃まもの人生に刻まれた“初期衝動”

不幸なことが一気に起こった日からスタートした“曲作り”

──ちなみに、曲作りはいつ頃から始めたんですか?

守乃:高2の春ぐらいに始めました。高1までは学校生活を楽しんでいたんですけど、だんだん周りが進路とかを決め始めて。でも、自分は将来の夢とか目標がなくてフラフラしていたんです。その頃、自分のお金で好きなギターを買ったんですけど、それから友達とスタジオに入ったら買ったばかりなのに倒して、ネックが折れちゃったんです。で、そのスタジオ帰りにスマホを落として、画面が全部割れちゃって。あと、家にあったノートパソコンもなぜか床に落ちて、液晶が割れていたという、不幸なことが一気に起こった日があったんです。

──それは不幸すぎます……。

守乃:その瞬間に「あ、これはヤバい。自分の人生に何か起こるかもしれない。だったら今すぐ何か始めないと!」と思って、残っていたお金でiMacを買って、Logic Proも買って、作曲を始めました。

──代償は大きかったけど、それがあったから今があるわけですね。音楽活動をする上で、影響を受けた存在って誰かいますか?

守乃:小6か中1ぐらいの時に、神聖かまってちゃんとYouTubeで出会って。最初は「なんだこれ?」で終わったんですけど、次の日もまた気になって動画を観てしまって、その次の日もって繰り返していたらどんどん好きになっていきました。守乃家はお母さんがピアノを弾いていたから家でピアノを耳にすることが多かったんですけど、それもあってか綺麗なピアノやキーボードの音が入っている神聖かまってちゃんの曲が好きになったんだと思います。なので、曲を作る上で結構影響されているというか、意識しなくても勝手に滲み出てきちゃう感じでした。

──ある意味カリスマ的存在だったと。

守乃:だと思います。あと、Sex Pistolsも好きだったんですけど、中でもシド・ヴィシャス(Ba)のことが大好きすぎて、小学生のときにシドになりたいと思って、黒いスキニーを穿いて歩き方とか真似してました(笑)。好きになると形から入っちゃうことが多いんですけど、でもそれは恋愛的な好きではなくて、憧れちゃって、「自分も同じようになりたい」という好きなんだと思います。楽しいですよね、自分がロックスターになったみたいで(笑)。

守乃まも(撮影=はぎひさこ)

──そうやってバンドに憧れたり自身で作曲活動を続けていたりする中で、いずれ音楽で食べていきたいとは考えなかった?

守乃:い、いや、か……考えたことなかったわけじゃないですけど、そんな本気では……その日その時で楽しければいいなってやっていたので。もちろん今もCDが売れたりするのはすごく嬉しいんですけど、音楽を仕事にしてずっとやり続けたいなっていう気持ちになっているわけではないです。というよりも、気づいたら今みたいになっていたって感じで生きてきたから、曲をまったく作れない時期もありましたし、音楽への興味が薄れた時期も全然ありました。でも、音楽は音楽だから。何もしていなくても、ずっとここにいるって感じなんです。

──生きている中で常に生活の一部として存在している。だから、意識しなくてもずっとそばにあると。

守乃:都合のいい女の子みたいに使ってました(笑)。 

「ギターって難しい」と思い知らされた『LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」』

──そんな守乃さんに、大きな転機が訪れます。2023年上演の舞台『LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」』に後藤ひとり役として出演したことで、大きな注目を集めることになりました。

守乃:たまたま縁があって、舞台のオーディションのお話をいただいたんです。でも、その時点で『ぼっち・ざ・ろっく!』は観たことがなくて。というのも、バンドが好きすぎるから、バンドを題材にしたアニメとか漫画は本気で観なくちゃいけないと思っていたから。なのに、オーディションに通ってしまって……と言ったらあれですけど、本当にいい経験になるかなと思ってやってみることにしました。そもそも演技とか一度もやったことないですし、人前でギターを弾くことも……もともとギターにすごく自信があるわけじゃなかったので。それまで引きこもりみたいな生活をしていたから、「たまには外に出てみるか」ぐらいの感覚で受けただけだったので、こんな私を、あの、ありがとうございますって感じです。

──そんな人が舞台で演じたり歌ったりギターを弾いたりって、いきなりできるものなんですか?

守乃:む、無理です! 周りの皆さんはみんな演技が上手だけど、自分は声も出ないし、セリフも覚えられないし、何より人前で何かをすることが恥ずかしいし。だから「これは終わった……」と思いました。

──でも、やるしかなかったと。

守乃:毎日「ごめんなさい……」って思いながら現実と向き合ってました……。

LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」Blu-ray&DVD PV

──実際、舞台での佇まいや守乃さんの演技、ギターを弾く姿は後藤ひとりの生き写しのようで、多くの人が「リアルにぼっちちゃんが降りてきた!」と絶賛していましたね。

守乃:それはありがたいですけど、自分では全然似てないと思っていて。そう言ってもらえるのは奇跡だなと思います。

──自分の曲ではないものの、こんなにも大勢のお客さんの前でギターを弾くことができたのは、大きな手応えになったのではないでしょうか。

守乃:むしろ、「ギターってめちゃくちゃ難しいな」って思い知らされました。というのも、今まで難しいプレイやフレーズから逃げて、ギターソロも弾けなかったらそこで断念してきたし。『ぼっち・ざ・ろっく!』の曲ってめちゃくちゃ難しいじゃないですか。でも、舞台に立つ以上は弾かなくちゃいけないし、弾けなくちゃいけない。しかも、舞台を観に来る人の中には『ぼっち・ざ・ろっく!』のファンや音楽が好きな人たち、楽器を弾く人たちもたくさんいるわけで、その責任も自分の曲を弾く以上に重大で。「ギターってこんなに大変なんだ」って、毎日必死でした。でも、それまでずっと独学でやってきたからこそ、ここでいろんなことも学べましたし、最終的にはすごくいい経験だったと思います。

──こればかりは外の世界に出ていかないと得られない経験ですものね。

守乃まも(撮影=はぎひさこ)

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